旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』― 第5回 辛いときこそ、成長していると思う

森谷 知子
(株)JMC 取締役兼CFO


Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2017年8月1日号に掲載された記事をご紹介します。



「女性のCFOは珍しいですね」という言葉をいただくことがよくあります。確かに日本は男性に偏っているビジネス環境だと実感することが多いです。一方で、私が以前勤めていた米国のIT企業では、財務など間接部門の管理職やエグゼクティブは、女性の割合のほうが少し多いくらいでした。その企業でさえも営業・技術系は男性管理職のほうが多かったことを考えると、私の職務は女性のキャリアに向いている分野と思えました。また、当時、日本よりも多様性を認める企業文化のなか、国や男女問わず、みんなで活発な議論をしていたのを思い起こすと、日本でも今後、企業の意思決定機関メンバーに女性が複数加われば、業績やESG等の面でもきっとプラスに働くのでは、と昨今の流れを期待してみています。

私は1997年に米国モンタナ州でUSCPAを取得し、会計を中心に体系的な勉強を終えた後、支払から決算、税務、また資金管理から為替等のヘッジ、リスク管理全般と、事業会社で広く底辺からの実務経験を積んできました。自分のスキルに自身を持てるようになった時期は、3つのブック(USGAAPもしくはIFRS、日本の会計基準、税務)の組替えを、財務諸表や各取引ですぐイメージできるようになり、法律的内容を会計へ落とし込むことにも慣れてきていました。どちらも社内で行えれば、経営や営業サイドとともに事業判断やその先の提案もすぐにできるようになります。

私自身は日々仕事のやり方や正確性に懐疑新を持ち、その本質を会計原則や税制等と確認しながら理解することで他者に説明できるように努力してきました。このように仕事をする人は実際は少ないようです。資格等を取得せずとも、5年、10年、20年というスパンでみると、これを実践している人とそうでない人では、スキルに大きな開きが出るのは間違いないでしょう。

私が管理職になったばかりの頃は、慣れないこともあり大変でした。360度評価もよくなかったと記憶しています。その後、どんなにタフな状況でも心掛けるようにしたことは、役職に関係なく社員や投資家等のステークホルダーを自分ごとのように対応し、リスペクトすることです。スタッフへはなるべく早く自分の方針や指示を下ろすようにします。急にスタッフに課題を強いればよいものは上がってこないです。また、評価は減点主義でなく加点主義です。これが私含め日本人は海外の人より難しいようです。「インテグリティ(誠実さ)」の大切さをチームメンバーにわかってもらえるよう、私の判断根拠を指示とともに説明するようにもしています。スタッフが辛そうにしているときは、「NO PAIN, NO GAIN」。辛いときは、自分が成長しているサインだよと励ますのは、自分の経験に基づくため。結局は、敵はいつでも自分自身です。管理部門として、主張することができる強い組織をつくるのが目標です。それが会社を守ることにつながりますので。

(「旬刊経理情報」2017年8月1日号より)



森谷知子

森谷 知子(もりや・ともこ)
(株)JMC 取締役兼CFO
明治大学卒業後、サン・マイクロシステムズ㈱などの多国籍企業において主に財務を担当し、グローバルな環境で戦略的なデリバティブによるリスクヘッジや移転価格税制等を扱い、コーポレートファイナンスを広くキャリアとして持つ。現職就任後、2年弱の上場準備期間で東証マザーズにIPOを果たす。米国公認会計士、公認不正検査士。



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