不確実な時代に確実性をもたらす高品質な監査とは

9 分 2022年7月13日
執筆者 Marie-Laure Delarue

EY Global Vice Chair – Assurance

マリー・ロール・ドラリュー / 変化の推進者。人材育成に情熱を注ぐ。イノベーションを促進。バイリンガル。ワイン好き。

9 分 2022年7月13日

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品質がこれほどまでに重要視されたことはいまだかつてありません。EYのチームでも、Sustainable Audit Quality(SAQ)プログラムを通し、最優先課題として監査品質の改善に取り組み続けています。

要点
  • 世界中の国々が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックの影響を受ける中、高品質な監査を実施することがこれまで以上に重要になっている。
  • SAQプログラムの下で行われてきたEYの取り組みにより、EY組織全体に継続的改善の考え方が根付いた。
  • SAQプログラムを支えているのは、監査品質をさらに高い水準へと導く「人材」「データ」「価値」「信頼」という4つのテーマである。

EY Global Vice Chair - Assuranceとしての私の最重要目標は、「監査品質の継続的な改善」です。私は品質に妥協するつもりはありません。「辛うじて良い」では十分でないと考えています。

監査が高品質であれば、企業に対するステークホルダーの信頼も高まります。信頼が高まれば、投資の拡大や経済成長、ひいては社会全体に寄与する長期的価値創造にもつながっていくでしょう。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより世界中の国々で健康や金融面の影響を受けている中、高品質な監査を実施することがこれまで以上に重要となっています。不確実な時代において、企業、投資家、そして一般の人々が資本市場を支える監査の品質を信頼できることが極めて重要です。

品質に妥協するつもりはなく、「辛うじて良い」では十分でないと考えています。
Marie-Laure Delarue
EY Global Vice Chair – Assurance

このような困難な時期であっても、EYのチームは質の高い監査を提供し続けることで、公共の利益に貢献するとともに、信頼の獲得と自信の強化につなげています。EYのSustainable Audit Quality(SAQ)プログラムを活用したことで大きな前進を示し、EYの監査での強化をもたらしています。

SAQは、高品質な監査を実現するためのEYのグローバルな取り組みです。SAQでは6つの柱にわたって主要イニシアチブを展開しています。

SAQは数多くの成果を生み出しました。その詳細はEY Global Audit Quality Report 2021(PDF、英語版のみ)に記載されています。本レポートでは私の優先項目を4つのテーマ––「人材」「データ」「価値」「信頼」––に集約し、詳細に考察しています。これらは監査をさらに高い品質へと導くものです。

「価値」と「信頼」は、監査の目的について、また、「人材」と「データ」は手段について取り上げています。EYのチームが優秀な人材を継続的に呼び込んで育成し、監査メンバーらがもたらす価値と信頼を示し、また、監査業務へのデータと最新テクノロジーの導入により、さらなる品質改善に向けて前進していくことを私は固く信じています。

高品質な監査は企業のオペレーション全体にわたって付加価値をもたらし、政府、規制当局、基準設定機関、投資家、企業の経営陣や取締役会・監査委員会など幅広いステークホルダーに信頼を届けます。

テクノロジーと人材

SAQでは、EY Digital Audit、EY Digital Global Audit Methodology(GAM)、EY Canvas Client Portal、EY Blockchain Analyzer、人工知能(AI)ベースのEY Document Intelligenceなど、数多くの最新テクノロジーを取り入れています。

EY Digital Auditでは、監査に対しデータ主導によるアプローチの標準を設定しています。その基盤を成すのが、EY Canvasというグローバルなオンライン監査プラットフォームです。2020年には145,000件超の監査エンゲージメントで使用され、現在ではEY Canvas Client Portalを通して約12万人のEY担当者が35万社を超える企業ユーザーとつながっています。一方、EY Helixと呼ばれるアナリティクスプラットフォームは、毎年6,000億行を超える財務データを分析しており、2020年には57,000件の監査エンゲージメントで使用されました。

テクノロジーはSAQになくてはならない要素ではありますが、これまでに達成した進歩の中核となるのはEYの「人」です。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中で、彼らは逆境や困難を乗り越える力を示し、公約を掲げ、プロ意識を持って対応してきました。私は彼らが達成してきたことをとても誇りに思っています。レポートには、個々の監査人がどのように貢献できるのかを示す具体的なエピソードも含まれています。

その中の一人がアラン・ダグラスです。EYの各メンバーがオンラインで取得できる資格である、ハルト・インターナショナル・ビジネススクールのTech MBAを彼はアシュアランスで初めて取得しています(下のパネルを参照)。

  • EYで新しい分野を開拓できる高揚感

    米国ナッシュビルを拠点とするアラン・ダグラスは、2021年2月にハルト・インターナショナル・ビジネススクールのTech MBAを取得しました。

    卒業が決まったときは、とてもうれしく思ったそうです。「アシュアランスの修了生として一番にゴールできることを想像し、ここで学んだことを今後集中して仕事に還元できると実感し、高揚感を覚えました」

    「認定学位プログラムが始まったその日から、EYでの開拓者の一人になりたいと強く思ったのです。これは、自分のキャリア能力を加速させると同時に、ツール、テクノロジー、知見などを通して自身が実行できる価値を拡大していくための、次なる機会だと捉えました」

    アランは米国セントラルリージョンのコミュニケーション&ソリューション・リードであり、アシュアランスエンゲージメントに携わる各チームのデジタルマインドセットと業務のデジタル化を推進しています。

    アランはすでに、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用・向上に向けた設計フォーカスの採用など、EY Tech MBAで得たアイデアの一部を発展させているところだと語っています。カリキュラムの一環としてこのようなテーマに取り組めたことで、監査品質の向上とアシュアランス担当者のスキル強化に対する潜在的効果の視覚化に役立てられたとのことです。

    EYに入社する前、アランは音楽業界で働いていましたが、そこで最初に創造力と問題解決との関係を認識したそうです。

    「自分の職に対しては常にスキルアップを目指しています。EY Tech MBAはそれを実践する絶好の機会でした」とアランは付け加えます。

高品質な監査は、世界中で87,000人を超えるEYの監査プロフェッショナルらが最も重要視している点です。この中には、パートナーからアシスタントまで幅広い層のメンバーがおり、サービス・デリバリー・センター(Global Delivery Services)のネットワークの仲間も含まれています。

EYのネットワークでは、可能な限り幅広く人材を採用していく必要性を認識しています。すなわち、各部分を総和したものを上回る組織を生み出すというコミットメントです。監査にはすでにさまざまな分野のプロフェッショナルたちが関わっていますが、このような多くの学問領域にわたる専門的なモデルは今後ますます重要になっていくでしょう。データ、AI、ブロックチェーン、環境リスク、サイバー攻撃の脅威、不正、税務や評価などといった、多様な分野の知識を持つプロフェッショナルの必要性がますます高まっています。

多様な視点

EYのネットワークでは長年、多様性についてリーダー的立場をとり続けてきました。これには思考の多様性も含まれています。堅固かつ多様で包括的なチームを編成するために、EYは組織的に取り組んできました。職業的見地から生じる懐疑心や異議の申し立て、あるいは批判的思考などの姿勢が基本となる監査では、こうした取り組みは特に重要です。多様なチームの形成を通じて包括的な職場環境が醸成され、より関連性のある知見を深めやすくすることもできます。

従業員は、会社組織が一人一人を個人として大切にするだけでなく、幅広い経歴や視点にも価値を置いていると感じる必要があります。このような誇りと帰属感を醸成することは、EYのネットワークが最も優秀な人材を採用し、彼らの意欲と熱意を維持するために極めて重要です。

EYの組織全体にわたり、各リーダーは従業員エンゲージメントを優先項目とし、それを人材管理プログラムの重要な指標とする必要があります。2021年7月に行われた従業員への聞き取り調査では、監査プロフェッショナルの86%が「EYのメンバーは誠実さ、団結力、他者への敬意、包括性を体現している」と回答し、77%が「EYは私が自分自身でいられる職場環境を提供している」という記述に同意しました。

包括的なチーム文化

86%

のEYの監査プロフェッショナルが誠実さ、団結力、他者への敬意、包括性を体現していると回答

77%

のEYの監査プロフェッショナルが「EYは私が自分自身でいられる職場環境を提供している」に同意

近年では、監査チーム内のジェンダーの多様性に関する意識改革が特に注目を集めています。 監査のメンバーファームにおいて2021年7月1日付で新しく昇進したパートナーの37%は女性でした。2020年についても、世界全体での監査関連採用の52%が女性でした。こうしたことにも支えられて、女性リーダーの強力なパイプラインが形成されています。

EYが従業員、テクノロジー、システムに対して実施してきた取り組みは、継続的な改善意識を定着させ、変化をもたらしています。これを最もよく証明しているのが、内部・外部組織による調査結果の向上です。

しかし、なすべきことはまだまだあります。将来の監査では、監査人に対して新たな要求や期待が生じるでしょう。変化のペースが加速する中、そのような新しい状況を予想しながら、監査品質の継続的向上という最重要目標を決して忘れないことが不可欠です。

サマリー

EY Global Assurance Vice Chairであるマリー・ロール・ドラリューが、不確実な時代に確実性をもたらす上で高品質な監査が強力なツールとなる理由を考察します。「人材」「データ」「価値」「信頼」という4つの中心的なテーマにスポットライトを当て、これらがどのように資本市場において信頼と信用を築く高品質な監査の基盤となるのかを示します。これが重要であるからこそ、EYはSustainable Audit Qualityプログラム(PDF、英語版のみ)に取り組み続けています。

この記事について

執筆者 Marie-Laure Delarue

EY Global Vice Chair – Assurance

マリー・ロール・ドラリュー / 変化の推進者。人材育成に情熱を注ぐ。イノベーションを促進。バイリンガル。ワイン好き。