13 分 2024年1月10日
夕暮れ時のドラマチックな空とバルセロナの街並みを背景に、環境に配慮したオフィスビルの屋上に立つ不動産業者とカップル。

ネットゼロに向けてトランジションファイナンスを加速させるには

執筆者 Gill Lofts

EY Global Financial Services Sustainable Finance Leader

Passionate about creating a legacy in the financial services industry. Proud mother of two daughters.

13 分 2024年1月10日

複雑なエコシステムにおいて、トランジションファイナンスを迅速かつ⼤規模に実施するには、⾦融機関は継続的にさまざまな試みに取り組む必要があります。

要点

  • トランジションファイナンスの定義が諸説あり確定していないことが、金融機関における⾼排出セクター向けの移⾏⽀援の妨げになっている。
  • 金融機関は、事業モデルに適切なメカニズムとプロセスを組み込み、改善の文化を根付かせる必要がある。
  • 成功するには、⻑年にわたり継続的にさまざまな試みに取り組むことが求められる。

パリ協定のグローバルストックテイクとは、世界全体の温室効果ガス排出削減の進捗状況を評価する仕組みであり、COP28において初めての決定が採択されました。そして、地球の気温上昇を1.5°C以内に抑制するには多⼤な努⼒が必要であることが明らかになっています。

2022年の世界のエネルギー移行への投資額は1兆1,000億米ドルに上ると推計されていますが1 、ネットゼロを順調に進めるには、その3倍を超える金額(2050年まで毎年3兆5,000億~4兆米ドル)が必要です。

さらなる投資の確保が急務であることを考慮すると、トランジションファイナンス(排出量の多い企業や産業の環境への負荷を軽減するための資金を提供するプロセス)の世界的な進展を加速させる上で、金融機関が極めて重要な役割を果たすことは明らかです。

グリーンセクターだけでなく、移⾏技術や活動にも数兆ドル規模の資⾦投⼊が必要となるでしょう。しかし、移⾏技術や活動の定義は必ずしも明確ではなく、関連産業の多様さ、イノベーションの進化、規制の変更、⽤語や定義の不統⼀などがその理由となっています。

これを受け、⾦融機関には、単に環境⽬標を設定したり、変化に向けた⾏動を宣⾔することにとどまらず、より広範囲にわたる行動が求められています。「机上の論理での脱炭素化」にしないためには、明確で測定可能かつ検証可能な⽬標に沿った、具体的で現実的な改善を進める必要があります。

世界は地球の気温上昇を1.5°Cに抑制しようと苦戦している。ネットゼロを順調に進めるために2050年まで毎年必要な追加投資額は

3.5兆 - 4兆米ドル

に上る。

(Chapter breaker)
1

第1章

トランジションファイナンス・フレームワークの現状

ネットゼロ資金を調達拡大するためのフレームワークと課題の概要。

金融機関は、排出量の多いセクター、企業、国の移行を積極的に支援しようと努めていますが、大きな課題に直面しています。

この状況をさらに深刻にしているのが、トランジションファイナンス自体や適格な商品、活動、セクターの定義・特徴を決定するにあたって、アプローチ方法がまだ統一されていないことです。例えば、サステナブルな経済活動の分類体系を定める欧州連合のタクソノミー規則では、依然として、移行のための活動のタクソノミーが明確に定義されていません。同様に、グリーンボンドの具体的な基準(気候ボンド基準、CBS)を策定する英国の国際NGOである気候債券イニシアチブ(CBI)も、トランジションボンドに関しては、それほど正確な基準を公表していません。

金融機関は、政策が変化しテクノロジーが進化する状況に対処する上で、種々なガイダンスを参考にできますが、これらのツールの範囲や用途はそれぞれ異なります。トランジションファイナンスのフレームワークは、EUのサステナブル・ファイナンスに関する国際的な連携・協調を図るプラットフォーム(IPSF)の報告書が示す3つのレベルに従って大別できます。2

トランジションファイナンスのフレームワーク

     
活動レベル 事業体レベル ポートフォリオレベル

タクソノミー:経済活動を「移行」活動として評価し、分類します。気候への影響の程度の違いを反映するため、多様な分類カテゴリーを設けています。

例:EU、南アフリカ、ASEAN、インドネシア、英国タクソノミー、カナダタクソノミー、オーストラリアタクソノミー
 

移行計画ガイドライン:組織の気候移行計画、すなわち脱炭素化を実現する手順を定義するものです。これらは、すべての事業体と国が対象となる移行計画(TCFDなど)や、特定の金融セクターが関与する計画(GFANZなど)など、多岐にわたります。

ポートフォリオレベル:金融機関のポートフォリオがセクターごとの経路やシナリオに合致しているかどうかを評価するツール。

例:GFANZ、PACTA

発行体向けフレームワーク: 資本市場の参加者に対し、移行活動資金の調達の際の要件または推奨事項について指針を提供します。
レポーティング: 事業体が気候移行計画とその気候への影響を公表する際の開示要件。
セクターごとの指針:セクターが脱炭素化するための指針と基準。これらは各セクターの気候科学に基づいて作成され、事業体が自らの準拠と進捗の状況を評価するために使用することが可能です。
 
 
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    表は、トランジションファイナンスのフレームワークの種類を、活動レベル、事業体レベル、ポートフォリオレベルで分類したものです。

    • 活動レベルのタクソノミーは、移行セクターの定義を目的としていますが、国ごとの差異や対象範囲の違いがあるため、実施条件が異なり、混乱が生じています。
    • 事業体レベルのフレームワークは、企業の計画、株式発行、報告にトランジションファイナンスを組み込むことを目的としています。
    • ポートフォリオレベルのツールの目的は、金融機関が1.5°Cパスウェイに沿って事業を行えるよう支援することですが、移行活動よりもグリーンセクターに重点が置かれることもあります。

    移⾏のフレームワークの格差と不⼀致を是正する取り組みが進⾏してはいるものの、現時点では、上記のような不備によって「机上の論理での脱炭素化」とグリーンウォッシング(⾃社が提供する商品・サービスのサステナビリティに関するメリットや戦略⽬標について、企業が不正確な、または誤解を招く主張をすること)のリスクが⾼まっていることも事実です。

(Chapter breaker)
2

第2章

トランジションファイナンスを進めるにあたっての課題

トランジションファイナンスの拡大に取り組む金融機関に立ちはだかる内外の障害。

金融機関はトランジションファイナンスに関し、新規顧客と既存顧客双方の移行プロセスを支援するアプローチの開発に取り組んでいます。しかし、⾦融機関組織が抱える内的障害として以下の問題があります。 

  • 移行の業務運営への組み込み:移行を意思決定とインセンティブのフレームワークに組み込むには、金融機関は複数の手段(資本配分、資金移転の価格設定、排出予算、リスク選好度の調整など)を用いる必要があり、気候を考慮して修正した視点から経済収益性を捉えることが求められます。しかし、金融機関が移行経路の異なる複数のセクターに対してエクスポージャーを有することを考えると、これは複雑なプロセスです。社内のインセンティブ体系を変更し、経営陣と各事業部門の責任者の支持を得る必要があるでしょう。
  • 顧客とのエンゲージメント:金融機関は、顧客の移行計画を評価し、必要な場合には顧客に最適な支援を提供できるように、顧客とのエンゲージメントを拡充する必要があります。これには多大な投資と労力が求められるばかりか、支援を提供しても移行できない、または移行する意欲がない顧客に対して難しい決断を下さなければならないかもしれません。
  • 信頼性の評価:ポートフォリオが1.5°Cパスウェイに沿っているかどうかを見直すことは、金融機関のネットゼロに向けたプロセスの鍵となる要素です。これは、特に企業の整合性や段階的に撤退する必要のある企業・資産を慎重に評価する際には困難な作業です。多くの企業が開示する移行計画は透明性も不十分で詳細ではないことから、状況はさらに困難になっています。
  • 適切な指標の検討:ポートフォリオの脱炭素化を達成させる上で、現在の指標は投資先の排出量の削減を焦点としていますが、これでは金融機関が高排出企業や活動の移行のために資金を提供するインセンティブとはならない可能性があります。一方、現在策定中の金融機関向けネットゼロ(FINZ)基準3に関する科学的根拠に基づく目標イニシアチブ(SBTi)の最新ガイダンスでは、ポートフォリオの適合性が主要指標だと考えられており、状況の改善を後押しするものとなっています。 

また、金融機関は、資本と投資の移行への取り組みにおいて外部の課題にも多数直面しています。このような課題の影響で、多くの場合、トランジションファイナンスのコストが上昇し、投資収益率が低下します。主要な外部の課題には以下があります。 

  • 政治の惰性:世界の政策立案者は、1.5°C目標達成に要する水準のトランジションファイナンス実行に必要な推進力を生み出していません。これは、各国の排出量目標に統一性がなく、一部のセクターにおける技術開発加速への投資が不足しており、世界的な炭素価格統合メカニズムがいまだ形成されていないことからも明らかです。
  • フレームワークの限界:規則や基準に一貫性のないことが、気候リスクのミスプライス(適正価格との隔たり)を助⻑し、トランジションファイナンスの需要と供給のバランスをとることを困難にしています。さらに、移行計画とタクソノミー、カーボンロックインを防ぐメカニズム、他のサステナビリティ目標との整合性、中小企業(SME)や発展途上国で事業を行う企業に対する相応の待遇との関係を明確に説明しているフレームワークは、現時点ではほとんど存在しません。4
  • 投資可能な案件のパイプライン:未成熟なテクノロジーと政策は投資判断とリターンに影響を与えます。また、これらは⾦融機関のリスクアペタイトにおける投資機会にも影響を及ぼします。例えば、初期段階の低炭素技術の多くには、⻑期的に資金が必要であり、またリターン予測に不確実性が伴うため、資本がもっとも切実に必要とされている分野への資⾦提供が抑制されかねません。
  • 地域的な歪み:開発途上国での資金調達は過大な資本コストのために困難になることが多くあります。成熟市場では資金調達が比較的容易な風力や太陽光などのグリーンテクノロジーであっても例外ではありません。政治的なリスクが、現地の⾦融機能の不⾜と相まって投資意欲を減退させ、化⽯燃料への依存が続く恐れがあります。

 

 

  • 中小企業にスポットライトを当てる

    世界全体の企業数において中小企業が占める割合は高く5 、大企業のスコープ3排出量の要因となっています。6 2050年までに世界のサプライチェーンがネットゼロに移行するために必要な50兆ドル7 の資金を金融機関が調達するには、中⼩企業がトランジションファイナンスに取り組むにあたって直面する課題を克服しなければなりません。脱炭素化の初期費用の高さは、多くの場合、中小企業にとって大きな障壁となります。これ以外には、適切なデータやスキルの欠如、テクノロジーの利用が難しいこと、顧客からの需要不足のためネットゼロ目標8が十分に活用されていないことなどが挙げられます。

    また、中小企業の事業分野の細分化と専門化が進んでいることも、ポートフォリオのフレームワークとの適合性を確保することが困難な一因です。さらに、中小企業に対する現在のリスクプライシングと必要な変革の規模を踏まえると、政府や政策立案者から適切な支援を受けずに、金融機関が移行に要する資金を供給できると考えるのは誤りです。

    それにもかかわらず、中小企業の移行に伴う主要な課題の一部への対処において金融機関は重要な役割を担っています。これに関し、金融機関は以下の点を考慮する必要があります。

    • 中小企業とのエンゲージメントを強化し、脱炭素化の機会、リスク、手段について理解するための知識とツールを提供する。
    • 移行計画を実行すると、中小企業の財務業績の短期的変動が増大する可能性があるが、同時に長期的な存続能力が高まる可能性もある。これを認識した上で、金利、期限、返済の条件が柔軟な、個別化された金融商品を提供する。
    • 中小企業が現実的な移行計画を策定し、利用可能な金利水準で移行資金を調達できるようにするため、国の政策の変更を提言する。なすべきことの規模を考えると、関係者の力を結集して取り組む必要がある。各国政府は、移行を効果的に促す政策を導入するべきである。
  • ケーススタディ:中小企業のトランジションファイナンスを進める

    中小企業向けの融資およびアセットファイナンス(AF)において大きな存在感を持つ、ある大手銀行は、積極的な気候変動目標を掲げており、自社の中小企業戦略とAF戦略の見直しを検討していました。この銀行は、トランジションテクノロジーの多様さと急速な進化、成熟度の違い、関連市場の需要、資金供給などの課題に直面していました。また、社内では、適切な資産に関する知識と経験の蓄積、提供商品の明確化、および優先順位、価格設定、リスクに関する視点を軸とするフロントオフィスとミドルオフィスの機能の連携に取り組んでいました。

    これらの課題に対処するため、同行では部門横断的なリーダーシップチームの主導により、市場環境、特定のトランジションテクノロジー、社内のエンドツーエンドアプローチの見直しを実施することになりました。そのためには、トランジションテクノロジー、その成熟度とリスク、市場の需給を深く理解する必要がありました。

    次に、エンドツーエンドの戦略とプロセスを詳細に見直し、不備を特定し是正措置を決定しました。この手順には以下が含まれます。

    • フロントオフィスとミドルオフィスの間で、リスクと価格設定に関する社内の見解を一致させる
    • トランジション資産とトランジションテクノロジー、需要と供給、競争力のあるポジショニング、得た知見を理解するために、中核セグメントをホライズン・スキャニングする(将来大きなインパクトをもたらす可能性のある変化の兆候をいち早く捉えるために、現状を調査・分析して将来を展望する)
    • 社内外の考慮事項に基づき優先順位を決定する
    • 厳選された資産とテクノロジーを深く掘り下げ、リスクと機会、生産と政策の状況を把握する

    総体的な結果として、中小企業のトランジションファイナンスの進行を加速するために必要な知識、プロセス、経営情報、意思決定ツールを経営陣に提供することが可能になりました。

    この取り組みは今も続いています。こうした取り組みを通じて、数々のステークホルダーが、定義が明確で即時対応が必要な行動を軸に連携できるようになり、市場での活動とともに、提供商品拡充に向けた一連の中長期的な活動を加速させました。この戦略では、市場と銀行のプロセスにおける成熟度の差に応じたアプローチを幅広く組み合わせています。これにより、移行計画に沿ってリスクとリターンに関する意思決定のバランスを取ることのできる多様なアプローチが特定されました。

(Chapter breaker)
3

第3章

トランジションファイナンスの流れを加速させる

トランジションファイナンスのための能力構築:社内外へのアクションをより活発に。

金融機関が複雑なトランジションファイナンスを順調に進展させ、それに伴う機会を最大化するには、適切なメカニズムとプロセスを事業モデルおよび事業活動に組み込む必要があります。

そのためには、常に向上を求める文化を根付かせるなど、⻑年にわたり継続的にさまざまな試みに取り組むことが必要です。企業の成熟度は一様ではないため、ベストプラクティスは、特に地域によって異なるでしょう。現時点では、ネットゼロを目指す目標の設定後は、次の行動に注力するべきです。

  • 実体経済における移行を目指す: 現実的な脱炭素化に重点を置く目標と指標を設定し、それらに照らして進捗状況をモニタリングすることで、投資撤退のリスクを最小限に抑え、ポートフォリオの脱炭素化を促します。
  • 適切なインセンティブを設定する:資本配分やリスク選好度の調整などの手段を社内で活用し、顧客に対応する職員や意思決定者に適切なインセンティブを与え、ネットゼロへの移行実現を後押しします。
  • 専門性の向上:専門分野の人材の採用と既存職員の育成は、トランジションファイナンスに関する能力の構築だけではなく、新たなテクノロジーや政策環境の進化に対する理解の向上にもつながります。
  • 意思決定のためのデータの改善:データの品質と可用性に関する問題が継続する場合、それを解消するには、適切な投資を要するでしょう。セクター、顧客、活動の各レベルにおけるデータ品質向上を目的とする、明確なロードマップを備えたデータ戦略が鍵となります。また、自社の進捗状況を追跡し、投融資の意思決定のための情報を整備するために、社内プロセスへの投資も必要になります。
  • 革新的な新商品:業界最高水準のガイダンスに基づくトランジションファイナンスのフレームワークを社内で構築し、トランジション関連のファンドや債券などの拡充された商品を確実に管理することで、金融機関はグリーンウォッシングのリスクを最小限に抑えるとともに、移⾏資⾦の供給も可能になります。

政府が適切な政策を実施することにより、トランジションテクノロジーを大幅に推進することも可能です。米国のインフレ抑制法(IRA)はその代表例です。同法により、グリーンテクノロジーとクリーンエネルギーのプロジェクトに対して最大3,790億米ドルの政府資金を投入することが認められました。一方、英国政府は、CO2回収・利用・貯留(CCUS)技術の早期開発のために今後20年間にわたり200億ポンドの資金を投じるとともに、民間部門と協力して新たなビジネスモデルやカーボンプライシングメカニズムを開発する計画です。

また、各国の政府や規制当局が、民間セクターと協議しつつ、セクターごとの道筋を明確にし、タクソノミーの対象範囲と統一性を改善することで、トランジションファイナンスを加速させることも可能でしょう。EYでは今後2年〜3年の間、以下の主要なフレームワークの改善点に優先的に取り組むべきだと考えています。

  • 業界基準および自主基準とフレームワークの進化:金融機関が取り組むべき対象には、SBTiのFINZ基準とグラスゴー金融同盟(GFANZ)のガイダンスが含まれるでしょう。これにより、ポートフォリオの適合性と関連する移行基準および指標をより明確に把握することが可能になります。
  • 比較可能な分類と対象範囲: 異なるタクソノミー間で経済活動をより一貫性のある形で分類できれば、特に複数の地域にわたり事業を展開するグローバル金融機関にとって有意義でしょう。例えば、カナダ・サステナブル・ファイナンス行動評議会(SFAC)9 とオーストラリア・サステナブル・ファイナンス・インスティテュート(AFSI)は、移行活動を分類するための独自のロードマップを公開しています。
  • 開示の相互運用性の向上: 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)や欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)などの主要な開示基準間の相互運用性が向上すれば、例えば、複数の解釈に対応する必要が低減し、成長を促す形で指標とKPIに沿うことが容易になるなど、金融機関がコンプライアンスのための作業量を抑制しやすくなります。
  • 移行計画のガイダンス: 質の高い移行計画の開示義務化に向けて、国・地域を超えて協調して取り組む必要があります。極めて大きな一歩となるのが、英国の移行計画タスクフォース(TPT)です。TPTは自然や公正な移行などの関連する考慮事項を踏まえて、移行計画に対する戦略的で均衡のとれたアプローチの絶対的基準となるフレームワークを公表しています。 
  • 協働の強化:金融機関、貿易機関、政策立案者、規制当局の協働は、特に共通基準の設定、パラメータについての合意形成、国境を越えた相互運用性の向上に向けて、トランジションファイナンスの機運を高める上で極めて重要です。
  • グローバルなタクソノミー:移行に特化した、標準となるグローバルなタクソノミーがあれば理想的です。各国の経済状況の違いを含め、無数の要因があるために、このようなタクソノミーの策定は困難を極めるでしょう。今後数年間は、移行に関する開示、業界基準および自主基準とフレームワーク、相互運用を可能にするメカニズムに注力することが、より現実的だと考えられます。

成功は、強力な政治的リーダーシップと政策、国・地域を越えて一貫性のある定義と規制、支援となる業界のフレームワーク、金融機関自体の能力と投資など、さまざまな要因にかかっています。したがって、金融機関は自らの力が及ぶ限り、これらの要因を最適化しなければなりません。それには、トランジションファイナンスを適切な構造とインセンティブを通じて実行し、顧客との関係を深め、業界のフレームワーク、方針、慣行の改善に向けて同業者、規制当局、その他の利害関係者と協働することが必要です。

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    1. Energy Transition Investment Trends 2023, BloombergNEF, January 2023
    2. International Platform on Sustainable Finance transition finance report, November 2022
    3. The SBTi Financial Institutions Net-Zero Standard Consultation Draft, June 2023
    4. OECD Guidance on Transition Finance: Ensuring Credibility of Corporate Climate Transition Plans, 2. What is transition finance?
    5. SME Finance, The World Bank
    6. Survey: small businesses face recurring barriers to carbon reduction, SME Climate Hub, February 2022
    7. CISL report reveals how banks and corporations can better support SMEs on the path to net zero, SME Climate Hub, January 2023
    8. SMEs critical to cutting UK carbon emissions but overlooked in government’s net-zero plans, Sage, November 2022
    9. Understanding Canada’s proposed climate finance taxonomy, Investment Executive, April 2023

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サマリー

炭素排出量の削減および地球温暖化の抑制のため、世界的にトランジションファイナンスへの投資を早急に拡大する必要があります。金融機関は、トランジションファイナンスを世界的に進展させ加速させる上で、極めて重要な役割を担うことができます。しかし、「机上の論理での脱炭素化」に取り組むのではなく、確実に、具体的で現実的な成果を達成しなければなりません。

この記事について

執筆者 Gill Lofts

EY Global Financial Services Sustainable Finance Leader

Passionate about creating a legacy in the financial services industry. Proud mother of two daughters.