背景の1つとして、リモートワークの浸透により、旅をしながら仕事する形態が増加し、デジタルノマド(ITを活用し、国内外を旅しながら働く人材)を対象としたビザの発給(以下、デジタルノマドビザ)が活発化したことが考えられます。デジタルノマドビザ取得者は、短期貸し住宅など短期間(数週間から数カ月程度)借りることができる滞在施設であるSTRに滞在しながら「リモートワーク」に携わります。デジタルノマドの取り込みは、地域の活性化につながる可能性がある反面、地域の一部に滞在する形態のSTRと地域住民とのトラブルが課題に挙げられます。
欧州では、2019年には欧州全体の4分の1程度がSTRによって提供されており、140万人が利用、延べ5.12億泊の利用がありましたが、住宅価格や物価の上昇、過剰な観光客の流入など弊害が生じました。2023年3月にEUの規制当局はBooking.com、Airbnb、Tripadvisor、Vrbo などのSTRプラットフォームからのデータ収集と共有に対する共通のアプローチに合意しました。EU加盟国は、共通の枠組みにより、データ収集の強化および透明性の確保を担保できるようになり、違法な事業者の排除など健全な市場環境構築が期待されます。
日本においては、「住宅宿泊事業法」に基づき、届け出をすることで旅館業法に基づく許可を取得することなくサービス提供することが可能(以下、民泊)ですが、条例の制定などにより民泊を禁止する動きもあります。欧州の動きを参考に、STR市場の透明性を確保することで、特に地方における宿泊施設の不足を解消するほか、滞在日数の長期化に伴う人材の交流の促進が期待されます。