2023年12月20日
水際緩和から1年の今考える、サステナブルのその先へリジェネレーティブ・ツーリズム「旅価の改新」とは何か︖

水際緩和から1年の今考える、サステナブルのその先へリジェネレーティブ・ツーリズム「旅価の改新」とは何か︖

執筆者 平林 知高

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジック インパクト パートナー

多摩大学ルール形成戦略研究所 客員教授。ツーリズムを通じた地域活性化の実現に向け、日々、日本中を飛び回る。

2023年12月20日

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)水際対策の緩和以降の日本におけるツーリズムの現状や、地方への誘客の状況の分析、また、オーバーツーリズムなど負の影響を踏まえ、ポジティブな効果を生み出す取り組みに向けたツーリズムのリジェネレーション(改新)への提言を取りまとめています。

要点

  • 2023年上半期のインバウンド観光客の回復状況では、2019年同期比、64.4%まで回復
  • 消費額内訳では2019年同期比で約1.4倍、金額にして約5万円の増加。円安下ではあるものの、買い物は減少し、宿泊や飲食、アクティビティなど体験への消費が高まっている傾向
  • 宿泊者数では、東京はすでにコロナ前の水準を超える回復で、京都、栃木は9割超、福岡、石川、宮城は8割超の水準にまで回復
  • インバウンド観光の回復後、ツーリズムを通じたポジティブなインパクトを観光地にもたらすべく、旅の価値を改新する、リジェネレーティブ・ツーリズムの取り組みが重要
このページは2023年10月13日に公開したレポートを記事として掲載したものです。
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水際緩和から1年の今考える、サステナブルのその先へ、リジェネレーティブ・ツーリズム「旅価の改新」とは何か?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19〈以下、新型コロナ〉)による入国制限が緩和されてから1年が経過しました。

この1年を振り返ってみると、途中、インバウンド観光客の回復が鈍化した時期はあったものの、右肩上がりで回復し、最新の2023年8月のインバウンド観光客の回復状況を見ると、新型コロナ発生以前の2019年比、85.6%にまで回復しています。特に米国、豪州からの観光客がコロナ禍以前に比べて100%を超えて推移する等、活況を呈しています。また、これまでインバウンド観光客の大多数を占めていた香港、台湾、韓国も新型コロナ拡大前の水準にほぼ回復しており、残るは中国市場の回復が見込まれればコロナ禍に入る前以上のインバウンド観光客が日本を訪れる状況になると推察されます。

インバウンド観光客数推移表

中国市場ですが、団体旅行が解禁されたものの、足元の回復は36.4%と低い水準にとどまっています。同じ東アジアのシンガポールやタイにおける中国人観光客の回復を見てみると、シンガポールは6割弱の回復、タイに至っては日本と同程度の4割弱の回復状況となっており、日本だけが回復が遅いというより、全体的にアジアに対する中国人の海外旅行のマインドがいまだに低い可能性があります。

シンガポールへの訪問観光客数推移
中国人の海外旅行に関する意向調査

Dragon Trail Researchの調査によると、実際に中国のアウトバウンドに関する状況は、半分以上の回答者が2023年に海外旅行を明確に計画していない状況となっています。海外旅行をしない理由として、2023年1月の調査では健康に対する不安やコロナ禍による経済的な理由が主でしたが1、6月の調査では、コロナ禍による影響もありますが、それよりも個人の安全確保や政治的な安定が海外旅行に向けた障壁となっているようです2

こうした状況を踏まえると、中国市場の戻りは、来年の春節頃に本格化するのではないかと推察されます。

2023年上半期のインバウンド観光客の実態

順調に回復をしてきたインバウンド観光市場ですが、ストックとして見たときに、どのような回復の状況、実態であったかを2023年の上半期のデータを使って見ていきます。

2023年上半期におけるインバウンド観光客の総数の推移は、1,071万人となり、2019年比で64.4%にまで回復しました。また、足元8月までで68.6%にまで回復しており、年末には8割弱までの回復が予想されます。特に、米国の回復が顕著で、すでに2019年の水準を上回っているのが特徴です。その他、韓国や香港も9割程度まで回復しており、年内に2019年の水準を回復するものと思われます。

インバウンド観光客推移

2023年上半期のインバウンド観光客の国内延べ宿泊数(人泊)は3,852万人泊で、2019年の同期比で74.8%まで回復しました。100%を超えているのは、米国、カナダ、ドイツ、シンガポール、マレーシア、フィリピンといった国々で、大多数を占める韓国、香港、台湾は8割程度の回復状況となっています。全体として、比重の大きい東アジアの回復が待たれるところではありますが、一方で、欧米豪はすでに2019年の水準を超える等、若干のポートフォリオの変化も起きつつあるのが現状です。

2023年1~6月の国別インバウンド観光客延べ宿泊者数
2019/2023年1~6月 インバウンド観光客者数の寄与度分解

消費額の内訳を見てみると、1人当たりの平均消費単価は207,430円であり、2019年比で約1.4倍、金額にして約5万円程度の増加が見られます。また、消費している費目の内訳は、宿泊費の割合が5%上昇し、買い物に占める割合が10%減少している点は注目に値します。円安下において、相対的に割安感がある中、日本での購買が増加していると予測していましたが、実態は、宿泊や飲食、アクティビティ等の体験への消費が高まっていることが確認できます。特に宿泊については、コロナ禍において、これまでの宿における体験価値の提供を見直し、高付加価値化に向けて設備投資等を含め実施してきた結果ではないかと推察されます。

インバウンド観光客の消費単価と費目構成比

国別に消費の内訳を見てみると、多くの国で宿泊費の比率が上がっているのが確認できますが、買い物代については、円安の恩恵を受ける欧米豪については、買い物代の比率が高まっていることも、現在の経済状況を踏まえた特徴といえます。

平均宿泊日数の推移を見てみると、2019年の8.2泊に対し、2023年は11.5泊と3.3泊増加しており、ほとんどの国からのインバウンド観光客で滞在日数が長期化していることが確認できます。中国の平均宿泊日数が突出して高くなっているため、その影響を除いてインバウンド観光客全体の平均宿泊日数を見てみると、10.3泊となっており、中国抜きでは2.1泊の増加となっていることが確認できます。中国からの観光客は約60万人と低水準ではあるものの、平均消費単価が高いことからも確認できますが、比較的富裕層が日本に長期滞在していたものと推測されます。

インバウンド観光客の消費単価と費目構成比
2019年と2023年のインバウンド観光客平均泊数の変化

インバウンド観光客の地方への誘客における状況

平均消費単価や平均宿泊日数が新型コロナ発生前と比べて、プラスの結果となっていますが、その恩恵はどこまで地方へ波及しているのでしょうか。

都道府県別のインバウンド観光客の延べ宿泊者数で、全国平均の回復を超えているのは、9都府県となっています。東京はすでにコロナ禍に入る前の水準を超える回復を見せており、京都、栃木、福岡、石川、宮城は新型コロナ拡大前の8割の水準にまで回復しています。一方、多くの地方は6割以下の回復となっており、まだまだインバウンド需要の戻りを実感できる状況にはないと考えられます。規模的に大きい東アジアからの観光客の回復が遅いことも、地域のインバウンド観光回復には影響しています。横軸に2019年における各都道府県のインバウンド観光客のうち、東アジアが占める割合を、縦軸に対2019年上半期で見た2023年のインバウンド観光客の回復状況をプロットしてみると、回帰曲線の傾きは負となっており、東アジアに依存していた都道府県は相対的に回復が遅い傾向にあることも確認できます。

2023年1~6月のインバウンド観光客延べ宿泊数
2023年インバウンド観光客の延べ宿泊者数回復状況/都道府県内の延べ宿泊者数のうち東アジアの割合

また、インバウンド観光客の分布状況を2019年と2023年で比較してみると、東京へのインバウンド観光客の集中度が約10%程度高まり、4割弱が集中している状況となっています。大阪、京都、北海道は2019年と同程度の割合でインバウンド観光客を獲得できていますが、それ以外の地域はインバウンド観光客の獲得割合が減少しており、インバウンド観光回復の恩恵は感じにくくなっていると考えられます。

インバウンド観光客の国内延べ宿泊者数のうち各都道府県ごとの割合

2019年比でインバウンド観光客の獲得比率が上昇した上位10都府県を見てみると、東アジアからの観光客は、東京、京都、大阪、福岡で63.6%を占め、2019年よりも15%も集中度が高まり、欧米豪については、約5%高まり74.8%と全体の3/4を占めています。

同様に獲得比率が減少した下位10道県を見てみると、特に北海道、沖縄の獲得比率が大幅に減少し、全体で2019年に14.4%あった獲得割合が、2023年には9.0%と5.4%減少しました。沖縄は東アジアからの観光客獲得シェアが4.1%減少するも、欧米豪の獲得シェアは0.4%上昇、北海道は東アジアの獲得シェアは0.4%の微減にとどまるも、欧米豪の獲得シェアが1.3%の減少となりました。

それぞれ規模や直行便の回復状況により事情が異なるため、国ごとの獲得シェアの分解は注意をして見る必要があるものの、相対的な魅力の低下を含め、今後注視していく必要があると考えられます。

インバウンド観光客の国内延べ宿泊者数のうち、自地域の割合が増えた都道府県
インバウンド観光客の国内延べ宿泊者数のうち自地域の割合が減った都道府県

訪問目的別に見たインバウンド観光客の回復状況

インバウンド観光客を「観光・レジャー」目的と「ビジネス」目的に分けて見てみましょう。もともと日本のインバウンド観光客のうち、ビジネス目的が占める割合は2割弱(2019年1~6月)とそれほど多くはないですが、レジャーの回復と比較してみると、45%減と2019年の水準への回復はまだまだといった状況です。一方で、1人当たりの消費単価を見てみると、約23万円と全体平均よりも高くなっています。また、全体が1.4倍の伸びを示しているのに対し、1.5倍と高い伸び率となっていることが確認できます。

ビジネス客の誘致は、1人当たりの消費単価の引き上げにも効果的であり、最近ではブレンデッド・トラベルとして、ビジネスとレジャーを組み合わせた形態も期待されていることから、地方誘客のドライバーとして、こうしたビジネス客の誘致、MICEの推進は期待されるところです。

全ての国・地域 目的別インバウンド観光客数
全ての国・地域 目的別インバウンド観光客1人当たり消費額

観光関連産業の人材の回復状況

コロナ禍からの回復途上にある中、観光関連産業、特に飲食、宿泊業における担い手不足が叫ばれていました。その状況は若干の改善状況にあるものの、現場でのヒアリングによると、まだまだ回復途上で、新型コロナ拡大前の稼働率を確保するには、担い手不足という状況のようです。

統計で確認可能な観光関連産業のうち、宿泊業・飲食サービス業を見てみると、常用雇用者はコロナ禍以前の水準にまで回復傾向にありますが、常用雇用以外の日雇・臨時雇用(アルバイト等含む)については、減少傾向にあり、いまだ確保が難しい状況が続いていることが確認できます。

賃金水準は、宿泊業・飲食サービス業は全産業平均に比して、正規雇用の賃金上昇率は高いものの、相対的な賃金水準は全産業平均に比して、約110万円低い状況にあります。担い手の獲得が困難な非正規雇用については、統計上、賃金水準は低下しており、全産業の非正規雇用のトレンドとは逆となり、約60万円低い水準となっていることが分かります。担い手の確保には賃金水準を高めていく必要もある一方で、コロナ禍を経て台頭したフードデリバリー等、自分で働く場所や時間を自分の裁量で決定できるギグワークが浸透し始めており、働き方が多様化してきていることから、休日や働き方等、これまでの常識を捨て、いかにして担い手を確保していくべきか、改めて見直していく必要があると考えられます。

宿泊業や飲食サービス業をはじめとした旅行者と接点を直接持つツーリズム関連産業は、担い手の確保が困難な状況は今後も続くことが予測されることを踏まえると、付加価値を最大限発揮できるよう、バックオフィス業務を、デジタル化をはじめとした業務見直しによる効率化を図り、いかにフロント業務に人員を確保できるかが、今後の焦点となってくるのではないでしょうか。

宿泊業・飲食サービス業 就業者数
宿泊業・飲食サービス業 就業者数

インバウンド需要の回復がもたらす負の影響

インバウンド観光客の回復状況は、これまで見てきたとおりですが、特に2019年比での回復が8割を超える東京、京都、福岡、石川等の地域については、一部でオーバーツーリズムの懸念の声が上がっています。インバウンド観光客数は東京を除いては2019年レベルに戻っていないことを踏まえると、観光施設を含めて、サービスを提供する担い手の不足が、過剰感を引き起こし、オーバーツーリズムといわれているのかもしれません。

新型コロナ拡大前からインバウンド観光客の増加に伴い、たびたびオーバーツーリズムの問題は提起されてきましたが、政府が観光立国として2030年に向けて6,000万人のインバウンド観光客数を目指していることから、今後ますます問題は顕在化していくことと予測されます。

オーバーツーリズムは、インバウンド観光客だけでなく、国内旅行者の集中によっても引き起こされますし、その問題は、オーバーツーリズムになる前から、準備を進めていく必要があると考えられます。そのためには、旅行者の数や集中を可視化していく必要があり、入域数や施設の利用者、移動の分布状況等、チケットのデジタル化等を含めてきちんと把握し、データに基づき、いかに分散していくかが今後の観光地にとって重要なテーマになってくると考えられます。

コロナ禍において、人々が集中することを避けるために、チケットをデジタル化、予約制にすることで一定程度、入域数を制限してきた地域も多くありましたが、新型コロナ拡大による影響が緩和されつつある現在、数をコントロールすることに対しては、地元の事業者をはじめ、さまざまな、声が上がっているところです。

例えば、米国のヨセミテ国立公園では、パンデミックに導入された予約システムを2023年は継続しない方針を打ち出し、他の国立公園とは異なる動きを実施しました。訪問者を制限しないことは、国立公園内での上質な体験を奪うだけでなく、公園のインフラや環境を損なう懸念があるものの、一方で、観光関連産業が郡の住民の50%を雇用しているマリポサでは、夏の5カ月でしか観光による収益を上げることができないことから、観光客の制限の解除による、地元経済の底上げに期待する等、考え方はさまざまだといえます3

一律に数を制限し、オーバーツーリズムを回避する手法を採用している地域もあります。例えばイタリア北部のアルプス地方に位置する南チロルでは、環境への負荷軽減等を目的として、年間2019年の繁忙期の宿泊数に相当する3,400万泊を基準値に設定し、観光客を制限しました。また、ホテルや民宿の新規開業には地方議会の承認が必要となり、空きがない場合は認可が下りないようにルール化する等の措置を展開しています4

また、ベネチアのように入域料を徴収することで観光客の数を制限する方針を打ち出す地域もあれば、すでに徴収していた入場料を引き上げることで数を制限する道を選択する地域もあります5。観光地の実情を踏まえると、必ずしも「量」をコントロールし、「質」を取るだけがオーバーツーリズムをはじめとした観光地経営の方向性ではなく、地域でどのようにバランスを取っていくかを議論していく必要があると考えられます。

ポジティブな効果を生み出す取り組みに向けたツーリズムの改新
(リジェネレーション)

オーバーツーリズムへの対応や観光客の増加に伴う自然環境や文化への悪影響等を踏まえて、多くの地域では、持続可能な観光(Sustainable Tourism)としてさまざまな施策を展開しているところです。「サステナビリティ」はここ日本でもコロナ禍を経て、かなり浸透してきた言葉ですが、自然環境・社会を「維持する」ことに対して、近年、その行動で十分かという疑問が投げかけられています。

自然環境・社会を「維持」しながら従来型の経済活動を続けることによる負の影響が無視できなくなりつつある現状を踏まえ、新たに「リジェネレーション」という考え方が、欧米を中心に議論が開始されているところです。世界経済フォーラムでもリジェネレーティブ・ビジネスが長期的価値の構築に向けて重要であると議論され始めています6

「リジェネレーション」とは何か。「サステナビリティ」がマイナスを0に戻すための取り組みといわれるのに対し、0を1にするための取り組みが「リジェネレーション」と整理されることが多いです。この0を1にするための取り組みには従来型の考え方、ビジネス手法では達成することは困難で、ここではリジェネレーションを「改新」と表現します。一般的には「再生」と表現されることが多いリジェネレーションですが、再生というよりは、0を1にするために自らを変革し、あらゆるステークホルダーとの関係を意識し、イノベーションを起こしていく必要があることから、「改新」という表現が、日本語的にはしっくりくるのではないかと考えています。

ポジティブな効果を生み出す取り組みに向けた ツーリズムの改新

では、「リジェネレーション」はツーリズムにおいてどのようなインパクトを与えるのでしょうか。観光地として世界的に有名なハワイでは、今年の8月に「Hawaii Regenerative Tourism Conference」が開催され、ハワイ州政府観光局をはじめ、ハワイにおけるリジェネレーティブ・ツーリズムの取り組みが議論されています。その会議への参加を通じた議論を含めてツーリズムにおける「リジェネレーション」とは何かを考えると、「観光客」と「観光地」、そして「自然環境・文化」が有機的に一体となるような関係性の再構築、そして3者にとってポジティブな効果をいかにしてもたらしていくか(イノベーション)だといえます。また、実際に各ステークホルダーが行動に移すということが、この「リジェネレーション」においては重要な点です。

コロナ禍を経て、人々はウェルビーイングやウェルネス、マインドフルネスといった自己の内面を高める、あるいは自身を変革することへの意識が高まってきているといわれます。この動きは、ウェルネスツーリズム等への関心の高まりであり、自分自身の改新(リジェネレーション)であるといえます。また、観光地は、観光地として成長していくためには、住民にツーリズムによる経済的インパクトへの理解促進、参画の促進や地元企業のツーリズムへの参画、地元商品・サービスへの消費拡大の必要性を意識した各ステークホルダーの利益を最大化する観光地(コミュニティ)の改新に取り組む必要があります。そして、最後に自然環境・文化に配慮し、ただ維持・保全するだけでなく、有機的に活用しながらポジティブな効果をいかにして生み出すかを観光客、観光地双方が取り組んでいける仕組みを再構築し、旅の価値を改めて新しく定義していくことが求められているといえます。

これまでツーリズムでは、観光客のニーズや地域のアセットを活用して〇〇ツーリズムとしてサービスを提供してきました。おのおのの利益のみを考えたツーリズムではなく、観光地や観光地に住まう住民、企業や観光地の自然環境・文化が有機的に一体となり、観光客もその一員として観光地を堪能し、ポジティブなインパクトを与える、そんな関係性をいかにして構築していくか。サステナビリティのその先として、こうした観点を取り入れ、ツーリズムの価値を改めて定義していくことで、次世代に対して、今以上の付加価値の高い観光地を形成していくことが、今改めて問われ始めているように思います。リジェネレーティブ・ツーリズム、それは旅価(旅の価値)の改新ではないでしょうか。

ポジティブな効果を生み出す取り組みに向けた ツーリズムの改新
脚注
  1. Dragon Trail Research “READY TO SEE THE WORLD : Chinese Traveler Sentiment Report” January 2023
  2. Dragon Trail Research “FIRST STEPS TOWARDS RECOVERY : Chinese Traveler Sentiment Report” April 2023
  3. “Yosemite Ends Park Reservation Requirements to Evaluate Impact on Communities” Skift 2022, https://skift.com/2022/12/06/yosemite-ends-park-reservation-requirements-to-evaluate-impact-on-communities/ (2023年9月26日アクセス)
  4. “This Famed Alpine Region In Italy Is Restricting Tourist Numbers To Curb Overcrowding” Forbes 2023,    https://www.forbes.com/sites/rebeccahughes/2023/04/29/this-famed-alpine-region-in-italy-is-restricting-tourist-numbers-to-curb-overcrowding/?sh=35e725cb10cf(2023年9月26日アクセス)
  5. “Tourist Destinations Face Dilemma Switching From Quantity to ‘Quality’ Visitor Strategies” Skift 2022,
    https://skift.com/2022/08/29/tourist-destinations-face-dilemma-switching-from-quantity-to-quality-visitor-strategies/ (2023年9月26日アクセス)
  6. “Let's talk about 'regenerative business' not sustainability” World Economic Forum 2023
    https://www.weforum.org/agenda/2023/03/regenerative-business-sustainability/(2023年9月26日アクセス)

サマリー

インバウンド観光客の回復は、一部の地域ではオーバーツーリズムの懸念が出るほどに活況を呈していますが、観光地によりポジティブなインパクトを生み出すためには、これまでの枠組みを超えて、イノベーションを意識した取り組みが必要です。そのためには、あらゆるステークホルダーがツーリズムに対する考え方、価値を再定義し、具体的な行動につなげていくことが重要です。リジェネレーティブ・ツーリズム、それは旅価(旅の価値)の改新と言えるのではないでしょうか。

この記事について

執筆者 平林 知高

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジック インパクト パートナー

多摩大学ルール形成戦略研究所 客員教授。ツーリズムを通じた地域活性化の実現に向け、日々、日本中を飛び回る。