2022年2月28日
上場子会社に関する現状と今後~改訂コーポレートガバナンス・コードと東証新市場区分の中で~

上場子会社に関する現状と今後~改訂コーポレートガバナンス・コードと東証新市場区分の中で~

執筆者
EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社

複合的サービスを提供するプロフェッショナル・サービス・ファーム

EY Strategy and Consulting Co., Ltd.

中園 章寛

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジー・アンド・トランザクション リード・アドバイザリー アソシエートパートナー

M&Aの仮説検討・組成段階からエグゼキューション、クロージングに至るまで、「可能性を拡げる」アドバイスを提供します

2022年2月28日

上場子会社にとって、改訂コーポレートガバナンス・コードに加え、東証新市場区分のもとでの上場維持基準(流通株式比率)も極めて重要性が高く、常に変動し得る一般株主(親会社以外の株主)の所有状況に継続的な注意が必要となります。

本稿の執筆者

EYストラテジー・アンド・コンサルティング(株) M&Aアドバイザリー 中園章寛

2018年にEYに参画する以前から通算して17年超にわたり、M&Aアドバイザリー業務を担当。案件の組成、方針立案から執行まで一貫して関与し、TOB案件、経営統合案件、オークション案件など数多くの複雑な案件を成功に導く。EY参画前は証券会社のM&Aアドバイザリー部門に在籍していた。EYストラテジー・アンド・コンサルティング(株)ディレクター。

要点
  • 上場子会社に関する現状やM&A動向を説明します。
  • M&Aを通じての新たな子会社上場化案件において、上場維持基準や上場子会社のガバナンスに関し、どのような注意が払われているのか、上場子会社やその親会社が注意していくべき事項について説明します。

Ⅰ はじめに

直近の日本国内での上場会社数約3,900社のうち、親会社を有する会社数は200社を超えます。

子会社上場の問題点としては、親会社と少数株主の利益相反構造、子会社が実施する配当のグループ外流出や上場維持費用といったコスト面での指摘、改訂コーポレートガバナンス・コードに加え、東京証券取引所の新市場区分のもとでの上場維持基準においてもガバナンス項目として指摘されています。

Ⅱ 上場子会社に関する現状

1. グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針と改訂コーポレートガバナンス・コード

2019年6月28日に経済産業省より公表されたグループ・ガバナンス・システムに関する実務指針、21年6月11日に東京証券取引所より公表された改訂コーポレートガバナンス・コードを経て、上場子会社のガバナンスについては、その上場子会社が属す企業グループ内での利益相反を避けるため、適切なガバナンスの在り方を検討することが求められています。

【改訂コーポレートガバナンス・コードにおける規定】

支配株主を有する上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも3分の1以上(プライム市場上場会社においては過半数)選任するか、または支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべきである。

2. 東京証券取引所の市場区分

加えて、22年4月4日には、東京証券取引所の市場区分が、「プライム市場」、「スタンダード市場」、「グロース市場」の三つの新しい市場区分へと再編されます。新たな上場維持基準に含まれるガバナンス項目として設けられた流通株式比率の要件は、特に子会社上場のケースを中心とする大株主が存在する上場会社にとって検討・対応の必要性が高く、すでに各社でその対応が進められている状況です。

【流通株式比率(ガバナンス項目)

事業年度末日における流通株式数の比率

  • プライム市場においては、35%以上
  • スタンダード市場においては、25%以上

Ⅲ 上場子会社に関連するM&A動向

1. 子会社上場の解消

19年6月28日のグループ・ガバナンス・システムに関する実務指針公表以降、完全子会社化による子会社上場状態の解消が34件、第三者への売却による解消が9件と減少が加速しています。

(1) 完全子会社化

解消の経緯の大部分は完全子会社化です。多くの企業グループにおいて適切なガバナンスに向けあらためて検討が進められた結果といえます。

(2) 第三者への売却

売却の結果として解消されたものは本質的な戦略的位置付けやウィズ/アフターコロナでのニューノーマルを見据えての戦略的見直しを主要因としつつも、改訂コーポレートガバナンス・コードや東京証券取引所の新市場区分での上場維持基準が検討を促進させる方向に作用した面もあったものと思われます。

2. M&Aを通じての新たな子会社上場

一方で、同期間においてM&Aを通じての新たな子会社上場が15件発生しています(うち1件は、その後、完全子会社化され子会社上場解消)。こうしたM&Aを通じての新たな子会社上場化案件において、上場維持基準や上場子会社のガバナンスに関し、どのような注意が払われているのでしょうか。

(1) 2021年に発生した新たな子会社上場化M&A事例

21年に開示されたM&Aを通じての新たな子会社上場化事例では、適時開示において<表1>のような取扱いが記載されています。

表1 M&Aを通じての子会社上場化事例(2021年)

(2) 新たな子会社上場化案件における検討

M&A実施に伴う開示において新市場区分下での予定市場や当該市場の上場維持基準の充足状況の記載は求められていませんが、いずれの事例においても上場を維持する以上は、流通株式比率をはじめとする上場維持基準を充足するか否かの検討は必要であり、特に上場維持基準の充足が経緯の中で条件交渉などの重要な判断材料になっている場合には適時開示においても検討経緯としての観点から説明に努めるべきでしょう。

Ⅳ 上場子会社に関する今後

現在、新市場区分における上場維持基準を充足しない場合の経過措置期間に関し、明示的な期間は設定されていない状況です(22年1月末時点)。

経過措置期間として明示的な期間が設定された後に同期間が終了した時点で、各社が選択した新市場区分の上場維持基準を充足していない場合には、その後6カ月~1年の改善期間中に適合基準を充足できなければ市場区分変更または上場廃止となるものと想定されますが、新市場区分下でも当面は「経過措置期間中に基準の充足を目指す」という対応が可能です。

改訂コーポレートガバナンス・コードに即し独立性を維持しつつ親会社の経営資源を取り入れ成長を図ることが、上場子会社の戦略として理想といえますが、一方で、不安定な前提のもとでM&A後の資本構成を想定すべきではないことは明らかです。

流通株式比率は、上場子会社にとって常に意識が必要な項目となり、新たな子会社上場化を伴うM&Aの検討プロセスにおいては、M&A実施後の流通株式比率の想定は勿論のこと、常に変動し得る一般株主の株式保有状況にも継続的に注意を払うことが必要です。

こうした状況の回避策としては完全子会社化を通じた子会社上場の解消が最も確実な解決策となりますが、予期せぬ流通株式比率の変動などにより追い込まれた状況での検討とならぬよう、特に流通株式比率が低い上場子会社ではあらためて早急な対応が望まれます。

※ 日本取引所グループがウェブサイトに掲載している「各新市場区分の上場基準」に基づく

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サマリー

上場子会社にとって、改訂コーポレートガバナンス・コードに加え、東証新市場区分のもとでの上場維持基準(流通株式比率)も極めて重要性が高く、常に変動し得る一般株主(親会社以外の株主)の所有状況に継続的な注意が必要となります。

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