また、ポジティブな効果だけでなく、自らの投資意思決定がサステナビリティ要因に及ぼす、主要な不都合なインパクト(PAI: Principal Adverse Impacts)の考慮の有無とその方法に関する説明や、定量的な指標を含む開示12 を継続的に行う旨を明示することも同時に求められています(第7条)。温室効果ガス(GHG)排出量削減だけが優先される課題ではなく、貧困の解消、人権侵害や生物多様性への影響など、サステナビリティの達成には、現実にはさまざまなトレードオフがありえます。このため、ポジティブなインパクト達成への取り組みが本格化するにつれて、表裏一体となるネガティブなインパクトの公平な認識が、より重要になってきたということでしょう。
日本では、2020年に再改訂されたスチュワードシップ・コード13 において、機関投資家の責任の一つとして、「運用戦略に応じたサステナビリティの考慮」がうたわれましたが(原則7)、サステナブルを名乗る商品が販売される際の、SFDRのような具体的な開示規制は導入されていません。しかしながら、市場参加者や個々の金融商品が与えるインパクトの客観的で公平な把握が求められる中、何らかの形で、このような情報が今まで以上に豊富に提供されるようになるに違いありません。
インパクトの測定と管理
では、「インパクト」たるものを客観的に測定・管理する方法はあるのでしょうか。
国際的なイニシアチブであるIMP(インパクト・マネジメント・プロジェクト)によれば、インパクトとは、「組織によって引き起こされる結果(アウトカム)に対する変化」と定義されています 14 。ポジティブなものもネガティブなものも、意図的なものも意図せざるものも含まれることがポイントであり、測定は5つの切り口、①アウトカムへの貢献(What)、②享受するステークホルダーと困窮度(Who)、③享受の程度(How much)、④貢献の有無(Contribution)、⑤インパクトの不確実性(Risk)で行うとされています。
また、この測定に客観的な尺度をもたらすべく、IMP傘下のGIIN(グローバルインパクト投資ネットワーク)ではIRIS+ 15 というサービスを公開しており、さまざまな環境・社会アジェンダに対応したアウトカムを測るための、定量的指標を提案しています。表3がその内容の一部です。