12 分 2020年5月28日
地下鉄の窓から街を眺める女性

Future Consumer Index:アフターコロナの「不安を抱く消費者」にどう対応するか

執筆者

Kristina Rogers

EY Global Consumer Leader

Global leader for consumer industries. Marketing strategist. Worked in 20 countries. Harvard MBA. Photographer. Scuba diver. Canadian fiction reader. Mother of two.

Andrew Cosgrove

EY Global Consumer Knowledge Leader & Lead Analyst

Consumer futurist. Strategist with global FMCG experience. Storyteller. Photographer. Father.

12 分 2020年5月28日

全世界の消費者の行動と心理についてまとめたEY Future Consumer Index の結果から、ロックダウン(都市封鎖)が解除された後も人々は強い警戒感を緩めていないことが分かりました。

 EY Japanの視点

EYでは、日本市場を含む13カ国を対象に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して変化する消費者行動の指標(Future Consumer Index)に基づいた調査を実施しました。
本記事では、COVID-19の収束段階を踏まえた先行指標として、中国の消費者行動について説明しています。
一方、日本市場においては、以下の4つの特徴が明らかになりました。

  1. 日本の消費者は「冷静に行動」が大半で、中国やその他各国(以下、グローバルと記載)と支出傾向が異なる
  2. 商品の在庫や品質を購買基準として重視している
  3. COVID-19収束後は、オンライン購入の意向が高まる
  4. 新たな働き方に前向きであるが、ワークライフバランスを懸念している

企業は、日本市場の特徴を踏まえ、サプライチェーン強化、オンライン販売チャネル再構築、リモートワーク定着化といったデジタルシフトを加速させることが求められます。
詳細につきましては、「新型コロナウイルス感染症により変化する日本の消費者心理に貴社は迅速に対応できますか?」をご参照ください。
この調査は、毎月継続して行っており、次回は日本の「新しい生活様式」についての調査も行う予定です。

EY Japan の窓口

ゲスト編集者

安藤 宏晃

EY Japan Advisory Consumer Products & Retail Sector, Senior Manager

グローバルコラボレーションを大事にする。家族も英国、ロシア、フィリピン在住とグローバルに活動中。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流⾏が続く中、ビジネスリーダーたちは収束後の未来予想図を描こうとしています。徐々に⾃由を取り戻しながら、消費者はロックダウン(都市封鎖)でとってきた⾏動や態度をどのように変化させるのでしょうか。私たちが調査してきたグローバルな動向で最も注⽬すべきなのは、「不安を抱く消費者」の出現です。

新型コロナウイルス感染症が⽣み出しつつある新たな消費者像を把握するため、今回のEY Future Consumer Indexでは範囲を広げ、中国の消費者も対象に含めました。中国は国⺠の⼤部分に外出禁⽌令を出した最初の国であり、こうした⾏動制限措置を最初に緩和した国でもあります。彼らがどのように元の⽇常⽣活に戻りつつあるのか。⾃由を取り戻す中で世界の消費者がどのように変化するかについて、そこから私たちは何を学ぶことができるのでしょうか。

もちろん、中国は経済も政治も独⾃の体制を構築し、ほかのどの国とも異なっているため、他国との⽐較は慎重に⾏う必要があります。また、どの国も感染拡⼤の第2波、第3波の危険があり、⼤不況に陥り、景気回復が不透明になる可能性があります。それはそれとして、中国で⾒られる新たな消費者の態度や⾏動には、他国の企業にとって有益な指標となるものがあると私たちは考えています。

誰もが抱くこの警戒感は消えないのか

ロックダウンを受けて、パンデミックにより⾃分たちの⽣活様式が今後どのように変わるのか世界中の⼈々が不安を抱いているのが現状です。ロックダウンが解除された中国の状況を詳しく調べれば、他国で⾏動制限措置が解除または緩和される中で、広く浸透した警戒感がどのように根強く残るか、あるいは変化するかについて、ある程度イメージをつかむことができます。

今回のIndexの結果から、中国では消費者が「普通の⽣活」に戻ることができている⼀⽅、⽣活が完全に元通りになることに多くの⼈が強い不安感を拭えずにいる様⼦がうかがえました。このような傾向が他国でも今後顕著に⾒られるとしたら、不安と警戒感を抱く消費者が格段に増えることになり、世界各地の企業は、そのニーズを満たすことができるよう対応していかなければなりません。今後は、リスクを念頭に、何を買い、どのように時間を使うかを決める社会になるのです。

 

ロックダウンが終わっても 危機を脱したわけではない

Indexの結果を⾒ると、他国と⽐べて、中国では消費者が⼀部社会⽣活について楽観視していることが分かります。今後12カ⽉以内に景気が回復するとの⾒⽅を⽰す⼈が2倍、先⾏きへの信頼感を⽰す⼈も2倍近くに上りました。

中国のロックダウンは、パンデミックの第2波、第3波が来れば再び発動されることになるとはいえ、概ね解除されました。しかしながら、中国の消費者は危機を脱したとは感じていませ  ん。彼らは強い不安感を拭えず、家族の健康や⽣活を楽しむ⾃由などに今回の危機が与える影響を他国の消費者と同様に懸念しているのです。「感染症により⽣活様式が著しく変わり、それが⻑期的に続く」に「⾮常にそう思う」と回答した⼈は48%、「⾃分の価値観と⼈⽣観が変わった」に「⾮常にそう思う」と回答した⼈は49%でした。

長期間続くことを予想

48%

「新型コロナウイルス感染症により生活様式が著しく変わり、それが長期的に続く」に「非常にそう思う」と回答した中国の消費者の割合

警戒感を抱きながらも、消費意欲はある

第1回 Index 調査では、今回の危機でどのような消費者セグメントが新たに生まれているかを明らかにしました。そのうち4つのセグメントは、パンデミックの初期段階に消費者がどのように変化しているかを示すものです。残りの5つのセグメントでは、今回の危機が収束したと感じたら、どのような行動や態度をとるかという質問への回答により、消費者を分類しました。今回のIndexは、消費者セグメントで前回の9つの項目を用いた一方、初めて中国を対象に含めました。

Future Consumer Index:アフターコロナの「不安を抱く消費者」にどう対応するか

図を見ると、中国は「支出を増加」セグメントに属する消費者が非常に多い反面、「大幅に節約」セグメントの消費者が非常に少ないことが分かります。消費者の市場心理がどれくらい早く回復するか、中国をその先行指標としている企業にとって、これは明るい材料と言えるかもしれません。世界で最も長く新型コロナウイルスの脅威にさらされている中国では、消費者が警戒感を抱き続けているものの、少なくとも消費支出は再び増加しています。中国の消費性向にこれがどのように表れるのでしょうか。 全体的に見て、中国では現在、幅広いカテゴリーで消費支出が増えていますが、一部のカテゴリーでは、ほかよりずっと早い回復傾向が見られています。

社会的距離(ソーシャルディスタンス)措置が継続されると仮定して、幅広いカテゴリーの家計支出が今後1カ月でどの程度変化すると思うかについて尋ねました。変化が大きかったのは生鮮食品(支出が増える、または大幅に増えるとの回答が62%)、パーソナルケア用品(同47%)、美容・化粧品(同29%)、衣類・フットウェア(同33%)です。再び外出するようになり、ヘルシーな食生活を送りたいと考え、身だしなみにも気を配っている様子がうかがえます。こうしたニーズに対応した商品を他国で扱うメーカーにとって、これは間違いなく朗報です。

Future Consumer Index:アフターコロナの「不安を抱く消費者」にどう対応するか

今のところ新型コロナウイルスへの感染を防ぐ最良の策は、健康の増進です。どの国の「不安を抱く消費者」にとっても、健康は優先課題となっています。この1カ月で食品が「ヘルシーで体に良い」かどうかがこれまでより重要なポイントになったと答えた消費者は54%でした。これは、59%に上った「入手のしやすさ」に次ぐ第2位です。中国では74%で第1位でした。5年後に買い物をするときに何を最も重視すると思うかとの質問でも、「品質」に次ぐ第2位でした(中国では同じく第1位)。

その先の将来についても、明るい材料があります。中国では「支出をより増加」セグメントと「選択して贅沢」セグメントに属する消費者が非常に多いのに対して、興味深いのは、「正常化」セグメントの消費者が極めて少ない点です。

Future Consumer Index:アフターコロナの「不安を抱く消費者」にどう対応するか

中国の消費者が前向きであり、明るい将来を見据えていることを裏付ける結果となっていますが、彼らの選好と行動が急速に変化しており、元通りの生活に戻るつもりの消費者がほとんどいないことが分かります。

「不安を抱く消費者」は常にリスクを念頭に置いている

ここで重要となるのは、これらのセグメントの新たな行動と心理が定着するかどうかという点です。この危機が去ったら、どのような行動をするかという質問に消費者が大胆な回答をすることはあり得ますが、それはいつになるのでしょうか。 有効なワクチンは見つかるのでしょうか。 いつになったらそのワクチンが大量生産され、必要な人に接種されるようになるのでしょうか。 接種効果はどれくらい続くのでしょうか。 それまでの間、経済と人々の暮らしはどうなるのでしょうか。 その答えはまだ誰にも分かりません。

明確な答えがないため、「常に危機意識を持つ」消費者が増えると私たちは考えています。この世界観の特徴は、現実のリスクと認識したリスク、この両方のリスクに対する感受性の高まりですが、これはFutureConsumer.Nowプログラムでモデル化した、150ある変化のドライバーのうちの1つです。このプログラムでは、テロ攻撃、自然災害、金融危機など個人の力ではどうにもできない事象による動揺が世界的に広がることにより、消費者の行動と対応がどのように変化するかを明らかにします。

人々が危機の中での生活に慣れてくる中、ニューノーマルが生まれつつあります。かつては大きなインパクトをもたらしていた事象が、今では日常の一部のように感じられるようになる。だからといって、気持ちがまひしたわけではありません。逆に、すべてに強い警戒感を抱く消費者が生まれているのです。日々の生活の中でも、旅行やイベントへの参加などを決める際にも、人々は慎重かつ実利を重んじるようになっています。

リスクをより強く意識しながら、今後どのような生活を送るか。Indexの世界全体のデータから、国を問わず消費者の回答で特に多いものがいくつかあることが分かりました。全体の52%が買い物の仕方を変えると回答しています。そのうち70%が買い物に行くときに衛生面を今までより強く意識すると答え、60%が買い物に行く回数を減らして1回の買い物の量を多くすると回答、44%が食料品のインターネットでの購入を増やすとしています。

食料品のインターネットでの購入

44%

食料品のインターネットでの購入を増やすと回答した全世界の消費者の割合

ほかに何を変えると思うかと尋ねたところ、36%が食生活を変えると回答しました。そのうち68%が自炊の回数を増やすとしています。また、外食をするときは、客同士の間隔が広い店を選ぶとした回答者も46%いました。中国におけるロックダウン解除後の消費者のリスクに対する態度を参考にすることで、他国の消費者態度がどのように変わる可能性があるか、そして、企業が存在意義を維持するには何が必要か、その見通しを立てることができます。本レポートで特に紹介したい重要なポイントは2つあります。

重要ポイント1:消費者に安心感を与える

「不安を抱く消費者」に対応するには、彼らが安心感を持てるよう一層の努力が必要です。下の図を見ると、中国は今、一部の活動を再開することへの消費者の不安が対象国の中で最も少ないことが分かりますが、これは当然と言えるでしょう。中国は世界で最も長く新型コロナウイルスの脅威にさらされ、そして最初にロックダウンを解除した国なのです。

それでも、かつて日常生活の一部であった活動の多くを再開することにまだ非常に慎重であることは間違いありません。例えば、映画を見に行くことに抵抗がある、または強い抵抗を感じる人が64%、飲みに行くことに抵抗がある、または強い抵抗を感じる人も61%に上りました。この結果から、パンデミックが消費者態度に深く影響していることがうかがえます。

Future Consumer Index:アフターコロナの「不安を抱く消費者」にどう対応するか
こうした態度を変えることができるのは時間だけなのか

明るい材料が1つあります。中国の消費者が食料品店での買い物に対してそれほど懸念を抱いていない点です。他国の消費者と同様、食品を購入するには、こうした店を訪れなければなりません。すなわち、安全を確保するために店側が買い物体験をどのように変えたかを自分の目で確かめ、そして、これが重要なポイントですが、安心感を得ることができたということです。

人が集う空間に消費者を呼び戻す必要のある企業が学ぶべきポイントが1つあります。消費者体験をどのように作り直せば、リスクが最大限抑えられていると消費者に感じてもらうことができるのでしょうか。調査対象の国は、移動制限がまだ完全に解除されていないところがほとんどです。活動再開をどのように感じるかは、その体験が今後どのようなものになるかではなく、以前どのようなものであったかによって決まります。

危機の初期段階にある地域では、企業が消費者の安全を確保し、安心させるため、重要であるものの基本的な対策を講じてきました。小売店は飛沫防止パネルを設置し、ホテルは新たに定めた衛生管理体制を顧客に電子メールで知らせ、衣料品店は注文をどのように処理し、衛生面に配慮した梱包と配送の徹底を図っているかを告知しています。企業が消費者体験のリスクのより長期的な軽減を目指す今、デジタル能力への投資は極めて重要です。

重要ポイント2:デジタル化を加速

厳重なロックダウンが実施されていた段階では、企業は非常に機敏な動きができることを示しました。例えば、店内の物理的接触・接近を可能な限り減らすという、シンプルでありながら効果的な方法を生み出したのです。しかし、危機が次の段階に移行する中、重要になってくるのはデジタルです。デジタル戦略を速やかに練り直して、アクセルを踏み込むことが企業には求められます。あるクライアントから質問を受けました。「すべてを電子化するには、どうすればよいのか」

デジタル化はすでに進行しており、多くの国ではキャッシュレス社会が確立されつつありました。世界的に見ても、この傾向は今後加速するでしょう。1カ月前と比べても、消費者の62%が現金での支払いが減ったと答えています。その代わりに、コンタクトレス(非接触型)決済の利用が増えた人は59%、スマホアプリでの支払いが増えた人が54%、クレジットカードの利用が増えた人が42%に上りました。

その結果、予想されることは

インターフェース全般としてのスマートフォンの利用が増えると考えられます。例えば、スマートフォンにコード番号を入力して本人確認ができるのであれば、わざわざATMの画面に触れる必要はありません。音声コマンドと顔認証の利用も広がるでしょう。セルフレジの店の人気も高まるはずです。

パーソナルテクノロジーが今まで以上に日々の生活に欠かせなくなり、個人データを共有することへのためらいが薄らぎ、採用を阻むその他の障害が取り除かれるに従い、新たな買い物体験が実現することになるでしょう。日の目を見ることがなかったアイデアが表舞台に登場することもあり得ます。試着せずにぴったりの服を購入できるのであれば、自分の生体認証データを提供することへの消費者の抵抗感が薄れるかもしれません。ハプティクス技術で、物理的接触なしに商品を「感じる」ことも可能になるでしょう。


3つのビジネスチャンス

  1. 顧客の獲得からロイヤルティーの醸成まで、カスタマージャーニー・マップを作成し、デジタル化に伴い実現できなくなる物理的なタッチポイントに取って代わる仕組みを考案できるか。例えば、通常であれば店舗で商品を見てもらうという体験をバーチャルで最も効果的に提供する方法とは

  2. その場所の存在意義を問い直し、デジタル技術を活用して物理的な空間を再び受け入れやすくすることで、「不安を抱く消費者」を衣料品店や酒場など人が集まるリアルな場所に再び呼び込むことができるか。例えば、店舗内の販売イベントをライブストリーミングで配信すれば、店での買い物が楽しく、安全であることを簡単に確認してもらうことができます

  3. 製造現場、サプライチェーン、デリバリープロセス全体の透明性を高めて、「不安を抱く消費者」の懸念を真摯に受け止めていることを知ってもらい、店での買い物に安心感を与えることができるか

「不安を抱く消費者」への対応をめぐる闘い

企業は、新たなタイプの消費者に対応していかなければなりません。こうした消費者の優先順位、態度、行動は、世界規模の人道的危機を乗り越えたという実体験から形作られています。デジタルへの変更を、極めて迅速に進める必要があります。果たして、通常は5年かかるデジタル化のプロセスを6カ月で成し遂げることができるでしょうか。

つまるところ、消費者と向き合う企業はこれまで、企業目的とイノベーションを重視する消費者を中心に据えて事業戦略、製品ポートフォリオ、マーケティング、エンゲージメントを構築してきましたが、「不安を抱く消費者」が重視するポイントはそこではない、ということです。彼らは、価値かコストか、あるいは価値か自己表現かのトレードオフではなく、「買おうとしているものや、体験しようしていることは、リスクを冒すだけの価値があるか」を基準に購入するかどうかを決めます。これは新たな課題です。その一方で、今アクションを起こせば、チャンスに変えることができます。

  • サーベイの方法

    2020年5月4日の週に、米国、カナダ、ブラジル、英国、フランス、ドイツ、インド、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、中国、日本、オーストラリア、ニュージーランドの消費者12,843名を対象に調査を実施しました。アンケートの質問は、現在の行動、心理、意図を網羅しています。

サマリー

パンデミックを経験したことで、世界各地の消費者は当然のことながら慎重になっています。ロックダウンが緩和されたからといって、こうした慎重な傾向がすぐに解消されるわけではないことは中国の状況からみて明らかです。企業は国を問わず、「不安を抱く消費者」に対応していかなければなりません。

この記事について

執筆者

Kristina Rogers

EY Global Consumer Leader

Global leader for consumer industries. Marketing strategist. Worked in 20 countries. Harvard MBA. Photographer. Scuba diver. Canadian fiction reader. Mother of two.

Andrew Cosgrove

EY Global Consumer Knowledge Leader & Lead Analyst

Consumer futurist. Strategist with global FMCG experience. Storyteller. Photographer. Father.