6 分 2021年3月31日
コロナ禍における学生と企業の認識ギャップとは-EY新卒採用に関する調査2021

コロナ禍における学生と企業の認識ギャップとは-EY新卒採用に関する調査2021

執筆者 EY Japan

複合的サービスを提供するプロフェッショナル・サービス・ファーム

6 分 2021年3月31日

関連資料を表示


EYは2019年~2020年に引き続き、日本の学生322名および企業358社(含、経団連加盟企業:これまでの就活ルール対象企業133社)に対して2021年1月8日から1月18日にかけてオンラインサーベイを実施しました。

現在世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や社会全体で取り組まれているデジタル化の加速、加えてEYでも継続して注視している就活ルールの変更など、新たな社会の潮流を受けて、今後企業が予定している新卒採用の対応方針および学生側からの期待・要望と、企業と学生の結果の差異に関して傾向をまとめ、日本における採用の未来に関して解説します。

要点
  • コロナ禍を受け、学生はより安定化志向へ、特に理系の学生ほどその傾向は強まる。
  • 社会全体でDX化が加速する中、企業は学生にテクノロジーの素養を期待。一方学生の多くは、テクノロジー関連の知識習得の取り組みを行っていない。
  • コロナ禍を受けたオンライン就活の評価は企業・学生共にできていないが、ミスマッチリスクを感じている。
  • サーベイの方法

    調査対象者:日本の学生および企業
    サンプル数:日本の学生322名、企業358社(含、経団連加盟企業133社)
    調査実施期間:2021年1月8~18日
    調査対象エリア:日本全国
    調査手法:オンラインサーベイ


新卒採用・就職活動を取り巻く環境の変化とその影響

就活ルールの変更とその影響は前回調査で取り扱った通りですが、加えて全世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症や社会全体のデジタル化の影響を踏まえると、企業が実施する採用方針(求める人材像)や学生の志向性・企業選びの基準などを把握し、プレーヤーの相互理解がますます重要になっていくものと捉えています。

 

新卒採用に関する調査結果

EYの調査では、2019年および2020年の調査結果から見られた3つの変化・傾向に加えて、本年の調査結果の要点として以下の3点が示されています。

過去の調査結果からの変化・傾向

1. 就活ルールの変更について

  • 昨年同様、学生・企業共に就活ルールに対する関心は低い
  • 就活ルールの継続について、学生の47%、企業の44%が「どちらでも良い」と回答

2. 就職に向けた学生の考え方や取り組み方

  • 学生が力を入れている事や企業に期待することや、企業とのマッチング手法についての傾向は、2019~2021年の間で大きな変化はなかった
  • 大学生活で力を入れたこととして、85%もの学生が学業を挙げた
    (2019年70%→2020年75%→2021年85%と、学業の重視度は上昇)
  • 現在就職に向けて行っている取り組みとして、40%の学生が志望企業・業界で必要となる専門技術を学ぶことを挙げた
  • 今後企業に導入してほしい採用施策として、39%の学生が通年採用を挙げた
  • 就職活動を行う上で使用する情報媒体として、47%の学生が会社説明会を挙げた

3. 新卒採用に向けた企業の考え方や取り組み方

  • 企業が求める学生像や最重要ターゲット、主要な情報告知媒体、取り組んだことや、母集団形成に活用したツールは、2019~2021年の間で大きく変わらなかった
  • 大学生活において評価する活動に、69%の企業が学業を挙げた
  • 重要採用ターゲットとして、69%の企業が自社の既存のビジネススキームで必要となる専門技術を有する人材を挙げた
  • 今後導入を検討する採用施策として、44%の企業が通年採用を挙げた
  • 採用活動を行う上で使用する情報媒体として、49%の企業が会社説明会を挙げた

本年調査結果のハイライト

1. 強まる学生の安定化志向について

  • コロナ禍の影響を受けて学生はより安定化志向となり、特に理系学生や偏差値67以上の大学に通う高偏差値学生の間でその傾向が顕著に
  • 学生の32%が福利厚生の充実化を求めており、重視項目3位に選出
    (※2020年4位→2021年3位と、福利厚生重視度は上昇)
  • 理系学生は重視項目1位に福利厚生を選出。高偏差値学生の33%は重視すると回答
  • 企業は整備したい採用施策として福利厚生を10位に選んでおり、重要視していない (2020年8位→2021年10位と、重視度は低下)
1.	強まる学生の安定化志向について

2. 企業が注目するテクノロジー人材について

  • 社会全体でDXの取り組みが加速する中、企業は学生にテクノロジーの素養を求める一方で、学生の多くはテクノロジー関連の知識を未習得。
    • 企業の43%がブロックチェーンやPythonなどの先進技術に関する知識や興味を有する人材を特に重要な採用ターゲットにみていると回答
    • 一方で就職を見据えてテクノロジー関連の勉強を行っている学生は13%にとどまる
企業が注目するテクノロジー人材について

3. オンライン就活について

  • 企業・学生共にコロナ禍の影響を受けたオンライン就活の評価は未完。
    • オンライン就活について、企業の58%/学生の64%がメリットとデメリットどちらが勝るか分からない、もしくはオンライン就活自体を実施していないと回答
  • 企業・学生共にオンライン就活におけるミスマッチ採用のリスクを懸念。
    • 企業の58%がオンライン就活におけるデメリットとしてミスマッチリスクを指摘
    • 学生の60%が企業との直接的なコミュニケーションの場が減ったことで、本当に自分に合った企業なのか自信が持てなくなったと回答
  • オンライン就活が抱えるミスマッチリスクも踏まえ、学生はインターンシップ等一部対面での見極めを求めているが、企業は様子見の傾向。
    • オフライン化(対面実施)してほしい採用施策について、学生の40%がインターンシップを挙げた
    • オフラインで実施していく予定の施策について、企業の47%が他社の動向を見て検討する/分からないと回答

 

今後の採用・就職活動に関する提言

企業は福利厚生・働き方についてアピールして他社との差別化を図りたい

前述の通り、大多数の学生が福利厚生や働き方に注目している一方で、企業はこの点について重要視していないことが分かりました(学生と企業の認識ギャップ)。

これは学生がコロナ禍において生活の安定イメージに不安を持ったためではないかと推察されるため、企業は自社で働くことのやりがいや成長を学生に説く前に、彼らの生活不安を払拭することが他社との差別化要因になると考えられます。

ポイントとしては、法定福利でなく、法定「外」福利の、特に自社運用部分について訴求することが効果的であり、さらに単なる「制度の説明」ではなく、先輩社員などから実生活の中で役立った制度を具体的な生活エピソードを交えて説明することが肝要です。このようにして学生の不安を払拭し他社との差別化を図ることができます。

※福利厚生導入事例については添付資料を参照してください。

福利厚生導入事例

学生はテクノロジーの知識を習得して差別化を図りたい

前述の通り、大多数の学生がテクノロジー知識の習得を行っていない一方で、企業は新規・既存のテクノロジーに明るい学生を採用のターゲットとしていることが分かりました(学生と企業の認識ギャップ)

これは企業や社会がDX化をわが事として受け止め、推進してきたことが背景にあると推察されます。一方で、一口にテクノロジーと言ってもさまざまな言語や技術が存在しています。学生がこれらの知識を習得するにあたってのポイントは、漠然とテクノロジーが何かを想像することではなく、それが実際にどのように使用されているか、学生自身がそれを作り手としてどう担いたいかを併せて検討していくことです。

具体的には、自分が目指す企業・業界×職種でどのようなテクノロジーが存在するのか、そしてどのセグメントを自らが担いたいのか、目的を明確にして取り組むことが必要です。

※企業・業界×職種で習得すべき技術の整理イメージについては添付資料を参照してください。

企業・業界×職種で習得すべき技術の整理イメージ

コロナ禍のオンライン就活に際して、企業・学生共にオンライン就活の評価が未完ながら、ある意味「漠然と」ミスマッチを懸念しているという結果となりました。

これまでの調査で学生が求めているもの、企業が求めているものが見えてきましたが、この結果が、企業と学生の相互理解を深める一助となり、企業がさらに効果的なマッチング施策を導入していくための礎となれば幸いです。

効果的なマッチング施策

関連資料を表示

  • 「新卒採用トレンドサーベイ2021 結果と提言」をダウンロードする

関連資料を表示

  • 「新卒採用トレンドサーベイ2021 factbook 全設問データ」をダウンロードする

サマリー

昨年に引き続き、EYは日本の学生322名および企業358社に対してオンラインサーベイを実施しました。コロナ禍、デジタル化、就活ルールの変更などの影響を受けて、企業が予定する対応方針や学生側からの期待・要望、そしてそれらの差異と傾向をまとめ、新卒採用の未来に関して解説します。

この記事について

執筆者 EY Japan

複合的サービスを提供するプロフェッショナル・サービス・ファーム

  • Facebook
  • LinkedIn
  • X (formerly Twitter)