4 分 2021年4月15日

            日が暮れる中、スケートボードでトリックを決める若い男性

2021年第1四半期のIPO:記録を塗り替えた今、IPOを急ぐべき理由とは?

執筆者 Paul Go

Asia-Pacific EY Private Assurance Leader

Leads Chinese and multinational companies in client servicing domain. Heads Hong Kong real estate, hospitality and construction sector audit group.

4 分 2021年4月15日

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世界のIPO市場は2021年度を好調なスタートで切り、記録を塗り替えました。IPO準備会社は、この好機を逃さず行動をとる必要があります。

要点
  • 2021年第1四半期は対前年比で世界のIPOのディール件数が85%、取引金額が271%増加した。
  • 特別買収目的会社(SPAC)の2021年第1四半期のIPOは、2020年通期より活発化した。
  • 2021年第1四半期は過去20年間で最高の実績を記録した。
Local Perspective IconEY Japanの視点

日本では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン供給が始まったものの、緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が引き続き発令されています。このような状況にあっても世界および日本のIPO市場は依然として活況を続けています。世界的な低金利、拡張的金融政策は、株式市場がパンデミック前の水準に回復するのを後押ししています。2021年の株式市場においても、ワクチンの供給と十分な資金流動性により、世界のIPO市場は引き続き健全であり、特に2021年前半に向けて勢いを維持することが期待されています。

しかし、新型コロナウイルス感染症の新たな変異株の発生やワクチン接種の遅れが経済の回復に⽔を差すことが懸念されています。IPO準備に際しては、SPACに代表される規制の変化、東証の市場区分の変更などの潜在的な市場修正と、世界がパンデミックから回復するペースとに対して引き続き警戒する必要があります。

 

EY Japanの視点

齊藤 直人
EY Japan IPOリーダー/EY Startup Innovation共同リーダー EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター長

市場に過剰な流動性が供給される中、世界のIPOのディール件数と取引金額は過去20年間で最高を記録しました。これはSPACのIPOを加える前のデータであり、第1四半期だけで、記録的な年となった2020年通期のディール件数と取引金額を上回ったことになります。

これほど好調であったにもかかわらず、投資家心理は不安定なままです。パンデミックの新たな波が押し寄せることへの不安が経済の回復に水を差し、ワクチン接種の進展が予想より遅く、また機関投資家に提供するレバレッジを銀行が縮小することにより金融システムが混乱に陥る恐れがあることから、市場の調整局面入りが近づいているとの懸念があります。​

適切なストーリーを構築していて、十分な準備が整っている好調なセクターの企業であれば、現在のIPOの好機を逃したくないと考えるはずです。

EYの最新の四半期IPO市場レポートをダウンロードする

2021年第1四半期のEYのIPO市場レポートでは、地域別・国別のデータを含め、より深い分析と洞察を提供しています。

データ(PDF)を確認する(英語のみ)

流動性の高まりによって、2021年第1四半期のIPO市場は過去最高を記録

IPOを成功に導く可能性を最大限に高めるために企業が取るべき対策に関して、より詳細な洞察を参照するにはEYの株式公開の手引き(PDF)(英語のみ)をダウンロードしてください。

  • 全グラフのデータ定義

    本記事と世界のIPO市場動向におけるデータ:2021年第1四半期(2021年1月~3月)と2021年初来(1月~3月)のデータは、2021年3月24日時点で完了しているIPOと3月中(3月31日まで)に取引が開始される予定のIPOをベースとし、2021年3月25日午前9時(英国時間)までのものです。 

    • 上記のレポートやニュースリリースに記載するIPO統計の集計にあたっては事業会社のIPOのみを対象とし、IPOを「企業が新規に上場し、市場に株式を公開すること」と定義しています。
    • 本レポートの対象は、取引初日(証券取引所で取引が開始された日)と取引金額(オーバーアロットメントによる売り出しを含めた調達資金)に関するデータをDealogicとEYのチームが提供しているIPOのみです。
    • 取引初日に基づき、どの四半期のディールとして扱うかを決めています。そのため、延期されたIPO、あるいは公募価格がまだ決められていないIPOは除外されています。店頭(OTC)上場も対象外としています。
    • 信託、ファンド、特別買収目的会社(SPAC)など、事業会社以外のIPOを除外するため、標準産業分類(SIC)の以下のコードに該当する企業は対象から外しています。
      • 6091:信託・保証・管理業務を行う金融事業者
      • 6371:厚生基金、年金基金、それらの事務代行会社(TPA)、その他の金融ビークルなどの資産運用会社
      • 6722:オープンエンド型投資ファンド会社
      • 6726:その他の金融ビークル会社
      • 6732:助成金を交付する基金事業者
      • 6733:信託、財産、代理店勘定を扱う資産運用会社
      • 6799:特別買収目的会社(SPAC)
  • 地域別IPO銘柄パフォーマンスの定義

    • アフリカには、アルジェリア、ボツワナ、エジプト、ガーナ、ケニヤ、マダガスカル、マラウイ、モロッコ、ナミビア、ルワンダ、南アフリカ、タンザニア、チュニジア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエが含まれる。
    • Americas(北・中・南米)には、アルゼンチン、バミューダ、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、エクアドル、ジャマイカ、メキシコ、ペルー、プエルトリコ、米国が含まれる。
    • ASEAN(アセアン)には、ブルネイ、カンボジア、グアム、インドネシア、ラオス、マレーシア、モルディブ、ミャンマー、北マリアナ諸島、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナムが含まれる。
    • Asia-Pacific(アジア・パシフィック)には、上記のASEAN諸国、以下に示す中華圏、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー、パプア・ニューギニアが含まれる。
    • EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)には、アルメニア、オーストリア、バングラデシュ、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、インド、アイルランド、マン島、イタリア、カザフスタン、ルクセンブルク、リトアニア、オランダ、ノルウェー、パキスタン、ポーランド、ポルトガル、ロシア連邦、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、英国のほか、以下に示す中東諸国、上記のアフリカ諸国が含まれる。
    • 中華圏には、中国、香港、マカオ、台湾が含まれる。
    • 中東には、バーレーン、イラン、イスラエル、ヨルダン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、シリア、アラブ首長国連邦、イエメンが含まれる。
  • IPOディールの定義 — 上位証券取引所

    本則市場に加え、必要に応じて新興市場のデータを使用しています。横軸の表記は証券取引所の略称です(正式名称は、以下をご参照ください)。

    Asia-Pacific(アジア・パシフィック)

    • ASX:オーストラリア証券取引所
    • HKEx:香港証券取引所主板(メインボード)および創業板のGEM
    • SSE:上海証券取引所および科創板のSTAR
    • SZSE:深圳証券取引所および創業板のChiNext
    • TSE:東京証券取引所本則市場と新興市場のマザーズおよびジャスダック

    EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)

    • Euronext:ユーロネクスト(アムステルダム、ブリュッセル、リスボン、パリ)および新興市場のAlternext(アムステルダム、ブリュッセル、リスボン、パリ)
    • FSE:Deutsche Börse本則市場および新興市場のScale
    • Indian:インドの国立証券取引所および新興市場の中小企業(SME)板と、ボンベイ証券取引所および新興市場のSME板
    • LSE:ロンドン証券取引所本則市場および新興市場のAIM
    • NASDAQ Nordics:NASDAQ OMX Nordics本則市場および新興市場のFirst North(本拠地:コペンハーゲン、ヘルシンキ、ストックホルム、リガ)
    • OB:オスロ証券取引所のOslo Borsおよび新興市場のOslo Axess

    Americas(北・中・南米)

    • NASDAQ:米国のナスダック証券取引所
    • NYSE:米国のニューヨーク証券取引所
    • B3:サンパウロ証券取引所
  • セクター別のIPOディールとIPO取引金額の定義

    企業の標準産業分類(SIC)コードを使用したトムソン・ロイター社の産業分類に従ってセクターを分類しています。11のセクターがあり、それぞれの産業名と定義は以下の通りです。横軸にセクターが11あります。

    • コンシューマー:「生活必需品」と「消費者向け製品・サービス」のセクターを合わせたものです。農業・畜産、飲食、家庭用品・パーソナル用品、布地・アパレル、たばこ、教育サービス、人材サービス、家具・インテリア、法務サービス、その他の消費者向け製品、プロフェッショナルサービス、旅行サービスなどの産業が含まれる。
    • エネルギー:代替エネルギー源、石油・ガス、その他のエネルギー・電力、石油化学製品、パイプライン、電力、水・廃棄物管理などの産業が含まれる。
    • 金融:資産運用、銀行、証券会社、信用機関、各種金融、政府系企業、保険、その他の金融などの産業が含まれる。
    • ヘルスケア:バイオテクノロジー、医療機器・用品、ヘルスケア事業者・サービス(HMO)、病院、製薬企業などの産業が含まれる。
    • インダストリアル:航空宇宙・防衛、自動車・自動車部品、建築/建設・エンジニアリング、機械、その他の産業、運輸、インフラなどの産業が含まれる。
    • マテリアル:化学、建設資材、容器・包装、金属・鉱業、その他の素材、紙・森林製品などの産業が含まれる。
    • メディア・エンタメ:広告・マーケティング、放送、ケーブルテレビ、カジノ・賭博、ホテル・宿泊、映画・AV、その他のメディア・エンターテインメント、出版、レクリエーション・レジャーなどの産業が含まれる。
    • 不動産:非住居用および住居用のその他の不動産、不動産管理・開発などの産業が含まれる。
    • 小売:アパレル、自動車、コンピューター・電子機器の小売、ディスカウントショップ・百貨店での小売、飲食、住宅リフォーム、通販(オンラインとカタログ)、その他の小売などの産業が含まれる。
    • テクノロジー:コンピューター・周辺機器、電子機器、インターネットソフトウエア・サービス、ITコンサルティング・サービス、その他のハイテクノロジー、半導体、ソフトウエアなどの産業が含まれる。
    • テレコム:その他のテレコム、宇宙・人工衛星、電気通信設備、電気通信サービス、無線などの産業が含まれる。

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サマリー

世界のIPOのディール件数と取引金額は2021年第1四半期、過去20年間で最高を記録しました。流動性の高まりが、市場を活性化させています。IPO準備会社は、この好機を逃さず市場へのアクセスを検討する必要があります。

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執筆者 Paul Go

Asia-Pacific EY Private Assurance Leader

Leads Chinese and multinational companies in client servicing domain. Heads Hong Kong real estate, hospitality and construction sector audit group.

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