2022年9月12日
2022年上半期のSPACの動向

2022年上半期のSPACの動向

執筆者 善方 正義

EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター 副センター長 パートナー

明るく、元気に、前向きに、プロフェショナルとして社会の発展に貢献。

2022年9月12日

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2021年度はSPACに関する取引が活況を呈した年になりましたが、2022年度に⼊りSPACを取り巻く状況が⼤きく変化しました。本稿では、2022年上半期のSPACに関する取引にどの程度の変化が⽣じたのかを概括的に解説します。 

要点

  • 2022年上半期のSPAC上場や買収は世界的に見て、2021年に比べ大幅減少
  • 特に米国でのSPAC上場は、件数ベースで80%、調達金額ベースで88%減少
  • 一方で、IPOの一形態としては定着する可能性はあり、その動向については引き続き注目すべき

1. SPAC

2022年上半期(1⽉〜6⽉)の特別買収⽬的会社(Special Purpose Acquisition Company: SPAC)⾃体の上場件数は、地政学的リスクや⽶国の⾦融引き締め等による世界的なIPOの市況悪化の影響を受け、2021年上半期から75%減少の98件となりました。調達⾦額も145億米ドルと87%減少しました。

地域別にみても、Americasは71件(80%減少)、121億⽶ドル(88%減少)、欧州は、15件(25%減少)、 18億⽶ドル(67%減少)、アジア太平洋は、12件(前期同)、6億⽶ドル(279%増加)とこれまでSPACが活況であったAmericas、特に⽶国での件数・調達額の減少が⼤きく影響しました。

<エリア別SPAC IPO>
画像1 エリア別SPAC IPO

Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider

2. DeSPAC

2022年の公表ベースでのDeSPAC(IPOを行ったSPACが買収対象会社と合併し、⼀連の買収取引を完了すること)は75件であり、2021年上半期の157件と⽐較して52%減少しました。また、IPOによる調達額は125億米ドルであり、 2021年上半期の471億米ドルと⽐較して73%減少しました。買収額は625億米ドルであり、2021年上半期の3,715億米ドルと⽐較して83%減少しました。

<DeSPAC 2期比較>
画像2 DeSPAC 2期比較

Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider

2022年上半期におけるDeSPACの買収金額上位5件は、以下の通りです。

画像3 2022年上半期におけるDeSPACの買収金額上位5件

Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider

3. 米国SPAC

2021年度の⽶国のSPAC上場件数は、613件、調達⾦額1,625億米ドルを記録しましたが、2022年度上半期は、69件、118億米ドルと⼤幅に減少しました。

<米国SPAC上場企業数推移>
画像4 米国SPAC上場企業数推移

Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider

2022年度第2四半期ベースで公表された米国のDeSPACの件数は、39件と第1四半期の31件を超えたものの、昨年に比べるとその勢いが落ちています。

<公表済みのDeSPAC‐米国>
画像5 公表済みのDeSPAC‐米国

Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider

完了したDeSPAC取引についても、2021年度は199件、買収⾦額4,649億米ドルを記録しましたが、2022年上半期ケースでは、47件、買収⾦額1,116億米ドルと昨年より大幅に減少しています。

<完了したDeSPAC-米国>
画像6 完了したDeSPAC-米国

Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider

4. おわりに

上記のように2022年上半期では、⽶国を中⼼としてSPACに関する取引は⼤きく減少しました。⼀⽅で、欧州やアジアなどでのSPAC上場やDeSPACが少しずつみられるようになってきました。また、東京証券取引所においても⽇本でのSPACに関する議論がされています。

今後のSPACに関する量的な盛り上がりは不明ですが、クロスボーダー上場を含めた上場のひとつの形態として定着する可能性があることを考えると、その動向には引き続き留意する必要があると思われます。

【お問い合わせ】

EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター シニアマネージャー
山本 竜大
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サマリー

地政学的リスクや米国の金融引き締め等による世界的なIPOの市況悪化の影響を受け、世界的に見て2022年上半期のSPAC、DeSPACはともに大幅に減少。特に米国での減少が顕著です。

一方で、IPOの一形態としては定着する可能性はあり、その動向については引き続き注目すべきです。

この記事について

執筆者 善方 正義

EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター 副センター長 パートナー

明るく、元気に、前向きに、プロフェショナルとして社会の発展に貢献。

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