仕事に対する考え方と働き方が劇的に変わったことで、日常生活の中での優先順位や将来の見通しについても、大きな変化が起きています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、すでに進行していた働き方の変化に拍車をかけ、成功や目的、価値に対する私たちの理解を大きく変えました。誰もが新たな視点で労働市場の変化に対応しようと努めていますが、インフレの進行、大量退職時代、そしてESG(環境・社会・ガバナンス)課題に対する決意と行動を求める声の高まりが、労働市場の様相をさらに大きく変化させています。新型コロナウイルス感染症による変化の波が打ち寄せる中、人々は働き方、価値観、自分のアイデンティティに基づいて、それぞれの場所に落ち着き始めています。
新たな機会とともに新たな時代の到来を受けて、働き方に関するhow(どのように)、what(何を)、why(なぜ)についても、より大きな文脈の中で捉える必要があります。
EY 2022 Work Reimagined Survey(EY働き方再考に関するグローバル意識調査2022)は、22カ国の26業種の1,575社と17,000人の従業員から得た知見を明らかにしています。調査結果では離職率や定着率の裏にある主な動機を探り、目下の機会を活用したいと考えるリーダーが重点的に取り組むべき分野を示します。
本調査では、次の点が明らかになっています。
- 企業側と従業員側のどちらも、ハイブリッドで柔軟な働き方ができる体制が必須であると認識しているが、全ての企業で正式、明確な規定やガイドラインが策定、周知されているわけではない。
- 従業員は自由度が高まったと感じているが、にもかかわらず回答者の半分近く(43%)が今後1年以内に退職する可能性が高いと答えている。逼迫する労働市場と新たに出現した機会の中で、彼らの最重要事項は給与総額である。
- 退職する可能性が高いと回答した人が最も多かったのは、米国のZ世代・ミレニアル世代(53%)とテクノロジー/ハードウェア分野(60%)。
- 働き方の変化に積極的に取り組んでいる企業の方が、生産性と企業文化の面で現在と今後の変化について楽観的。
- 企業側も従業員側も、さらに関心と行動が必要な分野として「トータルリワード」と「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス)」の両方を挙げる。
私たちは、より持続可能で、人を中心に据えた人材戦略を、再考する時を迎えています。決断力を持ってこの瞬間に反応し、ビジネスの持続可能な変革の必要性を認識することで、企業は人材パイプラインと将来的な価値を守る働き方を新しく定義していくことができます。
変わってしまった世界で私たちはどのように働いているのか
新型コロナウイルス感染症のパンデミックとその影響を乗り越えて先に進みたいと思っていても、私たちはまだ流動的な状況の中で揺れ動いています。働き方に関しても同じです。当初は企業も従業員も、必要に迫られ、近年最大級ともいえる健康への脅威をなんとか切り抜けようと短期的な決断を下していましたが、現在では働き方に対する姿勢や戦略は、他のマクロトレンドに影響されています。世界銀行の分析によると、今後は経済成長の鈍化とインフレ率の高止まり、気象・気候災害がもたらす甚大な被害に対応するための協調行動の必要性が予想されています。
現在も世界の一部で「大量退職時代」が本格的に進行する中、こうした背景が企業投資と従業員心理に作用しています。