ライツホルダーの視点を取り入れた取り組みの必要性
機関投資家が登壇したセッションでは、ESG投資における環境や人権への影響の考慮がチェックリスト的な対応にとどまらないよう、ライツ・ベース・アプローチ(権利に基づくアプローチ)の投資行動の必要性がフォーカスされました。英国年金基金フォーラム(LAPFF)の議長を務めるダグ・マクマルド氏は、ブラジルの資源大手Vale社の鉱山ダム決壊事故により影響を受けたコミュニティを訪問した時の経験を踏まえ1、投資家として、救済を必要としている人々の声を直接聞き、期限を設けて投資先企業に行動を促すことを通じて説明責任を果たすことを強調しました。
非司法的な救済の仕組みを開発・運用する上で、ライツホルダーの視点が必要不可欠なことも強調されました。労働者主導型の苦情処理メカニズムとして、米国のCIW (Coalition of Immokalee Workers)によるフェア・フード・プログラム(FFP)のケースを例に、農業従事者がFFPモデルの発展にどのように貢献したかが紹介されました。先進的と評価されているこうした取り組みは、ライツホルダーと丁寧なコミュニケーションを行いながら進めるWSR(Worker-driven Social Responsibility)、すなわち労働者主導型の社会的責任という考え方が提唱される中、企業が、実効的な人権救済の仕組みの構築を進める際に参考にできる事例のひとつと言えるでしょう。