モビリティ(海外赴任)コラム:海外赴任におけるDE&I

EY Japanの窓口

EY 税理士法人

世界各国の企業がDE&Iを重要課題として掲げている昨今、海外赴任をサポートする海外人事もその影響を受けているのではないでしょうか。女性赴任者数は昔から比べれば少しずつですが増加しています。また、配偶者の仕事の関係で家族帯同ではなく単身赴任される方も多く、一方で、配偶者が現地で働きたいといった要望もかなり増えてきていると聞きます。今回は、DE&Iという観点から海外赴任を考えてみたいと思います。

女性赴任者の割合は、まだ10%未満の企業がほとんどですが、徐々に増えてきています。それに伴い、赴任者自身が現地で産前産後休暇・育児休暇を取得したいと言っているが、どう対応すべきか、というご相談が増えています。また、日本での男性の育児休業取得促進の影響で、今後は、帯同配偶者が現地で出産する際、もしくは、日本に残留している配偶者が日本で出産する際に、赴任者自身が育休を取得したいという要望も増えてくることが予想されます。産休・育休は、義務や権利であり、現地の労働法も確認の上、認める方向で検討するのが時代の流れではありますが、海外赴任者の業務をその期間だけ誰かに引き継ぐということも容易ではなく、業務をストップさせない、という観点から会社としてどう対応すべきかについて事前に十分に議論をしておくべきであると考えます。

また、日本での共働き世帯は7割近くを占めており、引き続き単身赴任が多い現状となっています。海外ではもともと共働きが一般的ですが、海外赴任の際には家族帯同のケースが多いです。つまり、海外赴任の際には、配偶者はそのキャリアを中断し、帯同することになりますが、外資系企業では帯同する配偶者に対して「配偶者サポート」があることが多くなっています。海外赴任に帯同する間に、次のキャリアに備えて自己啓発をする費用を補助するものや、現地で働けるように就職の支援をするもの、ビザのサポートをすることもあるぐらいです。日系企業ではこのようなサポートをする企業は少なく、また現地での配偶者の就労を禁止している企業もあります。共働きが一般的となった今、配偶者の現地就労やサポートについて、検討する時期が来ているのかもしれません。また、コロナ禍で注目された「リモートワーク」ですが、海外に赴任する配偶者に帯同する社員に現在の業務を海外から継続してもらいたい、という企業からのご相談も増えています。国ごとに税務や労働法の観点から調査をすることが必要となりますが、人材の多様化に加え働き方の多様化も進む中、優秀人材の引き止めの観点からも、このようなケースにどう対応すべきか、議論の余地はあると思われます。

配偶者の定義はどうでしょうか。海外では、海外勤務規程の「配偶者」について、「婚姻関係のある」や「扶養する」といった文言ではない定義がされているケースも多く見受けられます。日本ではまだ婚姻関係のないパートナーや、同性のパートナーを法的に配偶者と認める自治体は限定的ですが、国内の規程を見直す企業も出てきていますので、海外赴任についても誰を帯同できるのか、誰を各種補助の対象とするのか、という点についてDE&Iの観点から議論すべき時も近いと考えます。

時代は明らかに変わってきています。もう赴任者が男性で、家族を帯同するのが決まり事であった時代ではありません。多様化する社会の中で、グローバル化を進める上ではいずれも避けて通れない課題となります。海外拠点も含めた会社全体として、どうしたいのか、どうあるべきなのかじっくりと議論をしたうえで、方針を決め、規程の改定や社内ルールの制定等をして、その場しのぎの対応とならないようしっかりと準備をしておくことをお勧めします。

お問い合わせ先

kumiko.kawai@jp.ey.com 川井 久美子 パートナー

akiko.hayama@jp.ey.com 羽山 明子 ディレクター

※所属・役職は記事公開当時のものです

メールで受け取る

メールマガジンで最新情報をご覧ください。

登録する