平成22年3月期 決算上の留意事項

会計情報トピックス 佐伯洋介・吉田剛

平成22年3月期決算において適用されるまたは早期適用可能な会計基準等が数多くあります。また、開示府令や財務諸表等規則等の改正が行われ、新たに開示すべき事項が増えているとともに、現下の経済環境において留意すべき会計処理や開示事項にも注意を払う必要があります。本稿では、これらのうち主なものについて解説を行います。

なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であり、法人の公式見解ではないことを、あらかじめお断りします。

Ⅰ 平成22年3月期から適用される会計基準等

  1. 改正企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」

  2. 企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第23号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」

  3. 企業会計基準第19号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正(その3)」

  4. 企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」

Ⅱ 平成22年3月期から早期適用可能な会計基準等

  1. 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等(平成20年12月26日公表・改正)

Ⅲ 平成22年3月期の開示上の留意事項

  1. 有価証券報告書に係る開示

  2. 会社法の各種書類に係る開示

Ⅳ 平成22年3月期の会計処理上の留意事項

  1. 税効果会計

  2. 固定資産の減損会計

  3. 退職給付会計

  4. 継続企業の前提に関する事項
     


Ⅰ 平成22年3月期から適用される会計基準等

1. 改正企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」

(1)適用時期・適用範囲など

原則として、平成22年3月31日以後終了する事業年度の年度末から適用するものとされています(改正基準41項(4)および適用指針6項)。なお、金融業等に求められる定量的なリスク情報に係る開示については、平成23年3月31日以後終了する事業年度の年度末からの適用とすることができます(改正基準41項(4)なお書きおよび適用指針7項)。

本会計基準等の適用について、会計処理に影響を及ぼす場合には、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱うことになるものと考えられます。また、会計処理に影響を及ぼさない場合でも、追加情報を記載することが考えられます。

(2)会計基準の適用に伴う主な相違点

① 開示を除く主な改正点

改正基準の適用により、従来の取り扱いと異なる主な点は下表のとおりとなります。

図表1 時価が開示されない有価証券の範囲

改正後の取り扱い

時価が開示されないことになる有価証券を「時価を把握することが極めて困難な有価証券」に限定(改正基準19項および81-2項)

従来の取り扱い

「市場価格のない有価証券」について、例外的な取り扱いとして取得原価または償却原価法に基づき会計処理されていた

これまで、「市場価格のない有価証券」に該当するものとして、取得原価または償却原価法で会計処理をされていた有価証券のうち、例えば将来キャッシュ・フローが約定されている債券等については、市場価格のない株式と異なり、時価を把握することが極めて困難と認められる場合は多くないという意見も多いとされています。これらの理由により、債券等に関しては「時価を把握することが極めて困難」と認められる場合が限定的と考えられることが示されています(適用指針39項)。この取り扱いの変更によって、当該有価証券が「その他有価証券」に分類されている場合には、従来と異なり期末の時価評価が必要となることが考えられ、場合によっては減損処理が必要となるケースも考えられます。このような場合には、会計基準の変更により会計処理に影響を及ぼすこととなります。

② 開示に係る主な改正点

改正基準および適用指針の適用により開示が求められる内容は、適用指針3項および4項に定められているとおりとなります。

これまで有価証券やデリバティブで開示されていた時価等に関して、金融商品全体にその対象が拡大されています。具体的には、定性的情報と定量的情報に分けて、以下の情報を開示することが必要とされています。

図表2 適用指針に定められる注記事項

金融商品の状況に関する事項
(指針3項)

金融商品に対する取組方針


 

金融商品の内容およびそのリスク


 

金融商品に係るリスク管理体制(*1


 

金融商品の時価等に関する事項についての補足説明

金融商品の時価等に関する事項
(指針4項)(*2
金融商品に関する科目ごとに貸借対照表計上額

 

貸借対照表日における時価(*3


 

貸借対照表計上額と時価の差額


 

時価の算定方法

(*1)リスク管理体制に関する事項のうち、金融業等で求められる市場リスクに関する定量的なリスク分析については、開示を翌期からとすることができます(適用指針7項)。
(*2)有価証券、デリバティブ取引、金銭債権および満期がある有価証券、社債・長期借入金・リース債務およびその他の有利子負債、金銭債務の各科目については、別途追加的な開示項目を記載することが必要です(適用指針4項(2)~(6))。
(*3)時価を把握することが極めて困難なため、時価を注記しない場合は、金融商品の概要貸借対照表計上額およびその理由の注記が必要となります(適用指針5項)。

(3)適用範囲

従来の有価証券やデリバティブ取引についての注記による情報開示が、金銭債権や金銭債務等の金融商品全般に対象範囲が拡大されます(下表参照)。また、各項目に関する定性的情報および定量的情報についても開示項目が拡大されます。ただし、重要性が乏しいものは注記を省略することができるとされています(適用指針3項、4項)。

図表3 適用対象となる項目の例

開示対象

資産

現金および預金、受取手形および売掛金、有価証券、リース債権、リース投資資産(リース料債権に係る部分)、貸付金(建設協力金を含む)、ゴルフ会員権、デリバティブ債権、差入預託保証金などの金銭債権


 

負債

支払手形および買掛金、借入金、社債、リース債務、デリバティブ債務、預り預託保証金などの金銭債務


 

その他

債務保証契約、当座貸越契約および貸出コミットメント・ラインなど

(参考)
開示対象外

 保険契約、退職給付債務、年金資産、発行者における新株予約権など純資産の部に計上される項目

また、有報に限らず、会社法の計算書類においても、開示対象となります(会社計算規則98条1項8号、109条)。

なお、連結財務諸表において注記する場合、個別財務諸表における記載は不要とされています(基準40-2項、指針3項)。


(4)注記事項

① 金商法に基づく開示

連結財規および財規に基づく開示事項を下表にまとめていますので、ご参照ください。

 

図表4 有価証券報告書における金融商品の時価等の開示

金融商品関係(連結財規15条の5の2、財規8条の6の2)
  • 金融商品の状況に関する事項 
    • 金融商品に対する取組方針
    • 金融商品の内容およびそのリスク
    • 金融商品に係るリスク管理体制
  • 金融商品の時価に関する事項
  • 市場リスクに関する定量的分析(*1)
  • 期間ごとの金銭債権等の償還予定額
  • 期間ごとの有利子負債の返済予定額(*2)
  • リスク・フリー・レートで割り引いた金銭債務の金額(*3)

有価証券関係(連結財規15条の6、財規8条の7)
  • 保有目的区分ごとのB/S計上額、時価、評価差額など
  • 当期売却したその他有価証券等に係る注記
  • 保有目的を変更した場合の注記
  • 減損処理を行った場合の注記
  • 子会社株式および関連会社株式の時価情報(*4)
  • 実務対応報告第26号により債券の保有目的区分を変更した場合の注記

デリバティブ関係(連結財規15条の7、財規8条の8)
  • ヘッジ会計が適用されていないもの、適用されているものに分けて以下の事項を注記する
    • 契約額または契約において定められた元本相当額
    • 時価および評価損益(*5)
    • 時価の算定方法

(*1)翌期からの開示とすることができます。
(*2)附属明細表で代替可能とされています。
(*3)任意開示事項であり、連結財規および財規に規定はありませんが、適用指針4項(6)に従い注記する場合には、本項目に記載することが考えられます。
(*4)個別財務諸表のみの注記事項とされています。
(*5)ヘッジ会計が適用されている場合に、評価損益に係る注記は不要とされています。



② 会社法に基づく開示

前述のとおり、会社法の計算書類においても、開示対象となることが明示されましたが(会社計算規則98条1項8号、109条)、規則上の規定では以下の事項を開示するものとされています。

  • 金融商品の状況に関する事項

  • 金融商品の時価等に関する事項

2. 企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第23号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」

(1)適用時期・適用範囲など

原則として、平成22年3月31日以後終了する事業年度の年度末から適用するものとされています(基準9項)。本会計基準等の適用により、新たに注記する事項については、会計基準の変更に伴う会計方針の変更には当たらないものとされていますが(基準35項参照)、本決算で注記を行う場合には、追加情報として記載することが考えられます。

本会計基準は、賃貸等不動産の保有企業に適用するものとされています(基準3項)。

(2)会計基準の概略

本会計基準は、財務諸表の注記事項である賃貸等不動産の時価等の開示について、その内容を定めることを目的として公表されたものです(基準1項)。

① 「賃貸等不動産」の定義

賃貸等不動産とは、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益またはキャピタルゲインの獲得を目的として保有されている不動産をいうものとされており(基準4項(2))、以下の不動産が含まれます(基準5項および6項)。

  • 貸借対照表において投資不動産として区分されている不動産

  • 将来の使用が見込まれていない遊休不動産

  • 上記以外で賃貸されている不動産

  • 将来において賃貸等不動産として使用される予定で開発中の不動産や、継続して賃貸等不動産として使用される予定で再開発中の不動産

  • 賃貸目的で保有されているにもかかわらず、一時的に借手が存在していない不動産

また、物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている場合は賃貸等不動産には含まれないとされていますが(基準4項(2))、双方の目的で使用されている場合には、賃貸等不動産として使用される部分について、時価等の開示の対象に含めるものとされています(基準7項)。ただし、賃貸等不動産として使用される部分の割合が低いと考えられる場合には、賃貸等不動産に含めないことができます(基準7項ただし書き)。

なお、開示の範囲に含まれるか否かを判定するフローチャートの例を下表に示していますので、ご参照ください。

図表5 投資不動産、遊休不動産以外の開示判定フローチャート(例)

図表5 投資不動産、遊休不動産以外の開示判定フローチャート(例)
② 賃貸等不動産の開示の要否

賃貸等不動産の総額に重要性が乏しい場合には、注記を省略することができるとされており(基準8項ただし書き)、重要性の算定式は以下によるものとされています。

賃貸等不動産の開示の要否
③ 時価の算定方法

時価とは公正な評価額をいうものとされ(基準4項(1))、その算定方法については下表のように定められています。

 

図表6 賃貸等不動産における時価

原則

例外(容認)

①観察可能な市場価格に基づく価額

①重要性の乏しいものは一定の評価額や適切な指標に基づく価額を時価と見なすことができる

②市場価格が観察できない場合には、合理的に算定された価額(自社における合理的な見積もりまたは不動産鑑定士による鑑定評価等)

②第三者からの取得時または直近の原則的な時価算定を行った時から、一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標に重要な変動が生じていない場合には、当該評価額や指標を用いて調整した金額

③①における変動が軽微であるときは、取得時の価額または直近の原則的な時価算定による価額

なお、範囲設定後の一連のフローを下表にまとめましたので、ご参照ください。

図表7 開示範囲設定後の一連のフロー

図表7 開示範囲設定後の一連のフロー
(*1)竣工前の建物などでは例外的な取り扱いが認められるものと考えられる。
(*2)「時点修正」に準じた取り扱いが定められている。

(3)注記事項

① 金商法に基づく開示

(連結)財規において規定される注記事項は、基準8項と同様であり、項目は以下に記載したとおりとなっています。

  • 賃貸等不動産の概要 
    • 主な賃貸等不動産の内容、種類、場所
       
  • 貸借対照表計上額および期中における主な変動 
    • 期中における変動に重要性がある場合、その事由および金額を記載
       
  • 当期末における時価およびその算定方法 
    • 時価は簿価と比較できるように記載
       
  • 賃貸等不動産に関する損益 
    • 損益計算書における金額に基づき注記
② 会社法に基づく開示

会社法計算書類においても、開示対象となることが明示されており(会社計算規則98条1項9号、110条)、規則上の規定では以下の事項を開示するものとされています。

  • 賃貸等不動産の状況に関する事項

  • 賃貸等不動産の時価に関する事項

3. 企業会計基準第19号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正(その3)」

(1)改正点

割引率の決定に際し、一定期間の債券の利回りの変動を考慮して決定することができるとしていた「退職給付に係る会計基準注解」(注6)のなお書きが削除されたため、これまでのように債券の利回りの5年平均を割引率とすることはできなくなり、期末における利回りを基礎とすることとなりました(基準2項)。

なお、これまでと同様に、割引率に重要な変動が生じていない場合には、これを見直さないことができます(基準11項なお書き)。

(2)補正計算

「合理的な補正計算」の方法として、社団法人日本アクチュアリー会および社団法人日本年金数理人会の「退職給付会計に係る実務基準」IV.割引率に関する合理的な補正計算方法(例示)には、直線補間により補正計算する方法と、平均割引期間の概念を用いた近似式を使用する方法が示されています。

割引率i%の退職給付債務・勤務費用について、割引率p%とq%の退職給付債務(p)(q)、勤務費用(p)(q)の計算結果を用いて補正を行う場合は、次のように計算することになります((社)日本アクチュアリー会および(社)日本年金数理人会の「退職給付会計に係る実務基準」付録VI)。

  • 線形補間方式
    PBO(i)={(PBO(q)-PBO(p))×(i-p)}/q-p+PBO(p)

  • 対数補間方式
    PBO(i)=PBO(p)×{(1+p/100)÷(1+i/100)n
    n=log(PBO(p)÷PBO(q))÷log{(1+q/100)÷(1+p/100)}
    ※ 勤務費用も同様に、上記PBOを勤務費用に置き換えて計算

設例

前期の割引率 2.5%
当期の重要性の範囲 1.9~3.2%
当期の割引率 1.8%
計算依頼した割引率 1.5%、2.0%、2.5%
割引率1.5%のPBO 6,000、勤務費用 240
割引率2.0%のPBO 5,000、勤務費用 200
補正計算の方法-直線補間により計算

補正計算によるPBO

補正計算によるPBO

補正計算による勤務費用

補正計算による勤務費用

補正計算による勤務費用

(3)適用初年度における開示

  • 会計方針の変更による影響額として以下を開示します。
     
    • 損益計算書への影響額

    • 未認識数理計算上の差異の未処理残高

設例

前期の割引率 2.5%
当期の重要性基準の範囲 1.9~3.2%
当期の割引率(5年平均)1.8%の場合のPBO 1,200
当期の割引率(期末日)1.7%の場合のPBO 1,100

⇒未認識数理計算上の差異の未処理残高 100(=1,200-1,100)


4. 企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」

(1)適用時期・適用範囲など

原則として、平成21年4月1日以後開始する事業年度から適用するものとされています(基準23項)。本会計基準等の適用については、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱うことになります(基準27項)。

また、本会計基準は、その適用初年度の期首以後に着手する工事契約から適用するものとされています(基準24項)。また、「着手」とは、工事契約に係る工事原価の発生が開始することを指します(基準72項)。

(2)会計基準の適用に伴う主な相違点

本会計基準の適用により、従来の取り扱いと異なる主要な点は下表のとおりとなります。

図表8 工事契約会計基準の適用による従来との主な相違点

項目

工事契約会計基準

従前の会計基準等

工事進行基準の選択

成果の確実性が認められれば適用が必要(基準9項)

選択適用

工事進行基準の適用要件

信頼性をもった成果の確実性(工事収益総額・工事原価総額・決算日における工事進ちょく度)の見積もりの可否(基準9項)

明示されたものはない

工事進行基準が適用される対象工事の工期

長期に限定しない(ごく短いものは除外可)(基準52項・53項)

長期請負工事に限定

販管費の工事原価への算入の可否

認められていない(基準34項)

算入することが可能

工事損失引当金の計上

引当計上が明示されている(基準19項)

企業会計原則注解18(引当金の要件)ほかで検討


(3)前事業年度以前に着手した工事の取り扱い

  • 本会計基準を適用しない場合(基準24項)
     
    • 従前の処理(工事完成基準・工事進行基準)を継続することになります(基準73項)。

    • 適用期首前に着手した工事契約についても、工事損失引当金の計上が必要となる場合には、計上が求められます(基準26項)。
       
  • 本会計基準を適用する場合(基準25項)
     
    • 期首に存在する工事契約について、一律に適用することが求められます。

    • 工事進行基準の適用による過年度の工事進ちょくに見合う損益については、以下の取り扱いとなります。

      •  特別利益または特別損失に計上します。
         
      • 過年度の工事進ちょくに見合う工事収益と工事原価を注記する必要があります。
         
  • 前事業年度以前に着手した工事に係る工事損失引当金繰入額についても、売上原価に含めることが必要となります(基準74項)。

(4)開示上の留意事項

  • 重要な会計方針
     
    • 工事契約に係る認識基準を注記します(基準22項(1))。

    • 決算日における工事進ちょく度を見積もるために用いた方法も記載する必要があります(基準22項(2))。

      •  原価比例法を用いる場合にはその旨、それ以外の方法によっている場合には、見積方法の具体的な説明を記載します。
         
  • 重要な会計方針の変更
     
    • 変更の旨、変更の理由、変更による影響額の注記が必要となります。

    • 従来、工事進行基準を採用していた場合にも注記が必要となる点に留意が必要です。

    • 段階損益に対する影響のほか、売上高に対する影響を記載することが考えられます。
       
  • B/S注記 
    • 同一の工事契約について、棚卸資産と工事損失引当金の表示方法に係る注記が求められます(相殺表示・両建表示いずれの場合にも注記が必要とされています)(基準22項(4))。
  • P/L注記 
    • 当期の工事損失引当金繰入額を注記します(基準22項(3))。

    • 期首に存在するすべての工事契約について本会計基準を適用した場合、その旨および過年度の工事収益・工事原価を注記します(基準25項)。
       


Ⅱ 平成22年3月期から早期適用可能な会計基準等


1. 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等(平成20年12月26日公表・改正)

(1)適用時期・適用範囲など

① 適用される会計基準等

本改正により適用される会計基準等は下表のとおりとなります。

図表9 企業結合関係の会計基準等の平成20年12月改正一覧

  • 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下、企業結合基準)

  • 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下、連結基準)

  • 企業会計基準第23号「『研究開発費等に係る会計基準』の一部改正」

  • 改正企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」(以下、分離基準)

  • 改正企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」

  • 改正企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(以下、改正適用指針)

また、これらの公表・改正を受けて、平成21年6月9日付で日本公認会計士協会より会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」等の改正が公表されています(会計情報トピックス「改正『連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針』等のポイント」参照)。

② 適用時期など

原則として、平成22年4月1日以後実施される企業結合、事業分離等または非連結子会社および関連会社に対する投資に係る会計処理から適用するものとされています(企業結合基準57項など)。この場合、その他連結財務諸表に係る事項は平成22年4月1日以後開始する連結会計年度から適用になります(連結基準44項(1))。

また、早期適用が認められており、平成21年4月1日以後開始する連結会計年度(事業年度)において、最初に実施される上記の会計処理およびその他連結財務諸表に係る事項からこれら会計基準等を適用することができますが、この場合には①に記載された会計基準等のすべてを一斉に適用することが求められます(企業結合基準57項ただし書きなど)。

本会計基準等の適用については、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱うことになりますが、影響額の注記は、後述(3)②に記載した事項を除き、不要とされています(企業結合基準58項など)。

(2)会計基準の適用に伴う主な相違点

本会計基準の適用により、従来の取り扱いと異なる主要な点は下表のとおりとなります。


 

図表10 企業結合会計基準の改正等による従来との主な相違点

項目

改正後の取り扱い

従来の取り扱い

企業結合(共同支配企業の形成および共通支配下の取引以外)の会計処理

持分プーリング法が廃止され、パーチェス法にて処理されることとなった(企業結合基準17項)。
⇒これに伴い、取得企業の判定方法も併せて改正されている。

企業結合が取得と判定された場合にはパーチェス法で、持分の結合と判定された場合には持分プーリング法で処理されていた。

企業結合に係る対価(株式を対価とする場合)の測定日

企業結合日の時価を基礎として算定されることとなった(企業結合基準24項など)。

原則として、企業結合の主要条件が合意され公表された前5日間の株価を基礎とするとされていた。

連結財務諸表における段階取得の会計処理

取得原価を企業結合日における時価で算定することとし、個々の取引の原価の合計額(持分法評価額を含む)との差額は損益として認識されることとなった(企業結合基準25項など)。

個々の取引における原価の合計額(持分法評価額を含む)をもって、支配獲得時の取得原価とするものとされていた。

負ののれんの会計処理

識別可能資産・負債の把握、取得原価配分の見直しを行い、なお負ののれんが生じる場合に、発生時の利益とするものとされた(企業結合基準33項など)。

のれん(借方)と同じく、一定の年数での償却処理が求められていた。

仕掛研究開発費の会計処理

識別可能な仕掛研究開発費について、無形固定資産として取得原価を配分し、資産計上することとなった(企業結合基準28項および29項など)。

仕掛研究開発費に取得原価が配分された場合、配分時の費用とするものとされていた。

連結財務諸表作成時の子会社の資産・負債の評価方法

部分時価評価法が廃止され、全面時価評価法に一本化された(連結基準20項)。

全面時価評価法と部分時価評価法の選択適用とされていた。

在外子会社株式の取得により生じたのれんの換算

各子会社に適用される決算日時点の換算レートで、毎期換算替されることとなった(改正適用指針77-2項)。

親会社の通貨である円貨で固定されているとし、発生時のレートで換算されていた。

共同支配投資企業に対する投資の会計処理

「のれん」部分を処理する方法(通常の持分法)で会計処理を行うこととなった(企業結合基準39項(2))。

「のれん」部分を処理しない方法(持分法に準じた処理方法)で会計処理されていた。

連結会計基準に定めのない企業結合に係る会計処理・開示(※)

企業結合会計基準に準拠した処理・注記を行うことが明確化された(連結基準注15)。

企業結合会計基準の定めに準じて処理することができるとされており、準じた処理を行った場合には注記が必要とされていた。

「少数株主損益調整前当期純損益」の表示

連結損益計算書の「少数株主損益」の直前に「少数株主損益調整前当期純損益」が表示されることとなった(連結基準39項(3)②)。

税金等調整前当期純損益と最終損益(当期純損益)との間に段階損益は表示されていなかった。

特に、開示面において、従来は企業結合や事業分離の注記が求められていなかった、連結会計基準に従って会計処理された企業結合(新たに子会社を連結に含めることとなった場合や子会社株式の追加取得および一部売却等があった場合)についても、以下の注記が必要とされたため、留意が必要です(上表(※))。

  • 取得とされた企業結合の注記(結合基準49項、連結財規15条の12)

  • 共通支配下の取引等に係る注記(結合基準52項、連結財規15条の14)

  • 共同支配投資企業の注記(結合基準54項、連結財規15条の15)

  • 子会社を結合当事企業とする親会社の注記(分離基準54項、連結財規15条の18)

  • 重要な後発事象等の注記(結合基準55項、分離基準56項、連結財規15条の19~21)

(3)適用初年度の留意事項

① 従前の会計処理等の取り扱い

原則として、本会計基準等の適用により、従前の会計処理についてはその取り扱いを継続し、適用日において会計処理の見直しおよび遡及(そきゅう)的な処理は行わないとされています(企業結合基準58項ただし書きなど)。従って、過年度に負債に計上した負ののれんについても、従来の処理・開示を継続することになります(平成21年内閣府令第5号附則3条1項1号)。

ただし、本会計基準等の適用前において、子会社の資産・負債の評価方法として部分時価評価法を採用していた会社は、その適用初年度の期首時点において、全面時価評価法を用いた評価額に修正する必要があります(連結基準44項(3)ただし書き)。

② 影響額の記載の取り扱い

①に記載した、部分時価評価法から全面時価評価法への修正による影響額を除いて、会計方針の変更に伴う影響額の注記は要しないものとされています(連結基準44項(4)など)。


Ⅲ 平成22年3月期の開示上の留意事項


1. 有価証券報告書に係る開示

新会計基準等以外の部分では、以下のものについて新たに開示を要求されます。

  • 定時株主総会前に有価証券報告書を提出する場合

  • 行使価額修正条項付新株予約権付社債券等(MSCB)を発行している場合

  • 従業員株式所有制度の内容

  • コーポレート・ガバナンスの状況に係る改正

  • IFRSの任意適用

  • 連結財務諸表等の適正性を確保するための特段の取り組みを行っている場合

(1)定時株主総会前に有価証券報告書を提出する場合

定時株主総会前に有価証券報告書を提出する場合、その記載事項および当該記載事項に関するものが当該定時株主総会または当該定時株主総会の直後に開催が予定される取締役会の決議事項となっているときは、それぞれ該当する個所において、その旨およびその概要の記載が必要となります。

(2)行使価額修正条項付新株予約権付社債券等(MSCB)を発行している場合

取得請求権付株券を発行した場合には「第4 提出会社の状況」「1 株式等の状況」「(1)株式の総数等」「①株式の総数」の図表の「種類」の欄にその旨を記載する必要があります(様三記(20)c)。そして、「②発行済株式」「内容」の欄には、冒頭に行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の特質を具体的に記載する必要があります(様三記(20)d)。

また、「②発行済株式」の図表の欄外に以下のものを記載することとなります(様三記(20)e)。

  • 取得請求権付株券等と密接な関係を有するデリバティブ取引その他の取引の内容を一体と見なした場合に、行使価額修正条項付新株予約権付社債券等と同じ性質を有することとなるときには、デリバティブ取引その他の取引の内容

  • 権利行使を制限するために支払われる金銭その他の財産に関する事項を含む行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の権利の行使についてその所有者との取り決め内容(取り決めがない場合にはその旨)

  • 空売りを含む発行者の株券の売買に関する事項について、その所有者との間の取り決め内容(取り決めがない場合にはその旨)

  • 発行者の株券の貸借に関する事項について、その所有者と発行者の特別利害関係者等との間の取り決めがあることを知っている場合には、その内容(取り決めがない場合にはその旨)

  • その他投資者の保護を図るための重要な事項

なお、行使価額修正条項付新株予約権付社債券等として新株予約権等を発行している場合には、その旨、特質とともに、「②発行済株式」の図表の欄外の記載と同様のものを「新株予約権等の状況」の図表の欄外に記載します(様三記(21)f)。

また、「行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の行使状況等」について、平成22年3月期決算では記載事項がないこととなります(様三記(21-2)、平成21年内閣府令第73号附則8条3項)。

(3)従業員株式所有制度の内容

以下のものを「第4 提出会社の状況」「1 株式等の状況」において「(10)従業員株式所有制度の内容」として具体的に記載する必要があります(様三記(27-2)、様二記(47-2)a)。

  • 従業員株式所有制度の仕組み、信託を利用する場合の受益権の内容等、従業員株式所有制度の概要

  • 従業員等持株会に取得させ、または売り付ける予定の株式の総数または総額

  • 従業員株式所有制度による受益権その他の権利を受けることができる者の範囲

なお、従業員株式所有制度を導入していない場合には、項目名も含め記載は不要とされている点に注意が必要です(様三記(27-2)、様二記(47-2)b)。

(4)上場会社等(金商法24(1)①または②に掲げる有価証券(ただし、金商法5(1)に規定する特定有価証券を除く)を発行する者)のコーポレート・ガバナンスの状況に係る改正

① 企業統治の体制(様三記(37)、様二記(57)a(a)~(c))
  • 企業統治の体制の概要および当該体制を採用する理由の具体的な記載

  • 財務および会計に関する相当程度の知見を有する監査役または監査委員がいる場合には、その事実

  • 社外取締役および社外監査役(いずれも、会社法施行規則2(3)⑤の社外役員に該当する者。以下、同じ)の人数

  • 社外取締役および社外監査役が企業統治において果たす機能および役割

  • 社外取締役および社外監査役による監督または監査と内部監査、監査役(監査委員会)監査および会計監査との相互連携ならびに内部統制部門との関係についての具体的な記載

  • 社外取締役または社外監査役を選任していない場合、それに代わる社内体制および当該社内体制を採用する理由の具体的な記載など

② 役員報酬(様三記(37)、様二記(57)a(d))

  • 提出会社の役員ごとに、氏名、役員区分、役員の報酬等(最近事業年度前のいずれかの事業年度に係る有価証券報告書に記載したものを除く)、の種類別(基本報酬、ストックオプション、賞与、退職慰労金等)の記載。ただし、役員が主要な連結子会社の役員である場合には報酬等に当該連結子会社からの報酬を含み、報酬等の額が1億円以上である者に限定することができる。

  • 取締役(社外取締役除く)、監査役(社外監査役除く)、執行役および社外役員の区分ごとの報酬等の総額、種類別の総額および役員の人数

  • 使用人兼務役員の使用人給与のうち重要なものについて、その総額、対象となる役員の人数およびその内容

  • 提出会社の役員の報酬等の額またはその算定方法に係る決定に関する方針の有無、方針がある場合にはその内容および決定方法

③ 株式の保有状況(様三記(37)、様二記(57)a(e))(銀行等以外の会社)

イ. 純投資目的以外の目的で保有する株式の銘柄数および貸借対照表計上額の合計額を記載する。

ロ. 純投資目的以外の目的で保有する株式(非上場株式除く)について、(ⅰ)または(ⅱ)に該当する場合には、銘柄、株式数、貸借対照表計上額を記載するとともに、当該銘柄ごとの保有目的を具体的に記載する。
(ⅰ)銘柄別による有価証券の貸借対照表計上額が、当事業年度の資本金額または株主資本の合計額のうち少ない金額の100分の1を超える場合
(ⅱ)貸借対照表計上額の上位10銘柄に該当する場合

ハ. 純投資目的で保有する株式は、上場株式と非上場株式に区分し、当事業年度および前事業年度の貸借対照表計上額、当事業年度の受取配当金、売却損益および評価損益のそれぞれの合計額を記載する。なお、株式の保有目的(純投資目的とそれ以外)の変更を行った場合には、銘柄ごとに、銘柄、株式数、貸借対照表計上額を記載する。

なお、銀行等は、開示項目が異なったり、適用時期が1期遅くなるものがあるなど、別の取り扱いとなっています。

また、平成23年3月期決算以降、みなし保有株式(議決権行使権限を有する株式。例えば、保有株式を信託銀行に信託に出して信託受益権を譲渡したが、当該株式に係る議決権行使の指図権限を有するもの等)に係る開示を行うなど、追加の開示が求められます。

(5)IFRSの任意適用

  • 指定国際会計基準により連結財務諸表を作成した場合には、その旨を記載します(様三記(39)、様二記(59)b)。

  • 特定会社が連結財務諸表を作成していない場合であって、指定国際会計基準により財務諸表を作成したときには、その旨を記載します(様三記(39)、様二記(59)d)。

(6)連結財務諸表等の適正性を確保するための特段の取り組みを行っている場合

  • 「経理の状況」において、連結財務諸表等の適正性を確保するための特段の取り組みを行っている場合、その旨およびその取り組みの具体的な内容を記載する必要があります(様三記(39)、様二記(59)e)。

  • 「特段の取組み」とは、財務会計基準機構への加入や会計基準設定主体等の行う研修への参加により、会計基準等の内容を適切に把握し、または会計基準等の変更等について的確に対応することができる体制の整備をいうとされています(開示府令ガイドラインA 5-19-2)。


2. 会社法の各種書類に係る開示

新会計基準等以外の部分では、以下のものについて新たに開示を要求されます。

  • 上位10名の株主の状況

  • IFRSの任意適用

(1)上位10名の株主の状況

事業報告の「2.株式に関する事項」として、従前は発行済株式の10分の1以上を有する大株主の状況の開示が要求されていましたが、上位10名の株主の状況として以下の開示が要求されます(施行規則122条)。

  • 当該事業年度の末日において発行済株式(自己株式を除く)の総数に対するその有する株式の数の割合が高いことにおいて上位となる10名の株主の氏名または名称、当該株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類および種類ごとの数を含む)および当該株主の有する株式に係る当該割合

  • その他株式会社の株式に関する重要な事項

(2)IFRSの任意適用

  • 連結計算書類を指定国際会計基準により作成した場合には、その旨を記載するものとされました(計規120条(1)(2))。

  • 会社計算規則で表示すべき事項に相当するものを除くその他の事項は、省略することができますが、その場合には、指定国際会計基準により作成した連結計算書類である旨および計規で表示すべき事項に相当するものを除くその他の事項に省略した事項がある旨を記載することとされています(計規120条(1)(3))。
     


Ⅳ 平成22年3月期の会計処理上の留意事項


1. 税効果会計

(1)監査委員会報告第66号の会社区分の見直し

年度の課税所得等の発生状況なども踏まえ、監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」の会社区分の見直しを検討する必要があるかどうか、慎重な判断が必要です。

  • 会社区分③「業績が不安定であり、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社等」

    • 将来の合理的な見積可能期間内(おおむね5年を限度とする)の課税所得の見積額を限度として、当該期間内の一時差異等のスケジューリングに基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断します。
       
  • 会社区分④「重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社等」

    • 具体的には、以下のような会社が会社区分④となります。

      • 期末において重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社

      • 過去(おおむね3年以内)に重要な税務上の欠損金が期限切れとなった会社

      • 当期末において重要な税務上の欠損金の期限切れが見込まれる会社
         
    • 翌期に課税所得の発生が確実に見込まれる場合で、かつその範囲内での一時差異等のスケジューリングに基づいて繰延税金資産を計上できます。

    • 会社区分④ただし書き「重要な税務上の繰越欠損金や過去の経常的な利益水準を大きく上回る将来減算一時差異が、例えば、事業リストラや法令改正等の非経常的な原因により発生し、それを除き課税所得を毎期計上」に該当する場合には、上記会社区分③と同様の取り扱いとなります。

(2)繰延税金資産の回収可能性の判断

繰延税金資産の回収可能性を判断する際には、以下の3点の見積もりが非常に重要となります。

  • 将来の業績予測(収益力に基づく課税所得の十分性)

    • 原則として、取締役会等の承認を受けたものであることが必要とされています。

    • 現状の収益力等を勘案し、その合理性を判断する必要があり、一定の会議体の承認を得ていれば、直ちに合理性が認められるものではありません。

      • 過年度の事業計画と実績を対比する。

      • 当期の実績と来期予算を対比する。

      • ほかの見積もりとの整合性を確かめる。

  • タックス・プランニング

  • 一時差異のスケジューリング(および将来加算一時差異の十分性)


2. 固定資産の減損会計

(1)減損の兆候の例示

減損会計基準等では、以下の事項が減損の兆候として例示されていますが、これらはあくまでも例示であり、会社の状況に応じて適切な判断が行われる必要がある点に留意する必要があります。

  • 営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナス

  • 使用範囲・方法について回収可能価額を著しく低下させる事実の発生

  • 経営環境の著しい悪化

  • 市場価格の著しい下落

(2)決算上の留意事項

減損の兆候の有無の把握、減損損失認識の要否の判断および減損損失の測定に際し、特に留意して実施すべきと考えられる項目は以下のとおりです。

  • 事業計画と実績とを対比する(減損の兆候の漏れ、将来CFの見積もりの合理性を判断する)。

  • 操業状況を把握する。

  • ほかの見積もりとの整合性を確かめる。

  • CFの見積期間や耐用年数の適切性を確認する。

    • 翌年度から原則適用となる資産除去債務会計基準との整合についても十分に留意する必要があると考えられます。

3. 退職給付会計

  • 割引率やその他の基礎率を変更する必要がないか検討する必要があると考えられます。

  • 早期退職制度を実施した場合には、特別退職金の認識時点や損益計算書の区分について、十分な検討を行うことが必要と考えられます。

  • 退職給付制度の変更

    • 確定拠出制度への移行など、制度終了を伴う場合には、制度変更の施行日が翌期であっても、当期決算において損失計上の必要がないか、検討が必要です。

    • 確定給付制度間の移行や制度改訂、または確定拠出制度への一部移行に際して既存の確定給付制度を変更した場合など、過去勤務債務が発生する場合には、制度変更が周知された日から過去勤務債務の償却を行うことが必要です。
       
  • 大量退職や退職給付債務の大幅な減額に該当していないかどうか、確認する必要があると考えられます。

  • 未認識数理計算上の差異の費用処理方法については、変更が合理的と考えられるケースが限定的に解されているため、留意が必要です。


4. 継続企業の前提に関する事項

  • 継続企業の前提に関する「重要な不確実性」が認められるか否かの判断

    •  総合的かつ実質的判断が必要とされています。

    • 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象または状況が存在しても、直ちに「継続企業の前提に関する事項」の注記が必要となる訳ではありません。

    • 当該事象または状況が存在する場合に、当該事象等を解消し、または改善するための経営者の対応などを検討することになります。
       
  • 期末日後に重要な不確実性が認められなくなった場合には、注記は不要とされます。

  • 期末日後に継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象または状況が発生し、継続企業の前提に関する重要な不確実性が発生した場合には、重要な後発事象として注記が必要とされます。

  • 「継続企業の前提に関する事項」の注記の要否にかかわらず、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象または状況が存在している場合には、有価証券報告書の「事業等のリスク」や「財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に関する分析」(MD&A)において、一定の事項を記載する必要があります。

    •  重要事象等が存在する旨およびその具体的な内容(事業等のリスク)

    • 重要事象等に係る経緯・経過、さらには経営者の対応策の具体的な記載(MD&A)

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