実験室で錠剤を検査する品質管理担当者
ケーススタディ
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Orifarmが1つの買収によって成長のための処方箋を準備できたのはなぜか

創業者率いるデンマークの製薬企業Orifarmがたどる変⾰への道を、EYの組織横断的チームは支援しています。

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⼤型買収に迅速に備え、事業統合を成功に導くには

これまでオーガニックに成⻑してきたOrifarmは、⼀夜にして⾶躍的な規模拡⼤を遂げました。

Orifarmは1994年、BirgitteとHans Bøgh-Sørensen夫妻により設⽴されたデンマークの医薬品企業で、2つの主要なビジネスチャネルを通じて順調に発展してきました。Orifarm Healthcareはジェネリック医薬品を製造・販売し、Orifarm Tradeは海外の処方箋医薬品(ブランド医薬品)の輸⼊を担ってきました。

Orifarmはこれまでオーガニックに成⻑してきましたが、武⽥薬品工業株式会社によるShire社の買収に伴う大幅な事業ポートフォリオ売却のニュースを大きな成長機会と捉えました。この買収案件は、Orifarmにとって、自社のジェネリック医薬品分野における地位を⾼めるだけでなく、市販薬(OTC医薬品)(デンマーク国民に馴染みの深い、同国企業創薬のPamolとKodimagnylの2つのブランドを含む)の⽣産強化にもつながるものでした。

Orifarmの経営陣は、巨大な買収案件というかつて経験したことのないビジネス上の課題に対峙することとなります。ポーランドとデンマークのホーブローにある⼯場2カ所や600⼈の新しい従業員などを統合するなかで、統合後の新しいOrifarmグループ全体として、統合されたプロセスを同時進行で実行することが不可欠でした。また、買収規模が巨⼤とはいえ、スピードも重要でした。

「買収は複雑を極めており、変⾰は広範囲に及ぶため、社内だけでは必要な能⼒を備えた⼈材をすべて賄えるわけではないことに、私たちは気付きました。そこでEYに相談してみたところ、翌⽇早速、(本社所在の)オーデンセを訪ね、適切な質問を尋ねるところから始めてくれました」と、Orifarmの最⾼企業開発責任者(Chief Corporate Development Officer)、Ulrik Markussen⽒は回想します。 

では、Orifarmの大望の実現に向けて、EYチームはどのような能⼒や経験を提供したのでしょうか。

無菌医薬品製造研究室の様子
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エンドツーエンド同時並行型プロセスが成功に導く

事業統合プロセスにおいて、部門をまたいだデューデリジェンスが有用な情報をもたらすと理解することが大変重要です。

「事業統合プロセスにおいて、デューデリジェンスが有用な情報をもたらすということを念頭に置くことが、この種の買収におけるリーディングプラクティスです」と、EY Godkendt Revisionspartnerselskab(デンマーク)のEYパルテノンパートナー、Mads Steensenは述べています。事業買収では、事業統合計画を検討する前にデューデリジェンスを始める、といった順序だった管理は効果的でありません。全プロセスを一元的に検討することが重要です。

Steensenは続けます。「このように事業統合において原理原則とされる部分を最初に検討することを『エンドツーエンドのアプローチ』と呼んでいます。事業譲渡完了⽇に会社の組織運営がどのようにあるべきかについて、焦点を当てる必要があります」。

同じくEY Godkendt RevisionspartnerselskabのEYパルテノンアソシエイトパートナー、Anders Tuxenは、買収前の段階で事業統合計画策定に注力して取り組んでいない場合、包括的だが簡易な統合を実施せざるを得なくなると指摘します。事業統合でのこうした予期せぬ事態は、⻑期間にわたり組織の重荷になりかねません。

事業譲渡の「Day 1」に向けた準備は、業務運営、規制、税務、財務、⼈事など、企業の全機能を網羅したデューデリジェンスから始まります。EYは、主要な作業⼯程それぞれを支援するために、全組織のうち10地域から、本プロジェクトにコンサルタントを招集しました。セクターでの経験の深さ、組織を超えて統合されたチーム、カーブアウトにおける成功経験といったすべてが、「Day 1」がついに到来したときに、予期せぬ事態が⽣じないようにするために欠かせないものでした。

「事業譲渡の当⽇には、予期せぬ出来事は何も起こりませんでした。それをあっけない結末と思う⼈さえいるでしょうが、私たちはこの⽇のために数カ⽉にわたり準備していました。その結果として、すべてがあるべき場所に収まりました」とMarkussen⽒は述べています。

薬局でコンピュータータブレットを操作する薬剤師
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「Day 1」を超えて:企業変革

これほどの規模の事業買収には、成⻑だけに留まらず、⼤きな変⾰が伴います。

武⽥薬品からのカーブアウトは、既存のOrifarmの企業構造とプロセスでは吸収が困難であるほどの規模でした。買収額は46億デンマーク・クローネに上り、2020年のデンマーク最⼤の買収案件の1つになりました。Orifarmは⼀夜にしてスカンジナビア最⼤のOTC医薬品メーカーになるとともに、デンマーク最⼤の医薬品サプライヤー(薬局への卸販売量ベース)になりました。

この状況は、Orifarmに急激な学習曲線をもたらしたとMarkussen⽒は述べています。「私たちにとって、多くが初めての経験でした。例えば、要件よりプロセスの観点を持って考えることや、デューデリジェンスと交渉、事業統合をどのように結び付けるか、などです。私たちは、この間、実に多くのことを学びました。組織としても成長することができ、今ではOrifarmをさらに未来に向かって推し進める準備が整っています」

Orifarmのためのプロセスと戦略的フレームワークの構築は、事業買収の成功にとどまらず、同社をさらなる事業拡⼤と成⻑へ導く軌道に乗せることができました。Orifarmが成⻑し、グローバルなステージに立つようになったのは、こうしたビジネス変⾰のプロセスによるものと言えます。

本稿にある第三者の⾒解は、必ずしもEYまたはEYのメンバーファームの⾒解ではありません。また、これらの⾒解は、表明された時点の⽂脈にて解釈ください。

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