2023年5月30日
なぜ、鳥飼八幡宮はEYと共に、メタバース上に神社空間を構築したのか…?

なぜ、鳥飼八幡宮はEYと共に、メタバース神社を構築したのか…?

執筆者 EY Japan

複合的サービスを提供するプロフェッショナル・サービス・ファーム

2023年5月30日

EY Japanは、2021年にテクノロジーを活用した企業や組織の変革を推進する「EYデジタルハブ福岡」を設立。九州における地域振興・地方創生にも力を入れています。

今回は、マルシェやカレーフェスを定期開催するなど、地域との新しい関わり方にチャレンジしている鳥飼八幡宮(福岡県福岡市)とともに、メタバースプロジェクトを始動。鳥飼八幡宮の山内圭司宮司(以下、山内氏)に、これからの「神社の在り方」や「日本文化の伝承とテクノロジーの融合」などについてお話を伺いました。

要点
  • EY Japanが、福岡・鳥飼八幡宮とともにメタバース神社を企画・構築した。
  • 神社も時代に合わせて変化し、最適化することが必要である。
  • 人々の心のよりどころとなってきた神社本来の役割を、オンラインで実現していく。
     


時代に合わせて変化しなければ、歴史はつなげられない

鳥飼八幡宮の山内圭司宮司

EY:元々鳥飼八幡宮は、ウェブサイト上に「オンライン授与所」を作るなど、先進的な取り組みをされていましたが、改めて、鳥飼八幡宮が「メタバース神社」に取り組まれた理由をお聞かせください。

山内氏:時代に合わせて、神社という存在を最適化しなければならないと思ったからです。そのために何ができるかを考えた時に「メタバース神社」は有効なのではないかと考えました。歴史を振り返ると、神社は元々、その時々の最先端を取り入れて世の中に合わせてきた存在だと私は考えています。そこで、最先端のテクノロジーを取り入れることが、今の時代に合わせることだと思ったんです。

テクノロジーの発達により人々の暮らしぶりは大きく変わってきています。ですから、神社も伝統を踏襲しつつ時代に合わせて在り方を最適化しないと、今後歴史をつなげられないのではないかといった懸念もありました。

EY:神社は日本の文化や伝統を継承していく存在ですし、メタバースというテクノロジーとは少し距離があるようにも感じますが、この2つの融合についてはどのように考えていますか。

山内氏:私にとって、メタバースはあくまでも手法であって、神社により関わりやすくなるきっかけに過ぎません。あまり「テクノロジーだから」と難しく考えなくてもいいと思っています。

EY:メタバース空間という新しい場所に、歴史ある鳥飼八幡宮や「神社」という文化、宗教を最適化していく中で、葛藤はありませんでしたか。

山内氏:神社に関わる方や信仰心が厚い方の中には、メタバース空間に神社を構築することに抵抗がある方もいらっしゃると思うので、そういった方々の気持ちもきちんと取り入れつつ、いいものを作りたいと考えています。

ただ私は、たとえ賛否両論があったとしても、今のまま変わらずにいることの方が良くないと思うんです。このまま何もしなければおそらく参拝は減っていくでしょうし、結果的に歴史をつなぐことができなくなるのではないかといった危惧もある。神社がこれから先も親しまれ、日本独特の文化や価値観の根底をなす存在であり続けるためにも、時代に合わせて変化し続けていく必要があると思っています。

「神様」や「神社」、漠然としたイメージを具現化する

山内氏:初めてEYの方々にお会いした時に、私から「われわれがいるこの世界も1つの宇宙。鳥飼八幡宮も神社として宇宙でありたいと常々思っている。だから、メタバース空間上も宇宙を表現してほしい」という雲をつかむような話をさせていただいたんです。漠然とした話だったのに、EYがきっちりその世界観をメタバースに作り込んでくださったので感謝しています。

EY:私たちからは、「どのように伝統や歴史をメタバース空間に展開していくのか」「どんなユーザー体験に導いていけるのか」といったクリエイティブな話をしました。具体案をご提案する際には、実際の鳥飼八幡宮に参拝に来た場合と、似て非なるものにしていこうと意識しました。
山内さんは、今回のプロジェクトを進める上で、何かご苦労はありましたか?

山内氏:私としては、誰にも想像できないようなメタバース空間を作りたいと考えています。出来上がりを一緒に想像しながら進めていかないといけないと思いつつも、われわれにメタバースに関する知識が浅く、力が及ばなかった部分はあったと思っています。

EY:神様の外見や社殿の厳かな雰囲気など、皆さんそれぞれが神社のイメージを持っています。できるだけ多くの人に受け入れてもらえる形でありつつも、鳥飼八幡宮ならではの価値をどのようにつけていくのかに苦労しました。

山内氏:われわれとしては、「神社とはこうあるべき」といった枠にとらわれないようにしたいんです。当然、神社の関係者や氏子さんなど、みんなが同じ思いではありません。でも、私は突き抜けたものにしたい。EYが、私の気持ちと、良いあんばいにしないといけない部分のバランスを上手にとってくださっているのを感じています。

EY:こういった「雲をつかむような話」を具現化していくことは、まさにEYの「アドバイザリーサービス」という仕事の醍醐味(だいごみ)です。難しくも漠然としたイメージを一緒に形にしていくことができるのは、すごく有意義ですし、EYとしても非常に良い経験になったプロジェクトでした。
 

鳥飼八幡宮の山内圭司宮司

メタバースを介して、人と人との交流を生み出す

EY:今回、時代に合わせて最適化する手法の1つとしてメタバースに取り組みましたが、中でも気に入っている機能はありますか?

山内氏:メタバース空間上で、人と人とが交流できるところですね。

EY:メタバース神社に参拝するだけでなく、ゲーム要素を取り入れて、そのゲームを通して人と人とがコミュニケーションを取れるものをご提案しました。これは、メタバースでこそ実現できることだと思っています。

山内氏:そうですね。私はオンラインで人と人とが交流して、それが良い縁になって、仕事が生まれたり、人と人とが付き合ったり、ひいては結婚したり子どもが生まれたりとリアルにつながっていけばすてきだなと思っています。

EY:当初からリアルの発展のため、いかにデジタルを活用できるか、という目的が共有されていたため、「人と人の交流が生まれるもの」という軸をぶらさずに進めることができました。

山内氏:EYには、私たちだけでは思い浮かばないアイデアをたくさん出していただきました。形にするのが難しかったのではないかと思いますが、私たちの思いをきちんとくみ取っていただいたと感謝しています。

EY:メタバースは、実は技術的にはそれほど最先端というわけではありません。むしろ、どのように形にするか、どんな顧客体験価値を提供できるかが肝だと思っています。今回は、「クライアントが漠然と考えているものを形に落とし込む」という、EYのアドバイザリーサービスの本質的なところに注力できたのではないかと感じています。
これからの神社の役割はどういったものになっていくと思いますか。

山内氏:元々、神社は地域の方々の心のよりどころであるべきで、その部分をずっと担ってきました。しかし、時代の変化とともに、なかなかそのような存在でい続けることが難しくなっているのが現状です。地域の方々の声をきちんと吸い上げて、皆さんに集っていただけるよう努めたいと考えています。

EY:メタバース空間の鳥飼八幡宮は、神社としてどのような役割を担うことになるのでしょうか。

山内氏:そうですね…私としては、例えばご自宅に引きこもりがちの方のような、外に出ることができない方々に参拝していただきたいと思っています。家にいても、神社に参拝することで心を整えることができて、「外に出たいな」と一歩踏み出すきっかけになればいい。そう願っています。

EY:今後の発展についてはどうお考えですか。

山内氏:次のステップとしてはNFTです。皆さんがメタバース空間で鳥飼八幡宮に参拝できるだけでなく、お札など神社の価値あるものがメタバース空間で皆さんに届くといった場所になればと考えています。そのためにも、まずは「メタバース神社」を成功させたいですね。

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メタバース神社プロジェクト

EYは、福岡・鳥飼八幡宮と共に歴史や伝統と向き合い、デザイン思考を取り入れメタバース神社を企画・設計。誰もが集い思い思いに過ごせる、未来へとつながる神社を構築しました。

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サマリー

EY Japanは、2021年にテクノロジーを活用した企業や組織の変革を推進する「EYデジタルハブ福岡」を設立。本プロジェクトでは、福岡・鳥飼八幡宮とともに、メタバース神社を企画・構築しました。神社の在り方を現代に最適化させ、人と人との交流を生み出すような空間を目指しています。

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