(A)将来、OMOがどのように進展し、特に患者体験の変革に大きな貢献をなしうるか
通常、患者が医師にかかる際の手順として、自身の体に関して何らかの違和感を覚えた際、住まいまたは勤務先に近い医療機関をインターネットで探し出し、アクセスするという方法が一般的です。EYの調査2 では、半年以内に医師にかかったことのある一般患者が医療機関を選択する際に重視する要素として、“自宅からの近さ”を挙げる割合が6割を占めています。
このような従来の患者体験は、OMOの世界観の進展によって、大きく変化していくと予想されます。例えば、大手ヘルスケアサービスプロバイダーは、症状検索サービス、疾患別オンラインコミュニティを通じて、患者の興味のある疾患や医療に関する情報を常日頃から発信しており、その後、必要に応じてオンライン診療・医療機関での対面診療に連携するソリューションを提供しています。これにより、患者・患者予備軍は、自身の疾患や医療に対する正確な理解と、適切な医療機関、診療形態の選択が可能になります(図1-①)。また、オンライン服薬指導サービスプロバイダーは、診療後、薬剤師からの服薬指導をオンラインで提供し、薬の配送まで担うことで、これまでに無い、極めて効率的な診療後プロセスを実現しています(図1-②)。
OMOがもたらす患者体験の変革は、診療に関わる時間短縮以外にも、患者個人に関するデータを一元管理できることによる、医師側の医療サービスの質向上、患者側の自己管理の質向上など、多くのメリットがあります。EYの調査2 では、通院する一般患者のうち、70%近い人が、OMO(オンライン診療、対面診療の両方向を活用した医療サービス)の利用に対して、肯定的な理解を示しています。
一方で、現状においてオンライン側の患者フローは、対面プロセスと比してごくわずかであり、オフラインとオンラインの連携はまだ初期的な段階3 にあると言えます(図1-③)。
図1:現状の診療件数・処方箋発行枚数と、処方箋フロー³