EYは最新の EY M&A Firepower report を発表しました。本レポートによると、2019年のライフサイエンス企業の合併・買収(M&A)は、製薬会社による買収の活発化に後押しされ、2014年の記録を更新し、過去最高の総額3570億米ドル(11月30日時点)に到達しました。一方で、医療機器およびバイオテック企業は静観を続け、すべてのライフサイエンス企業が等しくファイヤーパワーを利用したわけではないことが示されました。
本レポートでは、ライフサイエンス企業は2019年、深刻な成長ギャップ(企業の収益成長と業界全体の売上拡大とのギャップ)およびマーケットのボラティリティによって、4件の大型合併(合計で2310億米ドルに相当)を含む、大きなM&Aの機会を生み出したと伝えています。特定の疾患領域への注力によるポートフォリオの最適化、短期的な収益増加の模索、イノベーションにアクセスするための新たなディールストラクチャーにより、2019年のM&A活動をけん引した推進力が、2020年も引き続きディールを活発に推し進めていくと見られます。加えて、とりわけ医療機器企業や大手バイオテック企業にとって、M&A案件に向けたファイヤーパワーは依然として潤沢な状況が続いています。
本レポートが報告している主要な調査結果は次の通りです。
- ファイヤーパワーの活用は企業によって異なる:ファイヤーパワーの35%を使用した大手製薬会社が、2019年のM&A活動の過去最高更新の要因となった。大手バイオテック企業および医療機器企業はターゲット企業の高額な評価額に意欲を削がれ、それぞれ10%、16%のファイヤーパワーの使用にとどまった。マーケットでは1.4兆米ドルのファイヤーパワーの余力があり、2020年も引き続き豊富な機会が存在する。
- 買収サイドと売却サイドの企業評価額のギャップが過去最高となり、取引件数は減少:M&A取引数は前年比で14%減少、過去5年間の平均値を29%下回った。資本市場が活況であることから、買収側企業の想定額と売却側の希望額のギャップが増大した。2019年9月に実施されたEYの調査では、回答した企業の69%が、評価額におけるこのギャップは2018年以降で最も高い水準にあると答えている。
- 特定疾患領域への集中戦略が引き続きM&Aを推進:23社のバイオ製薬企業について、収益を基に特定の疾患領域に注力しているかどうかを判断し、分類した。分析を行ったこれらの23社のうち、特定の治療分野により注力した10社が、5つの指標(収益成長、投資資本リターン、EBITDAマージン、平均評価額)のうち4つで、その他の企業を上回った。特定の治療分野への注力が低い企業は、株主総利回りで、より注力している企業を上回った。
本レポートは、企業は2019年も引き続き製品中心のイノベーションを重視していたと述べています。一方で、将来の価値をより高めていく可能性のあるデータテクノロジーには、十分な投資を行っていないことも報告しています。
EY Global Health Sciences and Wellness Industryリーダーのパメラ・スペンスは次のように述べています。
「企業が成功するために必要なのは、知的財産権を所有だけではなく、重要なデータにアクセスし、AIを活用して分析を行い、そこから洞察を引き出すことも不可欠です。こうした洞察を活用することができれば、ヘルスケア体験、臨床上の判断、そしてアウトカムを向上させることができます。」