EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2017年12月、欧州連合司法裁判所(以下、「CJEU」)は、移転価格の下方調整及びそれに伴う関税還付可能性に関する問題を扱った浜松ホトニクス訴訟1の判決において、関連者間で支払われた輸入申告時の取引価格で遡及的に一括調整の対象となるものは関税評価上の取引価格を構成することはできないと結論付け、関税の還付を拒否し、ヨーロッパを中心とする世界中の通関専門家を驚かせました。
2022年5月、浜松ホトニクスによる関税還付の申請を否認したミュンヘンの財政裁判所の判決2及びドイツ連邦財政裁判所への訴訟のエスカレーションから約5年の時を経て、ミュンヘン連邦財政裁判所で口頭審理が行われました。
最新の公聴会に関するいくつかの洞察、予想される判決結果及びその他の未解決のケースへの影響は以下のとおりです。
※この記事は、口頭審理後、評決が出される前に作成されたものです。
浜松ホトニクス訴訟は、移転価格調整金が個別の輸入取引のレベルまで配賦されていない場合における関税還付の申請に係る事例となるため、すべての下方調整による関税還付について、同様の判決がなされることを示すものではない、という点に注意が必要です。また、欧州の各地域の裁判所において還付に関する訴訟が係属中であり、還付に関する法的権利は引き続き保護されるものと思われます。したがって、価格の下方調整による関税還付の可能性がある輸入企業は、浜松ホトニクス訴訟の判決結果のいかんを問わず、関税還付の申請を取り消すべきではありません。
他方で、上方調整を行う輸入企業にとっては、税関当局が、上方調整は特殊関係による影響に起因するものであり、引き続き課税対象であると見なす可能性が高いということを考慮する必要があります。浜松ホトニクス訴訟の予想される判決は、上方調整を行う輸入企業にとって有利となる強力な論拠を提供する可能性があり、自己申告による遡及調整を実施する中で税関による追加審査を受けた場合でも、審査に対して上訴し、この問題について法的見解を求めることが可能といえます。しかしながら、その一方で、上方調整の取扱いに関連するケースは、いずれにしても裁判所による判断が必要となる可能性が高いと考えられます。
この問題によって、関税評価額の最終決定に移転価格調整が与える影響は依然として検討されており、EUへの輸入を行うさまざまな企業に影響を与えると考えられます。特に関連会社間価格に基づく申告を行っている企業は、当該関税評価額の適切性について慎重な評価を行うことが推奨されます。最終的な関税評価額の決定に移転価格調整を考慮することについて反対する議論もありますが、企業は、輸入前に現地の税関当局と協力することで、移転価格調整の取扱いについて法的に明確にし、追加費用や金利を負担するリスクを抑えることを検討することが望ましいといえます。
巻末注
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