旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』― 第40回 真の自立とは? ~「自分がこの道を選んだ」と胸張って言える自分で~

本林 早苗
株式会社hertyle 代表取締役/株式会社hersell 代表取締役


Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2020年7月1日号に掲載された記事をご紹介します。



私が起業を志したのは20歳の時。世の中は、まさにバブル全盛期でした。私は連日各所で開催される企業主催のフォーラムやイベントの受付のバイトを通じて、経営者の方々と少しずつ接する機会も増えていきました。時には、バイト終わりに食事に誘っていただく中、食事中の企業の方々同士の社内の話も、当時の私にはまったく理解などできるはずもなく。それにも関わらず、私はというと興奮交じりでわくわく胸を躍らせながら聞いていたものです。雇われる働き方ではなく、自分で仕事を作り社会と関わっていきたいと考え始めたのは、この頃からです。

その後、縁があり国内トップ男子プロゴルファーの秘書を務めながら、各界の著名人のVIP対応を行ってきました。その後も起業を目指して必要な知識の獲得や経験を積むためにさまざまな業界の秘書業務を行いました。そうして40歳で起業をしました。

私は起業するまでの間に、結婚、出産、介護を経験しました。その時必ずと言っていい程目の前には見えないハードルが、頭の上には見えない天井がありました。そして私はその度に、その「見えないもの」と戦ってきたように思います。女性はいつの世も多かれ少なかれ妻、母親、娘、嫁といくつもの役を担います。女性はまさに「多様性の生き物」。だからこそ、今回のコロナのような有事が起こったとしても、自身の人生がバラエティに富んだものになるであろう女性は、楽しみを家庭内に見付け、オンラインを楽しみ、親子や夫婦間をより一層深いものに作り上げることが、男性よりも得意だったかもしれませんね。振り返れば、いつも見えないものと戦ってきた私だからこそ、これからは戦うのではなく、認め合う社会を創りたい、そういう世界を作りたいと強く思います。

弊社では、自身の体験から面接から研修、業務、成果物のアウトプットまですべてオンラインで完結する仕組みにしています。地球のどこにいても、どんなバラエティに富んだ女性でも、環境さえあれば働くことができるようになっています。そんな中、私は一緒に働くメンバーの採用基準で1つだけ決めていることがあります。「なぜ仕事をしますか?」の問いに明確に答えられるかどうかです。皆環境や状況が違います。だからその問いに対しての正解はないです。「お金のため」「社会と関わるため」「居場所つくりのため」「友達をつくるため」さまざまな答えが返ってきますが、すべて正解です。「なぜ、働くのか?」の問いに自分の言葉でしっかり答えることで、少なくともその瞬間に自分への責任が生じます。きめの細やかさや器用さなど、男性にはない優れた面が女性には多々あります。だからこそ、自分の言葉で発し、自分の足で歩いてほしいと思うのです。

私は命が絶えるまで仕事をしていたいと思っています。そして命が絶えるときに「ああ、人生に悔いはなし」と幸せな気持ちで終わりたいと思っています。決して起業だけが自立ではなく、常に自問自答を繰り返し、自分のやりたいことを貫くこと、そしてどんな時でも「自分でこの道を選んだ」と胸を張って言えること。「自分にはこの道しかなかった」ではなく「自分はこの道を選んだ」と言えるあなたでいてください。

(「旬刊経理情報」2020年7月1日号より)
(企画・協力 EY新日本有限責任監査法人 EY Entrepreneurial Winning Women)



本林 早苗

本林 早苗(もとばやし・さなえ)
株式会社hertyle 代表取締役/株式会社hersell 代表取締役

20年間さまざまな業界で役員秘書を務めた実績から、2013年には「アシスタント業における女性の雇用創出」をミッションに株式会社herstyleを、2017年には「地方のキャリア女性によるオンラインセールスサービス」を提供する株式会社hersellを設立。自身は事業化プロデューサーとして新規事業の組み立てに日々奮闘し、最近では女性限定のM&Aアドバイザーチームを組成中。



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