昨年11月、グラスゴーでCOP26に参加した時に、私たちと同じようにCOP初参加の多くのビジネスリーダーに会いました。会話の中で確信したのは、企業が、気候災害を回避するために自身がすべき役割に目覚めたということです。金融業界はクリーンエネルギーへの資本投入を表明しており、各国政府は、気候変動をセ氏1.5度に抑えるという目標を単独では達成できないため、協力が必要になることに気付いています。
対応が急がれる中、企業はネットゼロへの誓約を具体的な行動へと移しています。事業で排出される炭素の削減や、サプライチェーンのグリーン化の他、環境・社会・ガバナンス(ESG)関連の非財務実績を、業界をまたいで一貫した有用な方法で報告することなど、未踏の海域といえる分野で、大規模な取り組みが行われています。
企業が知りたいのは、他の企業はどうしているのか、自社はどうすればいいのかです。
それを踏まえると、官民を越えたコラボレーションが促進され、イノベーションや持続可能な成長の機会が増えたことは当然といえます。議論だけでなく、行動が求められるため、コラボレーションが必要なのです。
クライアントが直面する課題は2つあります。長期計画と短期計画をどのように擦り合わせるか、また業界規模での変化をどのように推進すればいいかということです。
今日のビジネス課題と今後30年間の計画をどのように擦り合わせるのか
エネルギー業界や大規模インフラ以外の企業は、ネットゼロの実現で求められるような30年単位の計画策定に慣れていません。2050年にネットゼロを達成するには、2030年に向けてどう動けばいいのでしょうか。
技術が向上し、イノベーションが生まれ、ビジネスが発展し、政策が変わっていくと予想される中で、企業は今、何をすべきで、次の5年間には何をすべきなのでしょうか。短期的な兆候と長期的な変化とをどのように調整すればいいのでしょうか。
多くの企業にとって、ネットゼロへの第一歩は、100%再生可能エネルギーを供給する事業者に切り替えたり、再生可能エネルギーの購入契約を結んだりすることです。その上で、サプライチェーン、インフラ、事業の業務やパーパスを含め、企業全体を見直す必要があります。
ネットゼロの実現で求められる業界規模の変化をどのように進めればいいのか
ほとんどの企業では、サプライチェーンからの炭素排出量が全排出量の大半を占めています。企業は、業界全体が変わらなければネットゼロを達成できないことに気付いています。
環境に優しいバリューチェーンを構築するには、コラボレーションが欠かせません。こうした規模の変化では、政府、業界、市民、社会が協調して行動することが求められます。これは電気自動車登場時の例に見ることができます。欧州連合は2009年から新車へのCO2排出規則の適用を義務化し、英国政府は2010年から充電インフラに助成金を出しています。これにより業界は急速に成長しました。再生可能エネルギーも同様です。補助金や、差金決済取引などの画期的な規制の仕組みによって、新興市場への投資が促され、イノベーションと急速な成長のための環境を支えています。
前進に必要なのは、コラボレーションであり、実際に進んでいます。クライアントからは、招集者としてのEYの強みが発揮される分野だと期待が寄せられています。EYは、さまざまな世代、あらゆる規模の企業、学術機関、政府機関、環境学者、活動家、テクノロジー企業、スタートアップ、イノベーターなど、多様なコミュニティと協調することで、変化を推進し、新たなツールを市場に提供しています。
例えば、若手データサイエンティストが、そのスキルを用いて生物多様性の追跡方法を新たに生み出すBetter Working Worldデータチャレンジや、年配のビジネスリーダーと若手の気候変動対策リーダーが集い、サステナビリティのための行動を考えるEY UK Climate Business Forumなど、さまざまなイニシアチブを通じて次世代との協力を深めています。他にも多様なコラボレーションを行っており、EYとMicrosoftのアライアンスでは、ESGデータ報告のためのMicrosoftのデータプラットフォームであるMicrosoft Cloud for Sustainability(MC4S)など、変革につながるクラウドソリューションの設計と提供を支援しています。