消費者がモノを買うのではなく、コトを求めるようになったら。

執筆者 Janet Balis

EY Global Media & Entertainment Advisory Services Leader

Transformation leader in media and marketing. Innovator. Digital native. Change agent. Passionate advocate for women and gender parity. Influencer. Mother.

6 分 2018年10月10日

ブラックフライデーは2030年にも小売業界のビッグイベントであり続けるのか。消費者が買ったり、所有したりするものの数は減る。それが私たちの仮説です。ブランドが成功するために、ブランドそのものをどう再配置できるか、精査しましょう。

未来の消費者。現在の顧客体験を一見して、その体験が次の12年間でどう進化し、世界をどう変えるのか。その変化が劇的でないと思うのであれば、過去12年間の変化を振り返ってみると、それが分かります。イノベーションと新しい技術によって、変化率は加速度的にその度合いを増しているのです。 2030年の生活について、私たちの仮説を考えてみましょう。

消費者はますます少なくモノを所有するようになります。

その代わりに、消費者は自分が欲しいモノを使うか、アクセスするために支出するようになります。モノを必要とするときはいつでもそうします。ライフスタイルの予約購入やサービス購入は、ますます商品の所有に取って代わります。盛んなシェアリング・エコノミーは、このシフトを下支えします。それには、新しいコミュニティーの形態や、デマンド・レッド・エコノミー(需要主導型経済)の規模、物理的ないし仮想的サービスの要素が、ますます強調されるようになります。

位置認識機能を持ったサービスは、体験(例えば、スポーツ、音楽、体験イベント)を豊かにします。それによって、より深い個性化が推進され、新しいビジネスモデルが切り開かれます。オンラインの世界は、物理的な世界と大きく並行して存在してきましたが、その一方で、私たちはすぐにも物理とデジタルの分裂時代を横断する経験をすることになります。コンテンツとエンターテインメントは、サービスがユーザーの居る場所によってカスタマイズされたり、集められたりするのに伴って、“モバイル・ファースト”になっていくでしょう。

いまのところ、時間移動型コンテンツは普通のことですが、場所移動型コンテンツ(一つのデバイスに保存され、他のデバイスからもアクセスできるコンテンツ)は2030年までには 普及 しているでしょう。


ブランドは、新しい方法で消費者との結びつきを構築する必要があります。

従来のような途切れ途切れの、標的の定まらない広告は減り、新しい機会に道を譲ることになります。その機会がやってくるのは、より体験を重ね、デジタル化し、しっかり標的の定まった広告支援型のブランディングに移行することによってです。ストーリーテリング(物語を語る)技術は、進化を続けるVRやARのような、革新的で新しいフォーマットによって強化されるでしょう。ブランドには、ストーリーテリングを続ける必要があります。そうすることによって、より消費者に密接した組織的体験の一環として、新しいコンテンツを広めるための技術やデータを活用することになります。

サービスの個性化は、長年、TMT (テクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコミュニケーション)の目玉でした。しかし、予測分析の支援によって、新しく、ワクワクする方法で、ユーザーの好みを商品にマッチさせられるようになり、そのおかげで、まだ満たされていない、論理立てできていないニーズに合わせることができるようになります。消費者の行動や欲望のあらゆる側面についてのデータを、より深く、より細かくすることによって、よりユニークで先が読めるデジタル体験が可能になります。しかし、最大の難関は、そのデータや分析によって、情報が本当にリアルタイムで使用可能なものに収集、分析、深掘りできる状態にすることができるかどうかです。

消費者はますます自分たちの個人データの価値に気付くようになります。

消費者は自分自身のデータを収益化する手段を持つようになります。あるいは、少なくともさらに直接的、かつ透明性をもってデータをコントロールするでしょう。消費者保護やデータプライバシーに関するルールは、進化し続けます。そして、価値交換におけるイノベーションの進展具合を決めることになるでしょう。消費者の同意やコントロールに関して、透明性を重んじるという相互の関係は、信頼すべき新しいベンチマークを設定します。これは、データ保護やプライバシーが最優先の課題となるのに伴い、異なる産業のエコシステムをどう一体化するかという方向性も設定することになります。より細かなデータの効力を発揮する新しいビジネスモデルは、このデータを処理する新しいバリューチェーンによって支援されますが、急速に変化する規制環境に伴い、経営上、重大な制約を伴います。

私たちは横断・垂直型の集合を経験することになります。

ユーザー体験の状況が変化するのに伴って、TMT関連企業にとってますます重要になるのは、ライフスタイルを主導する強い消費者と結びついた、幅広いブランドのエコシステムを活用することです。企業は、もはや個別産業(メディア、ヘルスケア、自動車など)内に閉じ込められなくなるでしょう。これからは、消費者の個人的な好みや習慣に結びついた、より統合した消費者体験に照準を合わせざるを得なくなるでしょう。

それらの体験は消費者データへの大いなるアクセスを可能にします。そして、集中型であることと、 エコシステムワイドな 連携が必要になります。TMT関連企業が競争相手とパートナーの違いを明確にするために使う概念は、コンテンツクリエーターたちの連携や、機会の広がり、さらに相互運用性を創造するブランド や 周辺産業などを取り入れざるを得なくなります。

メディア・エンターテインメント企業は何と言っているのでしょうか?

メディア・エンターテインメント企業は、自ら成功者として位置付けるためには、まず自分たちの提供物の幅と深さに目を向けなければなりません。その上でスケールをつくり上げ、将来に向けて、コンテンツ、分配、収益化を大きく積み上げていきます。新しいビジネスモデルは決定的に重要であり、それには直販ビジネスモデルに向けたデータ駆動型アプローチが含まれます。

今日、成功している新世代のメディア企業を見ると、彼らの顧客データのコントロールが極めて重要なことが分かります。そのことは企業の全般的な成功をもたらすのに不可欠な経験をうまくデザインすることです。時間の経過とともに、経験が進むにつれ、ますます関連性と影響力が強まることになります。データは決して供給不足にはなりませんが、そのパワーを抑制すると、その複雑性や必要なコミットメントが過小評価されることになります。

メディア・エンターテインメント企業は、自社のコンテンツを新しい方法で束ねる必要があります。それによって全体的な統合を達成する幅広いエコシステムに関係することになります。それは消費者の期待に合わせるのに必要なのです。自動車製造業、小売業、公益事業など、 ほとんどのセクターが関係することができます。それによってコンテンツの配給が新しい期待を確実に上昇させます。 例えば、自動車をエンターテインメントの伝達媒体として使うとか、スマートシティー(次世代都市)環境の中でいろいろな機会を活用するとか、あるいは商取引と広告を新しい方法で一緒にすることを考えたりする。これらすべての努力は、将来の消費者の生活を急激に拡大させます。

  • 方法論

    グローバルイノベーター、未来学者、ビジネスリーダー、それにメンバーファームのプロフェッショナルたちと共同の研究・インタビューを通じて、EYは未来の消費者を形作ることができる150人以上の推進者を特定しています。

    私たちはこうした要因に基づいて、八つの有力な仮説を立てました。それぞれが未来の消費者の重要な側面(買い物、食事、健康管理、生活、テクノロジーの利用、遊び、労働、移動)に関連しています。

    そこで、私たちはそれらの仮説がより精査され、仮説が創り出す未来の世界をイメージするために、世界中でプログラマーたちが集まるハッカソンやイノベーション・ワークショップの開催を重ねました。

サマリー

メディア・エンターテインメント企業は、こうした水平的かつ垂直的なスケールを追求する以上、彼らは根本的に創造性を重視しなければなりません。彼らの戦略は彼ら自身の手段で実行されるでしょうし、あるいはメディア、テクノロジー、テレコムなど他の多くの企業の幅広いエコシステムと効果的に連携して実行されるでしょう。その工程はそれぞれの企業によって異なり、その大詰めはその企業の中核に存在し、拡大余地の大きい、革新的なブランド体験になるでしょう。

この記事について

執筆者 Janet Balis

EY Global Media & Entertainment Advisory Services Leader

Transformation leader in media and marketing. Innovator. Digital native. Change agent. Passionate advocate for women and gender parity. Influencer. Mother.