2. 商品組成・提供・管理(プロダクトガバナンス)
(1)アクティブファンドの「シャープレシオ」
公募アクティブファンドのシャープレシオ(ある特定期間における、リスク〈標準偏差〉1単位当たりのリターンを図る指標)は、ファンド数が少ない社では、旗艦ファンドに注力しリソースを集中させることで良好なパフォーマンスを実現している傾向が見られます。
一方、100本以上のファンドを運用する社では良好なパフォーマンスを実現するファンドもあるものの、シャープレシオがマイナスとなっているファンドも多く見られることから、顧客利益を最優先したプロダクトガバナンスの徹底が期待されます。
(2)国内株アクティブファンドの「アルファ」
一般的に投資家は、アクティブファンドに対して、パッシブ投資を上回るリターン(プラスのアルファ)を期待して投資を行いますが、大半の大手資産運用会社の商品ラインナップには、中長期的にマイナスのアルファになっていると考えられるファンドが存在しており、商品組成後の品質管理に課題があると指摘されています。
(3)国内株アクティブファンドの信託報酬設定
国内株アクティブファンドのうち約8割強は、コスト控除前では一定程度パッシブ投資を上回る運用成果を実現しているものの、その成果がコストに相殺されてしまい、顧客に付加価値を届けられていない可能性が考えられます。
コスト控除前アルファと信託報酬水準の分布からは、信託報酬の設定が、同種のアクティブファンドで横並びに行われており、個別ファンドの商品性に応じた信託報酬水準の設定や、設定後のパフォーマンス結果に基づいた信託報酬水準の見直しは行われていない可能性が推測されます。
(4)顧客利益最優先の実効性あるプロダクトガバナンス体制の確立
大手資産運用会社において中長期にパフォーマンスが低迷するファンドが存在するため、プロダクトガバナンス体制の実効性に課題があると考えられます。運用する全てのファンドについて、実効性あるプロダクトガバナンスを機能させることが重要であり、商品組成時に想定した運用が実践できているか、他社類似ファンドとの比較のみならず、それぞれ独立したファンドとして、コスト水準に見合ったリターンが実現できているか等について、長期視点で検証を行う体制の確保が必要であると指摘されています。
(5)顧客利益最優先の商品組成と償還の検討
各社が新規に商品を組成するに当たって、類似商品の有無、長期運用に資する投資対象としての適切性、コスト水準の適切性を踏まえた検証が行われていることもあり、2017年以降、公募投信全体の新規設定本数は減少傾向(ただし2021年は既存ファンドの決算期等のコース充実やESG関連公募投信信託の組成等により前年比で増加)にあります(図2)。
また、パフォーマンスの低迷しているファンドや単体で採算が取れていない小規模ファンドについて、自社判断による繰上償還本数が年々増加しているものの(図3)、運用する全てのファンドに対してプロダクトガバナンスを機能させ、自社の運用するファンド等の数やリソースに応じた体制整備を進めることが求められています。