労働市場で進む力のバランスの変化がどのように人材パイプラインを圧迫しているのか

13 分 2022年6月27日
執筆者
Liz Fealy

EY Global and EY Americas PAS Solutions Leader, EY Global PAS Workforce Advisory Leader

Passionate about solving clients’ organization and people issues through innovative Future of Work Solutions and leveraging EY’s proprietary digital accelerators. Employment and labor attorney.

Roselyn Feinsod

Principal, People Advisory Services, Ernst & Young LLP

Passionate about building a better working world with art and science. Mother to four, grandmother to seven. Avid traveler, hiker and runner.

13 分 2022年6月27日

EY 2022 Work Reimagined Survey(EY働き方再考に関するグローバル意識調査2022)で明らかになった「大退職時代」の働く側と企業側の意識。自由度が高まったと感じる従業員もいます。溝はまだ埋まっていません。 

質問

  • 従業員は企業に何を求めているのか。企業は従業員が生き生きと働くためには何が必要と考えているのか。
  • 職場での幸福度に対する従業員の考え方は、個人の属性によってどのように変わるのか。

仕事に対する考え方と働き方が劇的に変わったことで、日常生活の中での優先順位や将来の見通しについても、大きな変化が起きています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、すでに進行していた働き方の変化に拍車をかけ、成功や目的、価値に対する私たちの理解を大きく変えました。誰もが新たな視点で労働市場の変化に対応しようと努めていますが、インフレの進行、大量退職時代、そしてESG(環境・社会・ガバナンス)課題に対する決意と行動を求める声の高まりが、労働市場の様相をさらに大きく変化させています。新型コロナウイルス感染症による変化の波が打ち寄せる中、人々は働き方、価値観、自分のアイデンティティに基づいて、それぞれの場所に落ち着き始めています。

新たな機会とともに新たな時代の到来を受けて、働き方に関するhow(どのように)、what(何を)、why(なぜ)についても、より大きな文脈の中で捉える必要があります。

EY 2022 Work Reimagined Survey(EY働き方再考に関するグローバル意識調査2022)は、22カ国の26業種の1,575社と17,000人の従業員から得た知見を明らかにしています。調査結果では離職率や定着率の裏にある主な動機を探り、目下の機会を活用したいと考えるリーダーが重点的に取り組むべき分野を示します。

本調査では、次の点が明らかになっています。

  • 企業側と従業員側のどちらも、ハイブリッドで柔軟な働き方ができる体制が必須であると認識しているが、全ての企業で正式、明確な規定やガイドラインが策定、周知されているわけではない。
  • 従業員は自由度が高まったと感じているが、にもかかわらず回答者の半分近く(43%)が今後1年以内に退職する可能性が高いと答えている。逼迫する労働市場と新たに出現した機会の中で、彼らの最重要事項は給与総額である。
  • 退職する可能性が高いと回答した人が最も多かったのは、米国のZ世代・ミレニアル世代(53%)とテクノロジー/ハードウェア分野(60%)。
  • 働き方の変化に積極的に取り組んでいる企業の方が、生産性と企業文化の面で現在と今後の変化について楽観的。
  • 企業側も従業員側も、さらに関心と行動が必要な分野として「トータルリワード」と「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス)」の両方を挙げる。 

私たちは、より持続可能で、人を中心に据えた人材戦略を、再考する時を迎えています。決断力を持ってこの瞬間に反応し、ビジネスの持続可能な変革の必要性を認識することで、企業は人材パイプラインと将来的な価値を守る働き方を新しく定義していくことができます。

変わってしまった世界で私たちはどのように働いているのか

新型コロナウイルス感染症のパンデミックとその影響を乗り越えて先に進みたいと思っていても、私たちはまだ流動的な状況の中で揺れ動いています。働き方に関しても同じです。当初は企業も従業員も、必要に迫られ、近年最大級ともいえる健康への脅威をなんとか切り抜けようと短期的な決断を下していましたが、現在では働き方に対する姿勢や戦略は、他のマクロトレンドに影響されています。世界銀行の分析によると、今後は経済成長の鈍化とインフレ率の高止まり、気象・気候災害がもたらす甚大な被害に対応するための協調行動の必要性が予想されています。

現在も世界の一部で「大量退職時代」が本格的に進行する中、こうした背景が企業投資と従業員心理に作用しています。 

この1年については、回答企業の68%が過去12カ月に離職率が上がったと述べ、従業員の43%が今後1年以内に現在の会社を辞める可能性が高いと回答しました。退職の可能性が高いと述べた従業員が7%だった前年に比べると、大幅に上昇しています。退職する可能性が高いと回答した人が最も多かったのは、米国のZ世代・ミレニアル世代(53%)とテクノロジー/ハードウェア分野(60%)でした。

この2年間で柔軟な働き方は従業員の支持を集め、一部の企業では導入が進みました。今では柔軟な働き方はほとんどの人にとって「あったらよいもの」から「当然あるもの」に変わっています。調査では従業員の80%が週に最低2日はリモートで働きたいと回答しています。フルリモートでの勤務に抵抗を示したのは従業員の20%に過ぎず、前年の34%に比べると、場所を選ばない働き方がより広く受け入れられるようになっていることが分かります。 

従業員側にはこうした意向があるにもかかわらず、調査対象企業の4分の1近く(22%)が全従業員に対し週5日のフル出社を求めるとしています。

企業側と従業員側のハイブリッド/フレキシブル勤務に対する考え方の乖離は、労働者にとって有利な方向に力のバランスの変化が進んでいると捉えられる現象の一例でしかありません。労働文化、生産性、昇進機会と雇用流動性に対する企業と従業員の認識は大きく異なっていることが示されており、それがすでに熱気を帯びている人材獲得競争にさらに油を注ぐことになる可能性があります。

働く側がより自由になったと感じ、労働市場の流動性が高まっているように見える中で、多くの企業が自社組織の文化醸成に対する自信の低下を示しています。「パンデミックが始まってから会社の文化が改善された」と感じている企業は、前年の77%とは対照的に57%にとどまっています。一方の従業員側で「改善された」と回答しているのは、2021年の48%に対し61%です。

パンデミックを通して企業が素早い対応を見せたにもかかわらず、従業員の大量退職は加速しました。細かく見ると、企業の感じ方はさまざまです。データからは、企業を、自社の業務の生産性と組織文化をどのように認識しているのかに基づき大きく3つに分類できることが分かります。

楽観層(32%)

柔軟な働き方、不動産、テクノロジーに積極的に取り組んできた企業の方が、良い成果を得ていると回答する割合が高くなっています。楽観層は、現在の不透明な状況の中で、他社より主体性を持てていると感じている様子がうかがえます。従業員に明確な指針を与え、変化に積極的に取り組むことで、これらの企業は戦略的な方向に力を注ぎ、そのメリットを享受することができています。現在の状況に対して、一貫した戦略的・部門横断的なアプローチをとることで、楽観層は自社の針路を自ら決定していると確信する傾向にあります。

悲観層(11%)

割合は小さくなりますが、雇う側として現状に無力さを感じている企業もあります。企業文化や生産性に関連して感じる成果は楽観層より大幅に低く、テクノロジーの強化、職場の環境整備、柔軟な働き方の推進に向けた明確な措置が少ないことがわかります。積極的ではないことで、これらの企業は労働市場および全体的な経済情勢が変化する傍らで様子見の姿勢にとどまってしまったようです。ベテラン社員が退職する中で新しい人材を獲得できるように態勢を整えることもないので、さらに自社の競争力に対する自信を失う結果となっています。

巨大中間層(57%)

大多数の企業は、生産性と企業文化の変化について特に明確な認識を持たず、楽観と悲観の間に位置付けられます。企業側も従業員側も、今後について判断しかねている状態で、企業としては優れた戦略を構築し、人材獲得競争に勝つチャンスもあります。

従業員も企業も、圧倒的大多数がかつての働き方がもはや過去のものとなってしまったと考えているようです。ほとんどの回答者が、ハイブリッドで柔軟な働き方がこのまま定着するだろうという見方に同意し、従業員は望むものが手に入らない場合は転職してもよいと考えています。従って、従業員が最重要視するものを把握することが、企業にとって必要不可欠です。

給与から目的意識まで、私たちが価値を見いだしているもの

私たちが何に価値を見いだしているのかによって、集合的にどこまで深く働き方を見直しているのかを測ることができます。インフレ圧力、リモートワークの普及、転職のハードルが低くなったこと全てが、従業員(79%)を給与総額などの目に見える利益に向かわせています。企業(83%)は、報酬、福祉、選択的福利厚生制度、休暇その他を含む報酬規定を大幅に変える必要が、パンデミックで加速されたと考えています。

報酬には複数のカテゴリーがありますが、企業と従業員のそれぞれが重視する内容を詳しく見ると、実際には両者の間に顕著なずれがあることが分かります。従業員はまずは報酬とキャリアアップ、その次に柔軟な働き方を重視する傾向が見られます。

給与は、従業員のDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス)に対する認識にも影響しており、従業員の20%が、企業のDE&I向上で最も重要なのは給与の公平性への取り組みだとしています。企業側も、DE&I向上のためにもっとやらなければならないことはあるとしていますが、最も重要な取り組みとして挙げられたのが、採用基準の見直しでした(17%)。

バーチャルな任務での昇進機会や雇用の種類が増えたことで、従業員の中には柔軟な働き方によって自由度が高まったと感じる人もいるかもしれません。一方で、ハイブリッド/フレキシブル勤務をさらに受け入れることでキャリアアップが遅くなる恐れがあるという認識も一部にあります。この点に関しては、企業と従業員との間に認識のギャップがあり、企業の72%が新しい働き方によって不利になる従業員のグループがあると考える一方で、従業員で同じように考える人は56%にとどまっています。

企業にとって、インフレ拡大期の給与は固定費です。離職率対策として給与の引き上げ/見直しが必要であると考える企業はわずか18%で、従業員が新たな職に求めているものと、従業員が生き生きと働けるようにするために企業が提供しようと考えているものとの間に、明らかな乖離が見られます。企業側が重視しているのは学習とスキル、柔軟性、および従業員の心の健康と安全です。

企業が学習とスキルを重視するのは、「大量退職時代」への反応と言えます。パンデミック時の離職率が高く、生産性の向上への確信が保てない場合、残った従業員のスキルアップに力を注ぐことが考えられます。こうした学習とスキルの位置付けは、会社に忠実な一部の従業員のニーズや期待とも一致する可能性があります。このような従業員は、燃え尽き症候群のリスクや心の健康を気にかけ、フルタイムのオフィス勤務を好み、ワークライフバランスがうまくいっていると考えている傾向があります。こうして、ほとんどの企業の戦略と重点は、このような自社に忠実な従業員のグループに合わせたものになるようです。

「転職組」か、または「残留組」という特徴を持つかは、職業分野の他、世代の影響を受けている可能性があります。このことから、適切な対応を取るためには従業員の構成の把握が大切であることがわかります。

さまざまな属性の集団に横断的に対応する

言うまでもなく、従業員がおしなべて一様であるはずはなく、幸福度、価値、生産性に関する考え方はそれぞれの属性の集団によって大きく異なる可能性があります。データでは、地理的な場所、専門分野、性別、年齢の高さによって自身が感じる幸福度が大きく異なることが示されています。

世代のレンズを通して見ると、働き方に対する好みや考え方の明確な対比が明らかになります。

施設と働き方に関する本音

EY 2022 Work Reimagined Survey(EY働き方再考に関するグローバル意識調査2022)は、特に施設環境や組織体制について、および従業員とオフィスという場との関わりについての世代的な意識の差を詳しく示しています。仕事中に人とのつながりを保てることを重視する傾向は、Z世代の方が(29%)、ベビーブーム世代(21%)より強く見られます。Z世代はフレキシブル勤務や勤務場所を変えることも重視しています(22%)が、ベビーブーム世代はそれほどでもありません(14%)。オフィス/職場のデザインが出社を促す要因になると考える傾向も、Z世代(12%)の方がベビーブーム世代(7%)より強いようです。

全体的に見て、オフィスの役割と、それが業務の遂行にどのように影響するかは、そこで働く従業員の属性構成によって異なります。若い従業員が出社を促す要因としてインフォーマルな交流を挙げる一方で、X世代やベビーブーム世代はオフィスを共同作業に便利な場所としてより実用的に捉える傾向があります。従業員の構成を詳細に分析することで、それぞれの企業の状況に合わせて企業側と従業員側の優先項目を調和するソリューションを実現できる機会が生まれます。

従業員について再考すべき主な重点分野

働き方は、近年のさまざまな課題や今後への期待によって押し進められている変革のさなかにあります。データを見ると、楽観的な企業のグループの方が不確実性に対して積極的に取り組んでいることが分かります。リーダーは、機会が生じた際にすぐに反応できるような部門横断的な方法を検討すべきです。以下に例を挙げます。

  • ハイブリッドモデルを実装する

    ハイブリッド勤務は今後も定着していきます。企業は意図を持って体制を整えていく必要があります。どの職務がリモート/ハイブリッド勤務に最も適しているのかを理解し、機能を合理化しながら価値を創出するための仕組みを構築しましょう。これには、地理的に分散する従業員の税務コンプライアンスのための統合モビリティ戦略の策定や、必要な人材の獲得と定着のための報酬体系の整備、さらには会社施設に関する戦略の構築も含まれます。

  • 職場空間を刷新する

    オフィスの壁を新しく塗り替えるだけでは従業員はデスクに戻ってきません。生産性の高い従業員が自在に働ける物理的な空間と設備を備えた統合的なワークスペース計画を新たに検討する必要があります。計画では、従業員がどのようにオフィス内、デジタル世界で交流し、学んでいるのかも考慮しなければなりません。

  • 優れた従業員向けテクノロジーを整備する

    食料品の買い物からタクシーの呼び出しまで、ビジネスには優れたユーザーインターフェースとデザインが重要です。バーチャルなワークスペースや従業員向けプラットフォームも、消費者向けのテクノロジーと同じように高いレベルであらゆる場面をシームレスにつないで利用できなければなりません。うまくいけば、企業文化の変革が必要な領域を特定し、より高い公平性の実現へと組織を動かすことができる可能性もあります。

  • 各種プログラムやキャリアの枠組みを再構成・最適化する

    パンデミックやその他の事象が、従業員が当然として期待するものを根本から変えてしまいました。いまだ流動的な労働市場に対応するため、企業は報酬とキャリア形成のモデルを更新する必要があります。

  • 自社文化および組織のネットワークを定義する

    大規模な変革に本格的に着手する前に、自社組織の文化の適性を評価する必要があります。これには、組織文化のどの部分を維持すべきか、影響力のあるキーパーソンをどのように巻き込めばリアルとデジタルの新しい働き方への抵抗を少なくできるかを理解することも含まれます。  

重点的に取り組むべき分野は組織によって異なるかもしれませんが、リーダーはそれぞれの従業員の構成、組織の望ましい方向性、進行中の変革の継続的な評価に合わせて適切なソリューションの組み合わせを見つけられるように努力しなければなりません。

最後に

従業員も企業も働き方を再考していますが、両者のビジョンが常に一致するとは限りません。どちらも柔軟でハイブリッドな働き方を「ニューノーマル」として捉えているものの、細かく見ていくと実は考えに乖離があることが分かります。従業員は、キャリアアップと高い給与の可能性があれば転職も辞しません。インフレや労働コストに関連して不確実性がグローバルに広がる中、企業は給与やキャリアに関する変更にますます消極的になっています。社外の労働市場と社内との給与格差をなくす取り組みを進めなければ、企業文化・生産性・DE&Iの向上に対する努力も高い離職率で帳消しになってしまいます。意図を持って行動することで、リーダーは信頼を築き、自分の組織をより楽観的な将来へと導くことができます。

サマリー

専門分野、国、年齢、性別などの属性によって、従業員の認識は大きく異なります。企業側と従業員側のそれぞれの期待の間でお互いに歩み寄れる点を見つけるには、リアルとデジタルのワークスペースにも気を配った、部門横断的な戦略が必要です。 

この記事について

執筆者
Liz Fealy

EY Global and EY Americas PAS Solutions Leader, EY Global PAS Workforce Advisory Leader

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Roselyn Feinsod

Principal, People Advisory Services, Ernst & Young LLP

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