投資信託 第4回:有価証券の売買の計理処理及び評価

投資信託研究会
白取 洋

有価証券の売買に関する計理処理及び評価については、投資信託協会の「投資信託財産の評価及び計理等に関する規則」等で定められており、約定日基準での計上及び時価評価を基本としています(このことはデリバティブ取引においても同様です)。投資信託ではその性質上、組入れ有価証券は原則としてすべて売買目的で保有しているものと考えられます。したがって、売買目的有価証券について時価評価を行い、評価差額を当期の損益に計上することを求めている現行の金融商品会計基準の考え方とも整合しているといえます。

以下、代表的な株式と債券について、同規則に即して説明することとします。


(1) 株式

① 売買の計理処理

株式の売買は、買付又は売付約定成立の日(外国株式の場合には、現地約定日の翌営業日)に計上します(約定日基準)。通常、受渡日は約定日から起算して4営業日目なので、相手勘定として、買いの場合は未払金、売りの場合は未収入金を計上します。

買いの場合、株式の帳簿価額には株式売買手数料を含めます。その後、同一銘柄を買い増した場合には、簿価単価は移動平均法により計算されます。

売りの場合、当該株式の帳簿価額と売却価額との差額を有価証券売買等損益として計上します。

② 評価

買付けた株式の時価評価は約定計上日から行います。国内株式については、原則として取引所における計算日の最終相場で評価します。また、外国株式については、海外の取引所における計算時に知りうる直近の日の最終相場で評価します。いずれも計算日において取引所の最終相場がない場合には、直近の日の最終相場で評価しますが、国内株式の場合、直近の日の最終相場で評価することが適当ではない場合には、気配相場で評価することもあります。なお、時価評価に伴う評価損益は当期の損益として計上します。


(2) 債券

① 売買の計理処理

債券の売買についても約定日基準で計上する点は株式と同様です。

買いの場合、債券の帳簿価額は約定金額となります。利付き債の場合、取得時における経過利息は取得価額に含めず、受渡日に前払費用として計上します。その後、同一銘柄を買い増した場合には当初は別銘柄として管理しますが、最初の利払日が到来した日に帳簿価額が合算されます。その後、簿価単価は移動平均法により計算されます。

売りの場合の計理処理は基本的には株式と同様です。

② 評価

債券の時価評価についても約定計上日から行う点、また、評価損益は当期の損益として計上する点は株式と同様ですが、債券の場合には非上場銘柄がほとんどのため、以下のいずれかの価額で評価します。

  • 日本証券業協会が発表する売買参考統計値(平均値)

  • 金融商品取引業者、銀行等の提示する価額(売気配相場を除く。)

  • 価格情報会社の提供する価額

なお、委託会社が忠実義務に従って評価額の入手に十分な努力を行ったにもかかわらず、評価額を入手できなかった場合、又は入手した評価額が時価と認定できない事由を認めた場合は、委託会社は忠実義務に基づき合理的事由をもって時価と認める評価額により評価するか、受託者と協議のうえ合理的事由をもって時価と認める評価額により評価します。
 

(週刊 経営財務 平成22年11月15日 No.2991 掲載)



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