EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
ナレッジセンター 公認会計士 井澤依子
(1) 要点
わが国の現状 |
IAS18の取り扱い |
IAS18に照らした考察 |
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※企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」(平成19年12月27日 ASBJ公表)
(2) 事例
【機械の販売契約と保守サービス契約との複合契約に係る会計処理(ケース9)】
標準型の機械の販売契約と、保守サービス契約(役務提供契約)とを一体で契約するが、顧客との間で機械の販売代金と保守サービス料の内訳は明らかにされていないことがある。
このような取引において、機械の販売代金と保守サービス料との金額を合理的に区分または配分できる場合には、それらの区分または配分金額を基礎に契約上の引渡条件に従って、機械の販売については納入時点で、保守サービスについてはその履行に応じてそれぞれ収益を認識している場合がある。
(会計上の論点)
会計処理の考え方 |
IAS18に照らした考察 |
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この事例では、機械と保守サービス契約はそれぞれ単独で顧客にとって価値を有していると考えられるため、それぞれ区分して会計処理するのが妥当であると考えられる。 |
本事例では、機械の販売契約と保守サービス契約とが個別に識別可能な構成要素であり、かつ、それぞれの公正価値を信頼性をもって測定できる場合には、会計処理の単位を機械の販売契約と保守サービス契約とに区分して、物品の販売および役務の提供の収益認識規準がそれぞれ適用されることになる。 |
【ポイント引当金に係る会計処理(ケース11)】
小売業の中には、売上金額が一定額以上の顧客に対して永久ポイントを付与し、顧客はそのポイントを商品と交換することができるというポイント制度を採用している場合がある。
わが国では、ポイントと交換される商品または役務に対応するコストを販売費および一般管理費として見積もり、負債計上している実務が多いと考えられる。
(会計上の論点)
会計処理の考え方 |
IFRIC13(※)に照らした考察 |
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このような制度に関する会計処理の考え方としては、以下の二つが考えられる。 |
①当初売上時の会計処理 |
※ IFRIC13
カスタマー・ロイヤルティー・プログラムの会計処理を定めた解釈指針。
カスタマー・ロイヤルティー・プログラムとは、顧客が商品または役務を購入した場合に企業は売上取引の一環として顧客に対して一定のポイントを付与し、顧客が一定の条件を満たすことを条件にそのポイントと交換に商品または役務を無料または割引額で購入できるようにすることにより、企業が自社の商品または役務を購入するよう顧客に対してインセンティブを与えるために利用するプログラムのこと。
(1) 要点
わが国の現状 |
IAS18の取り扱い |
IAS18に照らした考察 |
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(2) 事例
【返品の可能性がある取引形態の場合の会計処理(ケース17)】
音楽用ソフト等の制作販売を行うレコード会社等は、音楽用ソフト等をレコード販売店等に販売するが、後日、レコード販売店等から音楽用ソフト等の返品を当初の販売価格で受け入れる慣行がある。予想される返品の額は過去の実績等から合理的に見積もることができる。
このような取引において、販売当初の時点ですべての音楽用ソフト等について売上計上し、将来の返品に対応する売上総利益相当額を返品調整引当金として計上している実務が多い。
(会計上の論点)
会計処理の考え方 |
IAS18に照らした考察 |
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返品の金額を合理的に見積もることができる場合には、予想される返品を除き、財貨の移転が完了しており、対価の成立要件を満たしていることから、返品に係る引当金を計上することを条件に、販売当初時点で予想される返品の額を控除した額で収益を認識することは適切と考えられる(予想される返品に相当する額については、財貨が事実上買手に移転していないため、その返品に伴う損失相当額を返品調整引当金として負債計上したとしても収益を認識することはできない)。 |
過去の実績等を勘案して将来の返品を合理的に見積もることができる場合には、将来の返品を除き、所有に伴うリスクは買手へ実質的に移転していると考えられるため、返品に係る負債を計上することを条件に、販売当初時点で将来の返品の額を控除した金額で収益を認識することが適切であると考えられる。 |
【直送取引(ケース28)】
企業は、顧客からの注文に基づき、継続的に一般消費財等の量産品をメーカーである仕入先から顧客へ直送する取引を担っている。
このような取引において、仕入先の出荷日で収益を認識している場合と、顧客への引渡日で収益を認識している場合がある。
会計上の論点)
会計処理の考え方 |
IAS18に照らした考察 |
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わが国の実現主義の考え方に照らすと、直送取引の場合にも、企業自らが商品を出荷する場合と同様、顧客に商品が引き渡された時点で収益認識要件の一つと解される「財貨の移転の完了」要件を満たすと考えられ、また、直送という取次ぎ業務の「役務の提供の完了」要件が満たされる時点も顧客への商品の引渡時点であると考えられる。このため、収益は、顧客への商品の引渡時点で認識することが適切と考えられる。 |
IAS18では、直送取引における収益認識について、第三者から顧客に直接配送される場合には、収益は、買手に物品が引き渡された時に認識されるとしている。 |
(1) 要点
わが国の現状 |
IAS18の取り扱い |
IAS18に照らした考察 |
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※「役務の提供の完了」要件をより厳格に解釈すると、受領した対価に対応する役務の内容・条件の識別が必ずしも十分ではない場合もあると考えられ、その場合にはIAS18と相違が生ずるものと考えられる。
(2) 事例
【人材紹介コンサルティング業務(ケース45)】
人材紹介コンサルティング会社においては、契約書上、報酬がA顧客企業と自社で人材紹介サービス提供契約を締結した時点、B候補者の顧客企業への紹介時点、C候補者の顧客企業への内定時点の三つの段階において支払われるものとされている場合がある。
このような取引において、Cが完了した時点ですべての収益を認識している場合と、AからCの各段階において対応するそれぞれの報酬を収益として認識している場合がある。
(会計上の論点)
会計処理の考え方 |
IAS18に照らした考察 |
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すべての役務の提供が完了した時点で収益を一括して計上する処理は、あくまでも契約上のすべての義務の履行が完了するまで当該契約に係る役務の提供が終了していないとの考え方に基づくものと考えられる。 |
まず、上記の一連の役務を識別可能なより小さな構成部分として区分し、それぞれ別個の会計処理の単位として扱うべきかどうかを検討する必要がある。各段階において提供する役務が顧客企業にとって単独で価値があり、かつ、契約総額を客観的な基準(例えば、公正価値の比率等)で各段階の役務に配分することが可能であれば、区分して会計処理を行うことになると考えられる。 |
(1) 要点
わが国の現状 |
IAS18の取り扱い |
IAS18に照らした考察 |
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※受取ロイヤルティーの収益認識に当たっては、特に権利義務関係を勘案して「財貨の移転又は役務の提供の完了」要件に照らして判断することになる。当該要件をより厳格に解釈すると、受領した対価に対応する契約の内容・条件の識別が必ずしも十分ではない場合もあると考えられ、その場合にはIAS18と相違が生ずるものと考えられる。
(2) 事例
【前受使用許諾料およびロイヤルティー ①返還不要の使用許諾料またはロイヤルティーが入金されたが、重要な履行義務を負っている場合(その1)(ケース65)】
ライセンス契約に基づき、レコード原盤、映画フィルムなどの作品完成前に使用許諾者(売手)は使用許諾を受ける者から返還不要の使用許諾料またはロイヤルティー(固定額)を前受けすることがある。権利許諾者は、その権利許諾時点において、ライセンスの前提となる作品を完成させる重要な義務が存在する。なお、権利許諾者は作品を完成させ、使用権取得者にマスターを引き渡す以外には重要な履行義務は存在しない。
このような取引において、使用許諾料またはロイヤルティーの入金時に収益を認識している場合と、重要な義務を履行した時点で収益を認識している場合がある。
(会計上の論点)
会計処理の考え方 |
IAS18に照らした考察 |
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使用許諾者は、作品を完成させるなどの重要な義務を履行するまではわが国の実現主義の下での収益認識要件の一つと解される「財貨又は役務の移転の完了」要件を満たしていないため、入金時に収益を認識することは適切ではないと考えられる。 |
IAS18では、使用許諾を受けた者がその権利を自由に活用できること、および使用許諾者において履行すべき義務が残存していないことを条件として収益の認識時点を判断されるものとしている。従って、権利許諾者が重要な履行義務を負っている場合、仮に返還不要の全額の入金があったとしても収益は認識されないものと考えられる。 |
「顧客との契約から生じる収益に関する論点の整理」及び「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)」について