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IFRS適用会社向け2018年3月期決算の留意事項


情報センサー2018年3月号 IFRS実務講座


IFRSデスク 公認会計士 竹下 泰俊

当法人入所後、主として医薬品、化学品などの製造業、サービス業の会計監査に携わる。2017年よりIFRSデスクにて、自動車部品製造業などのIFRS導入支援業務、研修業務などに携わっている。


Ⅰ はじめに


IFRSに準拠して財務諸表を作成している企業は、新たに公表される基準書や解釈指針書について、継続的かつ適時に対応していくことが求められます。IFRSの改訂は、IFRSの基本原則に関する重要な改訂から年次改善プロセスに含まれるような比較的軽微な改訂まで多岐にわたりますが、財務諸表作成者はこれらの動向を常に把握しておく必要があります。
本稿では、2018年3月期から強制適用される基準の改訂内容について解説します。
なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りします。

Ⅱ 2018年3月期から強制適用される基準の改訂内容


1. 「開示イニシアティブ」(IAS第7号の改訂)

16年1月29日に公表された「開示イニシアティブ(IAS第7号の改訂)」が17年1月1日以降に開始する事業年度から適用されます。3月決算企業の場合18年3月期から本改訂が適用されます。
本改訂はIASBの開示イニシアティブの一環であり、財務活動から生じた負債の変動を財務諸表利用者が評価できるような開示が求められます。IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」では、財務活動を、企業の拠出資本及び借入の規模と構成に変動をもたらす活動と定義しています。例えば、借入の実行や返済、新株の発行といった活動は「財務活動」に該当しますが、新株の発行による資本の増加は負債の変動ではないため「財務活動から生じた負債」に該当せず、この規定の開示対象にはなりません。
また、負債の変動には、キャッシュ・フローを伴う変動だけでなくキャッシュ・フローを伴わない変動も含まれます。
具体的には、企業は次の財務活動から生じた負債の変動を開示することが要求されます。


  • 財務キャッシュ・フローによる変動
  • 子会社又は他の事業に対する支配の獲得又は喪失により生じた変動
  • 外国為替レートの変動の影響
  • 公正価値の変動
  • その他の変動

また、金融資産からのキャッシュ・フローが財務活動によるキャッシュ・フローに含まれる場合の金融資産(例えば、財務活動から生じた負債をヘッジする資産)の変動も開示対象となります。
<開示例>は、IAS第7号に掲載されている例です。なお、本改訂を初めて適用する際には、前期以前に係る比較情報に関する開示は求められません。


開示例 財務活動に係る負債の調整表

2. 「未実現損失に係る繰延税金資産の認識」(IAS第12号の改訂)

16年1月29日に公表された「未実現損失に関する繰延税金資産の認識(IAS第12号の改訂)」が17年1月1日以降に開始する事業年度から適用されます。3月決算企業の場合、18年3月期から本改訂が適用されます。改訂内容は以下になります。

(1) 負債性金融商品に係る未実現損失に関する税効果

元本が満期に支払われる固定金利の負債性金融商品の帳簿価額の下落は、この負債性金融商品が公正価値で測定され、その税務基準額が取得原価のままである場合には、将来減算一時差異を生じさせる旨が明確化されました。

(2) 将来の課税所得の見積りと資産の帳簿価額

可能性の高い将来の課税所得の見積りには、企業の資産をその帳簿価額を超過して回収することが含まれる場合があることが明確化されました。資産の帳簿価額は、可能性の高い将来の課税所得の見積りを制限せず、課税所得の見積りには課税対象となる経済的便益の可能性の高い流入を含めるため、課税対象となる経済的便益の可能性の高い流入は、資産の帳簿価額を上回る場合があります。例えば、企業が固定金利の負債性金融商品を保有して契約上のキャッシュ・フローを回収すると見込んでいる場合が該当します。

(3) 将来の課税所得の見積りにおける将来減算一時差異の解消の影響

将来の期間に十分な課税所得を稼得するかどうかを判断する際には、将来減算一時差異を、当該将来減算一時差異の解消から生じる税務上の損金算入を除外した将来の課税所得と比較することが明確化されました。

(4) 繰延税金資産の認識(個別評価か合算評価か)

将来減算一時差異を活用できる課税所得が得られるかどうかを評価する際に、当該将来減算一時差異の解消時に損金算入できる課税所得の源泉を税法が制限しているのかどうかを考慮する必要があります。税法が、異なる源泉からの損金算入を区別しないで、企業ベースで損金算入を益金と相殺する場合には、同一の税務当局及び同一の納税主体に係る将来減算一時差異の全てについて合算した評価を行います。一方で、税法が特定の種類の損金を特定の種類の益金とだけ相殺する場合(例えば、税法がキャピタル・ロスの相殺をキャピタル・ゲインに限定している場合)には、将来減算一時差異の評価を同じ種類の他の将来減算一時差異とは合算して行いますが、それ以外の将来減算一時差異とは別個に行います。
本改訂は遡及(そきゅう)適用する必要があります。ただし、改訂を初めて適用する際には、最も古い比較期間の期首時点の資本に対する影響額は、期首時点の剰余金とその他の資本の構成要素に区分せずに、期首時点の剰余金(又は適切なその他の資本の構成要素)にまとめて認識することが認められます。

3. IFRS第12号「他の企業への関与の開示」

IFRS第12号の開示規定は、B10項からB16項の開示規定(子会社、ジョイント・ベンチャー及び関連会社に関する要約財務情報)を除き、子会社、ジョイント・ベンチャー又は関連会社への企業の関与(あるいはジョイント・ベンチャー又は関連会社への企業の関与のうちの一部)のうち、売却目的保有に分類されたもの(又は売却目的保有に分類された処分グループに含まれるもの)にも適用されることが明確化されました。


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