11 分 2022年5月13日

Consumers are looking to simplify their lives, which will make reaching them even more complex for brands that don’t adapt now.

人気のない通りを手をつなぎながらスケートボードで走る男女の写真

Future Consumer Index︓人々は自らの価値観を再定義している

執筆者 Kristina Rogers

EY Global Consumer Leader

Global leader for consumer industries. Marketing strategist. Worked in 20 countries. Harvard MBA. Photographer. Scuba diver. Canadian fiction reader. Mother of two.

EY Japanの窓口

EY Japan 消費財・小売リーダー EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 パートナー

国内外のM&Aトランザクションに関わるファイナンシャルアドバイザリーサービスを提供。 CPRマーケットセグメント リージョナルリーダーとして、CPRセクターにおけるEYの活動を主導。

11 分 2022年5月13日

消費者は⽣活の簡素化を求めています。このニーズに対応できないブランドは、消費者にリーチすることがますます難しくなるでしょう。

要点
  • 人々は、シンプルなニーズに注目している。特にインフレが加速している現在、価値を感じないものに時間とお金を浪費することはないだろう。
  • 消費者は物理的に遠出をしたがらないが、その一方で非日常的な感覚を求めるようになっている。
  • ベビーブーマー世代から若い世代への画期的なパワーシフトが、人々の仕事に対する意識を変えつつある。
Local Perspective IconEY Japanの視点

我々の生活は新型コロナウイルス感染症の影響により激変し、消費者は多くの我慢を強いられる期間を過ごしてきました。ようやく平時の生活に戻れるという希望が見えてきたタイミングで、急速なインフレの進行、地政学的リスクの顕在化といった問題により、消費者は購買における保守的傾向を一層、強めています。日本の消費者は、世界の消費者と同様に、購買の意思決定において、「値ごろ感」(30%)を優先している一方で、特徴的に、「健康」(32%)への意識が高く、また、「環境」(12%)への意識が低いという結果になっています。過去2年間において、世界の消費者にとって「健康」の重要性は、パンデミックの出口が見えてくるに従い低下傾向にありますが、日本の消費者にとって「健康」の重要性は高止まりしています。この傾向は、コロナ後も継続すると思われます。消費財企業が国内消費者から選ばれるためには、「健康」への配慮が不可欠です。

※ EY Future Consumer Indexの最新版では、ウクライナ情勢が緊迫化する以前の数週間の消費者⼼理を捉えています。

 

EY Japanの窓口

平元 達也
EY Japan 消費財・小売リーダー EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 パートナー

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック発⽣以来、ビジネスリーダーたちは、消費者⾏動がある種のノーマル(普通の状態)に戻る時を待ち望んできました。その瞬間が訪れたかと思うと、世界は再び、新たな危機に陥っています。

EY Future Consumer Indexの最新版では、ウクライナ情勢が緊迫化する以前の数週間の消費者⼼理を捉えています。インフレの進⾏と世界的な混乱の中で、世界中の⼈々が⽣き⽅を根本から⾒直し、消費主義やその価値観を⾃分はどう捉え、どう関わっていきたいかを⾃問していることを⽰しています。

「⼤量⾃主退職時代」はすでによく知られた現象で、先進国の従業員が仕事を辞め、キャリアプランを再考しています。EYの調査結果は、⼈々がパンデミック以前の⽣活の⽬標や仕事のパターン、消費習慣に対する興味を失い、⾏動や態度が⼤きく変化していることを⽰しています。

この2年間で、ほとんどの⼈々が⽀出や外出を減らしました。リモートワークにより時間の使い⽅の選択肢が増え、地理的にも精神的にも、職場から遠ざかることになりました。最初のうちは、この変化を受け⼊れるのは⼤変でした。しかし、やがて多くの⼈々がこのあり⽅を好むようになり、少なくとも、想像していたよりもはるかに良いと気づくことになりました。

⼈々は、時間の質は銀⾏⼝座の残⾼と同じくらい重要だと感じています。外出するより、在宅を好んでいます。モノを買うより、体験を買いたいと思っています。

企業のリーダーにとって、この⽂化的変化は⼤きな意味を持ちます。雇⽤主から従業員へ、キャリアを間もなく終える⾼齢者から、⾦銭や地位へのモチベーションが低く、異なる価値観に沿った⽣き⽅に興味を持つ若い世代へ、そしてブランドから消費者へ、パワーシフトが起こっています。⼈々は⾃宅やオフラインで過ごす時間が⻑くなり、企業にとってはこれまで以上にリーチしづらくなっています。

慎重な消費者は自宅付近に滞在

ウクライナ情勢の緊迫化以前から、世界中の消費者は将来に対して楽観的ではありませんでした。経済は再びインフレに転じており、仕事もプライベートも変化しました。EYの調査結果は、もはや低所得の消費者だけが慎重になっているわけではないことを⽰しています。

物価上昇を最も意識しているのは中間層ですが、インフレはあらゆる所得層の購買⾏動や購⼊意思決定に変化をもたらしています。全体として、消費者の52%が、商品やサービスのコスト上昇により、モノを買うのが難しくなっていると回答しています。 また、代替⼿段の少ないガスや⽣鮮⾷品を購⼊できるように、⾐料品や電化製品など、必需品以外の購⼊⽅法を著しく変化させています。

消費意欲が減退する中、消費者は消費を抑制し、より安価な代替品への買い替えや、必需品以外の購⼊の抑制を計画しています。最も影響を受けるのは、アルコール飲料や美容・化粧品、⾐料・靴のカテゴリーです。

多くの⼈々が、⽣活の中から「モノ」を減らすことを決断しています。

  • 34%が「必要ない有形商品の購⼊を減らしている」と回答
  • 30%が「今後中古品の購⼊を増やす」と回答
  • 47%が「⽣活必需品だけを購⼊する」と回答

ほとんどの回答者がより多くの時間を家で過ごすことを選択し、56%が必要なとき以外は外出することが少なくなったと回答しています。63%が、外出するときでも近郊で過ごすことを選択しています。交友関係も狭くなっており、74%がパンデミック前よりも友⼈や家族に会う頻度を減らしていて、遠出することに引き続き不安を感じています。

人々は自分の生活をもっとコントロールしたいと考えている

パンデミックと共に⽣きることで、⼈々は⾏動を変えることを余儀なくされました。その多くが、今では新しいライフスタイルを好み、それを守りたいと考えています。⾃らの⼈⽣の中で、より多くの選択肢があり、コントロールできると感じる部分に焦点を当てています。これには、時間やお⾦の使い⽅、健康や⼼の豊かさを向上させる⽅法などが含まれます。

消費者は、⾃らの欲求を再優先する中で、⽇常⽣活において、特に雇⽤主に対して、より柔軟な対応を求めています。回答者の41%が、パンデミックの結果、スケジュールや⽇常が改善されたと回答しています。最も評価する勤務先候補企業の福利厚⽣は何かという質問に対しては、26%が「柔軟性」、25%が「競争⼒のある報酬」と回答しています。

よりシンプルでバランスのとれた⽣活への新たな取り組みが、よりサステナブルな選択をもたらすかもしれません。EYの調査結果は、消費者がますます環境への影響に配慮するようになっていることを⽰しています。消費者は、より持続可能な買い物を選択し、環境保護のためにできることを⾏っています。

  • 56%が「購⼊するモノの環境的影響により注意を払う」と回答
  • 52%が「購⼊するモノの社会的影響により注意を払う」と回答

シンプルさと非日常感がますます⼤切に

多くの⼈々は、失われた時間を取り戻し、パンデミック後の世界の圧⼒から逃れたいと考えています。消費者の60%が今後6カ⽉以内に休暇をとる予定であり、若い世代では、39%が今年は休暇にもっとお⾦をかけると回答しています。全体として、消費者の45%が、より今を⽣き、⻑期的な計画は⽴てないと回答しています。

多くの消費者が計画しているパンデミック後の控えめなライフスタイルは、体験に⾼い価値を置くものであり、回答者の42%が、このカテゴリーでより多くの⽀出を計画していると回答しています。シンプルな柔軟性を求める声が⾼まる中、最も魅⼒的な体験は、簡単にアクセスでき、最⼩限の時間しかかからないものとなるでしょう。つまり、より多くのデジタル体験と、思い⽴ったらすぐ移動できることが求められるのです。

EYは、パンデミックの発⽣以来、嗜好や⾏動、⼈⽣観によって定義される5つの消費者セグメントを追跡してきました。パンデミックの初期段階において、「経験優先」のセグメントが占める割合は最も⼩さかったものの、今では健康や経済⾯に対する不安よりも、このセグメントが拡⼤しています。また、「環境優先」のセグメントには、さらに多くの消費者がいます。

ベビーブーマー世代の職場は魅力を失っている

「⼤量⾃主退職時代」は⼀時的なものではなく、構造的な変化です。ベビーブーマー世代は、若い消費者が承継したがらない仕事の世界を作り上げました。⾼齢者の離職はかつてないほど高水準となっていますが、誰が彼らのストレスフルな労働時間と重責を引き受けるのでしょうか︖X世代の消費者のうち今後2~3年の間にキャリアアップしたいと考える⼈はわずか20%に過ぎず、Z世代の4分の1は起業したいと考えています。

ミレニアル世代とZ世代への世代交代は、富とパワーだけでなく、仕事量の画期的な移⾏でもあります。若い⼈たちは従来の組織⽣活に背を向けており、ここ2年以内に社会⼈になった⼈たちは、パンデミック前の仕事がどんなものであったかを経験していないため、⾃分には働くことに関して柔軟性を求める権利があると考えています。彼らは、いつ、どこで、どれだけ働くかを⾃らコントロールできることを期待しているのです。これにより、在宅勤務の可否に限らず、さまざまな領域で新しい働き⽅と従業員の選択の幅が広がるでしょう。

だからといって、若い世代が仕事を減らしたいと思っているとは限りません。中には、パンデミックの期間を利⽤して、これまで以上に努⼒をした⼈もいます。EYの調査結果によると、多くの消費者、特に若い消費者が、より多くの収⼊を得る機会として在宅勤務を利⽤していることがわかります。例えば、Z世代の32%が仕事により多くの時間を費やしていると回答し、34%が複数の仕事をすることで収⼊を増やしていると回答しています。若い世代は、在宅勤務が雇⽤主と従業員の双⽅にメリットをもたらすと考えています。

パワーは雇⽤主から従業員へ、⾼齢者から若い世代へと移⾏しているだけでなく、ブランドと消費者の間のパワーダイナミクスにも変化が⽣じています。⼈々が⾃宅で過ごす時間やオフラインの時間が⻑くなるにつれて、彼らにリーチすることがこれまで以上に難しくなってきています。

ブランドは、適切なタイミングで適切な場所に、適切なメッセージを発信するために、より⼀層努⼒する必要があります。消費者の⽬はかつてないほど肥えており、彼らの関⼼を引き付け、維持することはより難しくなっています。そのうえ、ブランドとの関わり⽅も変化しています。

  • 44%が「まとめ買いによって買い物の頻度を減らす予定」と回答
  • 43%が「地元の商店街での買い物を増やす」と回答
  • 42%が「⾃分の価値観に合ったブランドからしか購⼊しない」と回答
  • 36%が「素晴らしい体験を提供する店舗にしか⾏かない」と回答

ビジネスにおける4つの必須事項

1. 消費者への新しいリーチ⽅法を模索する

消費者が内向きになると、ブランドは消費者の注意を引くことが難しくなります。企業は、新たな、あるいは進化する物理的・デジタル的タッチポイントを特定・投資することで、ニーズのある場所で存在感を⽰さなければなりません。

つまり、消費者と関わり、消費者の⽬に留まる可能性のあるあらゆるチャネルを検討し、ブランド体験に容易に溶け込ませることができるように、さらに⼀歩踏み込む必要があります。それは、店舗での個別相談から、メタバース空間におけるパーソナライズされたブランドスキンにいたるまで、さまざまなものが考えられるでしょう。

2. ブランド体験のコンテクスト化

企業は、消費者を取り込むためのコンテクストを再考する必要があります。⼈々の⽇常は、ますます細分化されてきています。ブランドは、コンテクスト指標に基づき増⼤する消費者ニーズを理解し、適切な提案で迅速に対応するデジタル能⼒を持たなければなりません。

3. アクセスしやすくする

⼈々が消費を減らし、⼿頃な価格を重視し、エンゲージメントの機会から遠ざかっている世界では、消費者の苦痛を取り除くことこそが重要です。パンデミック以前は迅速かつ容易な購買に対する消費者の期待が⾼かったとすれば、今は、ストレスのないブランド体験に対する消費者の期待は⾶躍的に⾼まっています。

ブランドは、消費者がコンシューマージャーニーの各フェーズで適切な時間を過ごしていることを確認し、ブランド・ロイヤルティを⾼める最善の⽅法を探る必要があります。しかし、実際の購⼊⾏動は、シンプルで素早く、簡単であることが求められます。

4. 総合的な価値を創造するパートナーシップを模索する

消費者に製品を販売することは、特に⾃社だけでは難しいかもしれませんが、パートナーとのエコシステム内で完結させれば、購⼊までの道のりが明確になります。消費者は全体的な優先順位をより重視するようになり、特定のニーズに対応する個別の製品ではなく、複数のニーズに対応する柔軟なソリューションを求めるようになるでしょう。つまり、ブランドは他のブランドや他のセクター、産業と連携することで、消費者のニーズに的確に応え、リーチすることができるのです。

結論

今後、企業が存在感を⽰すためには、消費者とのエンゲージメントという外的側⾯と、従業員とのエンゲージメントという内的側⾯の双⽅において、こうした変化を考慮する必要があります。

企業は、⼈⽣における柔軟性をますます重視する人材を引き付け、維持できるよう雇用モデルを再設計する必要があります。ビジネスが必要とするスキルを持つ人材にアクセスできることは、単にキャリア志向の人材を満足させることよりも重要になるでしょう。このような⽅法で⼈材を採⽤している企業は、ビジネスニーズの変化に応じてより俊敏に対応することができるでしょう。

さらに重要なことは、柔軟性に対する消費者の要求が⾼まることで、将来の消費パターンがますます細分化されることです。⼈々はより多くの場所で働き、さまざまな場所で買い物をするようになるでしょう。つまり、移動時間にとらわれず、より身近な場所で買い物をするようになるでしょう。

  • 調査方法

    EY Future Consumer Indexは、タイムホライズンとグローバル市場を対象に、変化する消費者の⼼理と⾏動を追跡し、台頭しつつある新たな消費者セグメントを識別するものです。このIndexは、どの変化がコロナ危機への⼀時的な反応で、どの変化がより根本的な転換なのか、そして、コロナ禍後の消費者⾏動がどうなるかについて、通常の経年的指標と独⾃の観点を提供します。

    第9回EY Future Consumer Indexでは、2022年1⽉28⽇から2⽉15⽇までの期間に⽶国、カナダ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン(今回初)、チリ(今回初)、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、オーストラリア、ニュージーランド、⽇本、中国、インド、インドネシア、タイ(今回初)、サウジアラビア、南アフリカで18,000⼈の消費者を対象に、調査を実施しました。

    各世代を以下のように定義しています︓

    • Z世代︓18歳~25歳
    • ミレニアル世代︓26歳~41歳
    • X世代︓42歳~57歳
    • ベビーブーマー世代︓58歳~76歳

サマリー

消費者は、世界が数年前よりもはるかに不安定で不確実なものに⾒えるという考え⽅に慣れてきています。その⼀環として、彼らは⾃らの深い価値観を再認識し、⼈⽣に何を求めるかを再考しています。シンプルで柔軟性があり、⽇常から解放されるような体験が、ますます重要視されています。このような消費者にサービスを提供する、あるいは雇⽤する企業は、彼らの新たな期待に応えるために変⾰する必要があります。

この記事について

執筆者 Kristina Rogers

EY Global Consumer Leader

Global leader for consumer industries. Marketing strategist. Worked in 20 countries. Harvard MBA. Photographer. Scuba diver. Canadian fiction reader. Mother of two.

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