6 分 2021年10月28日

            自宅の庭でノートパソコンに向かい、仕事をする女性

将来の課題に向けて進められている監査業務の変革とは

執筆者 Dilek Çilingir Kostem

EY Global Assurance Talent Leader

Senior Assurance leader with more than 25 years of experience in Assurance and Consulting services. Passionate about diversity and inclusiveness.

EY Japanの窓口

EY Japan リージョナル・タレント・リーダー

どんな業務でも絶え間なく高い品質を探求。イノベーションは人から生まれる。

6 分 2021年10月28日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により新たな勤務モデルが生まれたことで、柔軟性、テクノロジー、多様性を取り入れた監査業務への移行が加速しています。

要点
  • 監査法人は、個人、監査法人、監査先企業のニーズに沿った、より柔軟な勤務モデルに移行する可能性が高い。
  • 事業が複雑さを増すにつれ、監査法人は多面的モデルの一環として、幅広いナレッジリソースへのアクセスが必要となる。
  • 監査チームは今後多様化が進み、専門知識とビジネス知識も高まっていく。
Local Perspective IconEY Japanの視点

EY Japanでは、アシュアランス業務に携わる全てのメンバーに働き方の柔軟性を確保することで、個人や家庭の事情などのライフイベントに左右されない長期的なキャリアを形成できるさまざまな制度の導入を進めています。さらに、将来の監査や非監査業務の変革に向けて、必要となる専門性の多様化を進めるため、テクノロジーを扱う人材に特化した新しい人事制度や育成制度、さらに非財務情報の開示に関連する業務に精通した人材の採用を積極的に進めています。このような職場環境についてのフィードバックはパルスサーベイを通じてメンバーから収集し、さらなる改善につなげています。

 

EY Japanの窓口

大内田 敬
EY Japan リージョナル・タレント・リーダー

監査のプロフェッショナルの働き方は、先ごろ前例のない速さと規模で変化しました。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、監査法人は新たな業務運営方法への移行を加速させています。パンデミックによる直接的な影響を乗り切った後も、この動きは続くでしょう。

監査法人とその監査先の企業が柔軟性のあるリモートワークに急きょ移行したことで、急速に進化する企業環境に対応するための変革で監査がすでに直面してきた課題に新たな要素が加わりました。企業がデジタルトランスフォーメーションを進める中で、ビジネスモデルは一層複雑化しており、そのため、監査のプロフェッショナルには新たなスキルや知識などが求められるようになっています。新しい働き方は大きなメリットをもたらしますが、同時に、対処すべき課題を突き付けてくることになるでしょう。

デジタル技術とデータ解析はますます監査プロセスと企業のビジネスモデルの中核を占めるようになっており、監査法人は今後、スキルの多様化を図る必要があります。これまではビジネスのバックグラウンドを持つ人材を採用してきましたが、今後はテクノロジーの知識のレベルを上げることが全ての監査人に必要になるでしょう。

また、監査法人はSTEM(科学・技術・工学・数学)分野で優れた専門知識を持ち、監査業務でテクノロジーを有効に活用できる人材を増やす必要もあります。このようなスペシャリストが全員、監査人になるわけではありませんが、一部は間違いなくなるはずです。彼らが加わることで、監査チームの多様性は広がります。

多面的モデル

これからは、監査法人が新しいメンバーに求める人的資質も変わっていくでしょう。これまで重視されてきた誠実な人間性と職業的懐疑心が、今後も監査のプロフェッショナルに不可欠な資質であることは間違いありません。しかし、急速に進展している新たな環境では、より深いビジネス知識、テクノロジーに対する強い好奇心、ディスラプションを取り入れるアジャイルな考え方も求められるようになるでしょう。

このような環境の変化に対処するにあたり、監査法人の主な強みの1つは、多面的モデルにより、ビジネスのあらゆる分野の専門知識に直接アクセスできることです。極めて専門的なヘッジ会計から、バリュエーション、サイバーセキュリティ、不正行為、サステナビリティ、税務、コーポレートファイナンスに関する専門知識に至るまで、幅広い内部のナレッジリソースにアクセスできることは、質の高い監査サービスを提供するにあたり非常に大きな資産となります。

事業が複雑さを増すにつれ、このような幅広い専門知識を活用できる体制を整備することが、今まで以上に重要になるでしょう。

柔軟な働き方

人々の働き方は、驚くほど変化しています。しかし、監査法人は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックへの対応で、いざとなれば業務運営方法の大幅な変更を速やかに行えることを証明しました。

この経験は、大きなメリットをもたらしています。その1つが、柔軟な働き方をする監査人が増えたことです。監査のプロフェッショナルの間でも、柔軟な働き方ができるリモートワークが当たり前になりました。デジタル技術をうまく活用して自宅で仕事をし、リモート環境でお互いにサポートし合いながら業務を効率的に進めています。

柔軟性が高まることによる大きなメリットは他にもあるでしょう。アウトプットや生産性といったパフォーマンスを監査法人がより重視するようになることなどが考えられます。さらに視点を広げると、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う変化が組織文化の変化を加速させ、多様な働き方を受け入れる姿勢を強める一助となるはずです。

その一方で、柔軟な働き方への急速な移行による課題も浮上しており、監査法人はこれに対処しなければなりません。オンラインの「チャット」やバーチャル会議で意見交換する必要があることなどの実際的な問題だけでなく、行動面の問題にも目を向ける必要があります。具体的には、機密性の高い話をリモート環境で行うことの難しさ、新しいメンバーが組織の文化を理解する手助け、部下のコーチング、現地に出向くことを期待する監査先企業への対応などです。

最終的には、監査先企業、監査法人、個人のニーズに沿ったハイブリッド勤務モデルに移行することで、こうした問題への対処を図ることになります。それに伴い、柔軟なリモートワークの割合が著しく大きくなるでしょう。一方、例えば研修の受講、チームビルディング、企業の経営幹部と直接会っての監査証拠の収集と信頼関係の構築などを目的に、チームが集まる時間も増えるはずです。

監査法人は誠実な人間性と職業的懐疑を重視していますが、この2つが今後も不可欠な資質であることは間違いありません。しかし、新しい環境では、より深いビジネス知識、テクノロジーに対する強い好奇心、ディスラプションを取り入れるアジャイルな考え方も監査人に求められるようになるでしょう。

多様性を育む

リモートワークの拡大により、強力な監査チームづくりの重要性は高まる一方です。監査チームに必要なのは、幅広い技術的スキルと人的スキルを持つ人材だけではありません。より多様な経験と視点を取り込むことも求められます。

そのためには、幅広い社会・文化的背景を持つ人材を募集し、採用するとともに、視野を広げるチャンスを採用した人材に提供しなければなりません。例えば、大手グローバル企業の顧客を担当させることで、さまざまな文化に触れることができます。最近ではパンデミックを受けて制限されているとはいえ、ここでは海外との行き来も重要です。EYでは、この行き来をできるだけ早く元の状態に戻したいと考えています。

しかし、これだけで多様性を育むことはできません。同時に、働く人たち全員が帰属意識を持ち、温かく迎え入れられていると感じることができる環境づくりが必要です。全員が成長し、貢献し、付加価値を生み出すことができるようにならなければなりません。

監査チームの多様性が広がるにつれ、組織には当然のことながら特に昇進に関して多様性に合った対応が求められます。そこで必要となるのが、監査のプロフェッショナルのさまざまな興味や希望に対応した、多彩で柔軟性とスピード感のあるキャリアパス制度の構築です。これまでのヒエラルキー型の画一的な昇進システムが全ての人に合うわけではありません。このようなキャリアパスを歩むことを望まない人たちに、別の昇進ルートを用意する必要があります。

昇進に関する評価では、勤続年数ではなく、その人のスキルを重視しなければなりません。例えば、EYではより「アジャイルな昇進(agile promotion)」の導入を進めています。これは、1年の決められた時期ではなく、上の役職に就く実力がついたと判断した時点で、その人を昇進させるシステムです。

急速に変化するビジネス環境で多様な人材が働けるようサポートするには、継続的な研修体制の整備が必要です。新しい働き方と同様、こうした研修にもハイブリッドモデルを採用する必要があるでしょう。パンデミックの間に、EYは研修の完全オンライン化を図りました。しかし、新たな長期的オペレーティングモデルに移行するための一環として、今後はオンライン研修とクラスルーム研修を組み合わせた形式で実施する方針です。

極めて専門的なヘッジ会計から、バリュエーション、サイバーセキュリティ、不正行為、サステナビリティ、税務、コーポレートファイナンスに関する専門知識に至るまで、幅広い内部のナレッジリソースにアクセスできることは、非常に大きな資産となります。事業が複雑さを増すにつれ、このような幅広い専門知識を活用できる体制の整備は、今まで以上に重要になるでしょう。

目的意識

監査人の働き方は変わりつつあります。今後は業務の一部をリモートで行うようになり、監査業務でもデジタルツールやデータの果たす役割がますます大きくなります。

これを心から歓迎する人たちもいる反面、困難にいや応なく直面する人たちもいるでしょう。しかし、この移行をうまくやり遂げることができれば、監査のプロフェッショナルは新しい環境で実力を遺憾なく発揮するでしょう。また、デジタルトランスフォーメーションによって仕事はより有意義なものになり、職業上の目的意識も向上するでしょう。
今の労働環境には、有能で目的意識が高く、公共の利益により貢献できるプロフェッショナルを育成するための絶好のチャンスが広がっているのです。

本稿は執筆者の個人的見解に基づいて書かれたものであり、EYまたはEYのメンバーファームの見解ではありません。

サマリー

パンデミックの間にリモートワークへの移行が進んだことで、監査業務ですでに始まっていたトレンドが加速しました。監査法人に今期待されているのは、監査先企業、監査法人、個人のニーズに沿った、より柔軟性の高い働き方への移行です。新たな環境では、テクノロジーを活用する必要性や、アジャイルな考え方で変化とディスラプションを取り入れ、チームで効果的な業務運営を行う必要性も鮮明となっています。

この記事について

執筆者 Dilek Çilingir Kostem

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Senior Assurance leader with more than 25 years of experience in Assurance and Consulting services. Passionate about diversity and inclusiveness.

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