投資信託 第1回:投資信託の概要

投資信託研究会
白取 洋

はじめに

投資信託とは、「投資信託及び投資法人に関する法律」(以下、「投信法」という。)に基づいて設定されたファンドであり、複数の投資者から資金を集め、それを専門家が有価証券等で運用し、これによって得た利益を出資割合に応じて投資者に分配する仕組みです。

我が国の投資信託は大きく契約型投資信託と会社型投資信託(投資法人)とに分けられます。このうち後者については本シリーズその10「不動産業-第8回REIT」で解説されていますので、本稿では、一般に有価証券等の金融商品を主な投資対象とする場合に用いられている契約型投資信託(以下、「投資信託」という。)を対象に、その概要、業務の流れ、会計の特徴及び主要な会計処理、並びにディスクロージャーについて解説することとします。

なお、文中における意見は私見であることを予めお断りしておきます。

本稿の章建ては次のようになります。



投資信託の概要

(1) 投資信託の仕組み

投資信託は下記の図のように、大きく委託者(委託会社)、受託者(受託銀行)及び受益者(投資者)の三者で構成されます。法的には委託者と受託者との間で信託契約が締結され、これに基づいて発生した受益権(信託の利益を受ける権利)を均等に分割して受益証券の形で受益者に取得させています。このような位置付けのもと、委託者は受益者から預かった信託財産の運用の指図を行い、受託者は委託者の指図に従い信託財産の保管及び管理を行います。このほか、受益者の直接の窓口となって受益証券の募集・販売、収益分配金や償還金の取扱い等を行う販売会社(証券会社や銀行等)があります。

信託財産は受託銀行の名義で保管・管理されており、さらに受託銀行においても受託銀行固有の財産とは別に管理(分別管理)されているので、仮に委託会社、受託銀行及び販売会社のいずれが破綻したとしても、受益者の資金は保護されることとなります。

図表1 契約型投資信託の仕組み

図表1 契約型投資信託の仕組み

(2) 投資信託の運営に関するルール

投資信託は投資者保護の観点から、様々な規制のもとで運営されています。まず、投資信託制度の全般的な枠組みを規定する法律として「投信法」があり、その細則を定めたものとして同施行令及び同施行規則があります。また、業界の自主規制機関である投資信託協会は、投資信託の募集、販売、運用及び基準価額の計算等について詳細な自主ルールを定めており、同協会の会員である委託会社はこれを遵守しなければなりません。さらに、個別のファンドごとに、委託者と受託者との間で締結される信託契約の内容が記載された信託約款があります。信託約款に記載すべき事項は投信法及び同施行規則に定められており、当該ファンドの仕組みや運営、管理方法などが具体的に記載され、委託者及び受託者はこれを遵守しなければなりません。

(3) 投資信託の分類

平成22年9月末現在、我が国には純資産残高で約96兆円、本数にして約6,500本もの投資信託(投資法人も含む。)が存在し、その種類は実に多様であります。これらは一般に以下のような観点から分類が行われています。

① 途中解約の可否による分類

投資者からの途中解約の可否により、オープン・エンド型とクローズド・エンド型に分類されます。オープン・エンド型は投資者からの途中解約にファンド自体で応じる(ファンドの純資産を減少させる)ものであり、現在販売されている投資信託のほとんどがこの形態をとっています。一方、クローズド・エンド型は投資者からの途中解約に応じないものであり、上場投資信託(ETF:Exchange Traded Fund)がこれに近い形態をとっています。クローズド・エンド型では、投資者は通常、取引所等の市場における売却を通じて投資回収を図ることとなります。

② 追加設定の可否による分類

追加設定の可否により、追加型と単位型に分類されます。追加型は当初の募集・設定日以降でも追加的に設定することが可能な投資信託であるのに対し、単位型は当初の募集・設定日以降は追加設定ができない投資信託であります。現在販売されている投資信託の9割以上は追加型となっています。

③ 募集形態による分類

募集形態の相違により、公募投資信託と私募投資信託に分類されます。公募投資信託は不特定かつ多数の者に取得させることを目的とした投資信託であるのに対し、私募投資信託は特定又は少数の者に取得させることを目的とした投資信託であります。従来は公募しか認められていませんでしたが、平成10年の投信法の改正により私募が認められることとなり、現在、投資信託全体の約3割を私募投資信託が占めるに至っています。

④ 投資対象による分類

投資対象の相違により、株式投資信託と公社債投資信託に分類されます。株式投資信託は株式を少しでも組み入れることができる投資信託であるのに対し、公社債投資信託は株式を一切組み入れず公社債等で運用する投資信託であります。
 

(週刊 経営財務 平成22年11月15日 No.2991 掲載)



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