EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
会計品質管理部トピックス
平成20年3月10日に改正企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(以下、改正基準等)が、企業会計基準委員会(ASBJ)から公表されました。本改正基準等は、金融取引をめぐる環境が変化する中で、金融商品の時価情報に対するニーズが拡大していることなどを踏まえて、金融商品についてその状況やその時価等に係る事項の開示の充実を図るために検討されたものです。
なお、本稿において意見にわたる部分については、執筆者の私見であり、当法人の公式見解ではありません。
(公開草案からの変更点)
平成19年7月に公表した公開草案では、原則として平成21年4月1日以後開始する事業年度から適用することとされていましたが、実務的な影響を考慮して、適用初年度は四半期での適用はしないものとされました。
以下の事項を注記します(改正基準第40-2項(1)、適用指針第3項他)。
①金融商品に対する取組方針
②金融商品の内容及びそのリスク
③金融商品に係るリスク管理体制
④金融商品の時価等に関する事項についての補足説明
金融資産と金融負債ごとの取組方針やリスクの種類等の具体的な項目に関しては、適用指針第3項等に記載されています。
(適用時期が遅れる注記事項)
③の記載において、特に、金融資産および金融負債の双方が総資産および総負債の大部分を占め事業目的に照らして重要であり、主要な市場リスクに係るリスク変数(金利や為替、株価等)の変動に対する金融資産等の感応度が重要な企業は、リスク管理上、市場リスクに関する定量的分析を利用しているか否かに応じて、次の事項を記載する。
(ⅰ)定量的分析に基づく情報およびこれに関する情報(同分析を利用している金融商品)
(ⅱ)リスク変数の変動を合理的な範囲で想定した場合における貸借対照表日の時価の増減額およびこれに関連する情報等
原則として、金融商品に関する貸借対照表の科目ごとに、貸借対照表計上額、貸借対照表日における時価およびその差額ならびに当該時価の算定方法を注記します(適用指針第4項他)。
以下の項目に関しては、基本的な時価等の開示に加えて、それぞれ追加的な注記が必要とされています(適用指針第4項)。
時価をもって貸借対照表価額とする有価証券であっても、これまでは市場性のない有価証券は、例外的に取得原価または償却原価法を貸借対照表価額としていましたが、上記の開示の実効性を高めるために、時価を算定することが極めて困難と認められるものに対象が限定されます(改正基準第19項、第81項、第81-2項)。
これを受けて、以下のように他の個所の表現も改正されます。
四半期財務諸表においては、上記の注記がそのまま適用されず、四半期財務諸表に関する会計基準等に定められた注記(時価のある満期目的の債券やデリバティブ取引の時価等について著しい変動がある場合の注記)が踏襲されます。なお、同基準等は最小限の注記項目であるため、これを上回る開示は妨げられません(適用指針第40項)。
注記事項が拡大することとなるため、本適用指針には具体的な開示例(製造業、金融業)が添付されています。
これまで新たな会計基準等の公表に伴い、既存の会計基準等の関連部分において字句修正が必要となる場合には、個々の会計基準等を改正していましたが、本改正基準では一括して関連する会計基準等の字句修正を行う方法を採用しています(改正基準第121項)。
本稿は改正企業会計基準第10号および企業会計基準適用指針第19号の概要を記述したものであり、詳細については、以下の財務会計基準機構/企業会計基準委員会のウェブサイトをご参照ください。