18 分 2022年7月1日
現代の自動化された自動車生産工場

自動車サプライヤーがEVテクノロジーのディスラプションを乗り切る4つのステップ

執筆者
Brad Hehl

Partner, Strategy and Transactions, Ernst & Young LLP

Strategic advisor for the automotive and mobility industries. Focused on developing high-performing teams. Avid golfer. Family man.

Joern Buss

EY-Parthenon Partner, Advanced Manufacturing and Mobility, Ernst & Young LLP

International experienced executive advisor. Focused on strategic growth, product technology, transformation, turnaround. Supports manufacturing and mobility companies, private equity and investors.

Abhi Ahuja

EY US Supply Chain and Transactions Senior Manager

Experienced M&A and value creation advisor. Focus on CP&R and Diversified Industrials. Proud father of two girls. Automobile enthusiast. Traveler. Foodie.

Constantin Gall

Managing Partner, Transaction Advisory Services, Ernst & Young GmbH

Over 13 years of experience in TAS. Trusted advisor. Transformation enthusiast. A passionate driver who likes traveling.

Kevin Rebbereh

Director, Automotive Strategy, EY-Parthenon GmbH

Tech and auto enthusiast. Builds new concepts, promotes innovation and develops best practices. Endurance athlete and family man. Sees entrepreneurialism as a team sport.

EY Japanの窓口

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジー・アンド・トランザクション EYパルテノン パートナー

25年以上に及ぶ企業幹部の経験を持つベテラン戦略コンサルタント。大の赤ワイン好き。ゴルフ愛好家。

18 分 2022年7月1日

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  • 自動車サプライヤーがEVテクノロジーのディスラプションを乗り切る4つのステップ

資本配分と事業構造について今意思決定することは、変⾰のさなかにある⾃動⾞サプライヤーの成功に必要不可⽋です。

要点
  • EVへの移行は予想よりもはるかに速く進んでおり、多くの自動車サプライヤーが対応に苦慮している。
  • 自動車サプライヤーがEVへの移行に備えるには、資本配分についての適切な判断と迅速に意思決定できる組織体制が必要である。
  • EYは、独自の戦略的オプションフレームワークを通じて、企業の製品ポートフォリオ再構成と株主総利回りの向上を支援している。

持続可能なエネルギーソリューションの開発に対する世界的なコミットメントと、脱炭素化を求める顧客の声に後押しされ、自動車産業の構造変化は、予想よりも速いペースで進んでいます。⽶国は、2030年までに国内で販売される⾃動⾞の半分を二次電池式電気自動車、燃料電池自動⾞またはプラグインハイブリッド⾞にするという⽬標を設定しています1。また、世界の他の地域でも、完成⾞メーカー(OEM)の製品や政府の法令、消費者に対するインセンティブ施策が実施されていることからも明らかなように、電気⾃動⾞(EV)への移⾏が進んでいます。一部のOEMは、2021年に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において新たな目標に合意しました2

より安全かつより「グリーン」なコネクテッドカーや⾃動運転⾞は、そこに使⽤されるソフトウエアの価値が重要視されているため、⾃動⾞の電気・電⼦(E/E)アーキテクチャにおける明確な戦略が必要です。しかし、従来のハードウエアコンポーネントは、既に一部は時代遅れになっており、その他⼤部分も陳腐化の危機にさらされています。

EYの調査担当者は先般、世界各地の⾃動⾞サプライヤーの経営層⼗数⼈にインタビューを⾏い、業界の変化について意見を交換しました。インタビューを受けた経営層の⼤部分が、企業は今変⾰を計画し始めなければならない、さもなければ、将来、競合他社に後れを取るであろうと考えていました。

ある欧州の多⾓的⾃動⾞部品サプライヤーのCEOは、EYの調査担当者による最近のインタビューで述べています。「自動車の電動化への列⾞はすでに発⾞したのです。そのスピードはあまりに速く、今同乗していない企業が今から⾶び乗ることは、ほぼ不可能です」3

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EVへの移行は自動車サプライヤーにとって新たなチャンスだが慎重な計画が必要

業界の変化は、⾃動⾞サプライヤーに事業の再構築とビジネスモデルの現代化につながる絶好の機会をもたらします。

例えば、EVへの移行により、利益プールは従来の内燃機関(ICE)部品からeドライブのモジュールやシステムに移行します。一般的なICE駆動系の可動部品数が約2,000個であるのに対し、EVは通常20個程度であることからも、この点は自明です4このため、⼀部のサプライヤーは利益を実現したり、この付加価値を活⽤したりするために、システム変更やアップグレードに投資する必要があります。

大衆向け小型車を電動化し、新しいコンポーネント、モジュールまたはシステムを開発したり、技術的に必要とされる変更やアップグレードを⾏ったりすることで得られる付加価値の大きさは、損失を2倍以上上回ることでしょう。EYの調査分析によると、主としてバッテリーコストの⼤幅な低減により、2030年までにこの付加価値の増加の約40%が補填される可能性があります5

留意すべき重要なポイントは、⾃動⾞の⼼臓部はもはやエンジンではなくなり、さまざまなソフトウエアアプリケーションが駆動する中央処理装置が取って替わりそうなことです。⾞両の⾃動運転化により、使用されるソフトウエアの価値は約5〜6倍になるでしょう。さらに、EYの調査分析によると、⾞両アーキテクチャに対するこれらのディスラプティブな(既存の枠組みや技術を破壊するような)変化こそが、2030年までのソフトウエアの価値と利益プールの変化を生み出す可能性が⾼いことが示唆されています6。よって、OEMとサプライヤーの両者が、現実的な複数の異なった将来シナリオを評価し、その結果に基づいて全体的なビジネスモデルを⾒直す必要があります。

将来の予測は非常に複雑です。それは、直接関連する変化の原動力(ドライバー)が多種多様であり、また地域によっても異なる上に、しばしば相互に作用しながら加速あるいは減速するためです。EYは、テクノロジーディスラプションに関する複数の将来シナリオを策定しました。

ディスラプティブなテクノロジートレンドの影響を受ける将来の車両アーキテクチャ

2030年に向けての⾼度なテクノロジーの前提

EYが想定するシナリオの中で、実現の可能性が⾼いと考えられるものの1つは、世界経済の⽐較的堅調な成⻑です。例えば、国内総⽣産(GDP)の伸びは⽐較的安定しており、地域レベルでの差はあるものの都市化と⼈⼝増加の傾向が継続している、などです。

この予測シナリオでは、より多くの政府が、特に先進国および中国において、⾞両の脱炭素化政策を導⼊すると考えられることから、EVの普及がより進むことになるでしょう。また、顧客も、より環境に配慮した、バッテリーコストと総所有コストの双⽅の削減を兼ね備えたEVの普及を促す要因となりそうです。なお、これらの前提は、現⾏のEV関連の補助⾦や政府のプログラムに基づくものであり、中⽌または変更される可能性があります。

追加機能として、より高い顧客価値とマネタイズの機会とを備えた、コネクテッドカーが市場に投入されると予想されますが、これは、⾼度な分析機能や関連するデータシミュレーションを⾏うために必要とされる基本データの共有に顧客が協力的であることに加え、OEMがサードパーティベンダーとのパートナーシップを組むことの重要性を認識することが前提です。

⾃動運転⾞はニッチ製品であり続け、主に選択的・限定的な領域においてのみ開発が進み、⾼度に⾃動化された条件付きの機能に限定されることでしょう。地域差は依然⼤きいままと思われます。また、シェアードモビリティについては、世界で勢いが継続すると考えられています。コンセプトが異なるサービス(配⾞サービスとカーシェアリングなど)がどれだけ浸透するかは、地域によって異なります。しかし、それらのサービスの⼈気が⾼まる⼀⽅で、依然として消費者の新⾞購⼊意欲は高いままで影響はさほど⼤きくありません。既存のプラットフォームをベースにしたパーパス・ビルト・ビークル(PBV︓Purpose Built Vehicle、目的地まで自動運転機能を搭載した電気自動車)は、2030年にかけて重要性を増していくでしょう。

主な車両システム別利益プール予測(2021~2030年、軽車両セグメント)

現在の利益の約25%は、2030年までに最も不利に転じると予想されるICEのレガシー資産から⽣み出されており、その頃には現在の⽔準から50%減少するでしょう。ディスラプションを乗り切るには、現地当局によるOEMおよび自動車サプライヤーに有利な政策変更を伴った、良く練られ調整された、機敏な戦略的対応が必要となるでしょう。

OEMとサプライヤー双⽅は、将来の車両アーキテクチャに及ぶ重⼤な影響を理解しており、新たな成⻑領域に既に多額の投資を⾏っています。⼀部のプレーヤーはすでにICE関連のポートフォリオを合理化し始めていますが、それらを分割し、現在個別に事業を管理しているプレーヤーもいます。キャプティブキャパシティへの投資、買収、スピンオフ、合弁事業(JV)など、さまざまな資本配分の選択肢が生まれています。例えば、次のようなものがあります。

  • ある欧州のサプライヤーは水素貯蔵システムメーカーへの投資を実施しました。バッテリーメーカーを買収したサプライヤーもありますし、あるグローバルプレーヤーは今後4年間で燃料電池技術に10億ユーロ超を投資する予定です。
  • ある世界的な1次(Tier1)サプライヤーは、最近、トラックやトレーラー向けの先進運転支援システムの専門企業を買収しました。
  • ⽶国では、ある⼤⼿⾃動⾞サプライヤーがターボチャージャー部⾨をスピンオフする⼀⽅で、他の同業企業はエレクトロニクスに重点を置く事業体とパワートレインソリューションに重点を置く事業体とに企業を分割しました。さらに、ある欧州の同業企業はパワートレイン事業を分社化し、現在、新規株式公開(IPO)を計画しています。

企業が戦略的進化を促進するための4つのステップ

ICE⾞のピーク時の販売量は過去のものかもしれませんが、ビジネスモデル、組織および業務が適切に設計されていれば、引き続き従来の価値の源泉から⻑期的価値を⽣み出すことが可能です。

サプライヤーはバランスを取りながらICE車専用のコンポーネントとシステムを管理し、一方で、新しいEV関連コンポーネントや、ソフトウエアなどのさまざまな新しい主要テクノロジーへの投資を増やす必要があります。タイミングと積極性が成功を左右するでしょう。企業は、次のような方法でその取り組みを開始できます。

  • 戦略目標の全体像の定義
  • 将来のビジネスおよび製品ポートフォリオの決定
  • ターゲット・オペレーティング・モデルの定義
  • 戦略的オプションの実行

ステップ1:戦略目標の全体像の定義

多様なポートフォリオ要件を効果的に満たし、その後「新しい」ビジネスとレガシー事業や衰退しつつある事業の双⽅のための解決策を⾒いだすには、1つの戦略のみを採⽤するか、並列的に進められる複数の戦略を採⽤するかを評価することが重要です。明確な⽬標の全体像を得るには、以下の2つの視点から、包括的で先⼊観のない(聖域のない)評価が必要です。

  • 外的要素 — 自動車セクターとセグメントの成長トレンド、その変動性、市場の魅力、競争および新しいテクノロジーに対する期待
  • 内部要素 — 目標を達成するための労働力、ノウハウ、リソースの可用性および財務安定性の面で、組織がどの程度フレキシブルで能力があるか

ステップ2:将来のビジネスおよび製品ポートフォリオの決定

戦略的な道筋が明確になったら、将来の組織に対する選択肢の範囲と関連する実現可能性を、より詳細なレベルで定義する必要があります。個々の製品、ビジネスユニットおよび企業全体の評価から導かれる次のような質問を、複数のレベルで検討する必要があります。

  • どこで活動するか?
  • どのように活動するか?
  • どの程度の期間活動するか?
  • 誰とパートナーを組むべきか?

最適な将来の事業ポートフォリオを決定するには、現在のビジネスとの関連性、実行の複雑性、将来の成功に対する正当性、および参入または撤退に対する潜在的な障壁によって、新しいセグメントを特定し、評価する必要があります。オフハイウェイ車(OHV、舗装されていない道路を走行することのできる車両)、乗用車、トラックなど、エコシステムのどの顧客セグメントに焦点を当てるべきかを決定し、地域戦略を公共部門と民間部門の投資に整合させることが重要です。ポートフォリオを適切に構築するには、既存の製品・サービスを合理化することも不可欠です。対象となる衰退しつつあるビジネス、および将来のコア機能とノンコア機能を識別することで、より良い投資手段に資本を割り当てることが可能になります。このプロセスでは、シナリオ策定とロードマップの反復的な改善が重要な役割を果たします。

ステップ3:ターゲット・オペレーティング・モデルの定義

主な重点領域を決定したら、ターゲット・オペレーティング・モデル(TOM)の設計を⾏います。優先すべきなのは、機敏に対応し、急速に進化する⾃動⾞セクターで成功を収めるために、最⼤限の組織のフレキシビリティを確保することです。そのためには、現在の組織における単独のオペレーティングモデルだけでは不⼗分な場合があります。代わりに、例えば今後伸びてゆく領域と衰退しつつある領域の状況など、多様な要件を持つビジネスセグメントに合わせた調整が有効と考えられます。

企業がさまざまな戦略的オプションを評価する際に、道筋を設定し、視野にある不良資産やレガシー資産を特定することで、注⼒すべき分野が浮き彫りになり、事業上の次に着⼿すべき必須事項が明確になります。不良資産と将来の成⻑投資を並⾏して効果的に管理するため、戦略的ビジネスグループの設置が実⾏可能な戦略として注⽬されています。戦略的ビジネスグループとは、単体もしくは複数のビジネスユニットから成る、専従のリーダーシップチームを擁する疑似的なカーブアウトのことで、従来の複雑な企業構造に⽐べ、はるかに容易かつ迅速に変⾰を進めることができます。戦略的ビジネスグループを設置することで、組織は市場機会に対応する柔軟性を⾼め、成⻑への取り組みを促進することが可能になります。また、組織に対し、より良い運営、資本配分およびリスク回避能力を提供すると同時に、独⽴性を保持することで、実⾏責任(responsibility)と説明責任(accountability)を効果的に適合させることができます。

完全なカーブアウトとは対照的に、既存のサポート機能構造に戻ることができるので、単独ユニットでの⾼い追加コストを回避することが可能です。しかし注意すべき点として、多くの場合、企業とそのTOMを⾃由に構成することはできません。想定される構成には、コアビジネスの複雑性など、固有の阻害要因があるかもしれません。関連するコストと共に、業務の複雑性も増⼤する可能性も高いため、潜在的なチャンスがある場合にのみ実施する価値があります。戦略的ビジネスグループは、フレキシビリティがある程度必要な、戦略的に重要なユニットに対してのみ構築されるべきことに留意が必要です。

戦略的ビジネスグループは、その所有権構造と政府の⽀援により運⽤上のフレキシビリティが増すため、欧州では⼀般的な⼿法です。対照的に、資本市場や上場企業の株主の影響を⼤きく受ける⽶国企業では、スピンオフを選択する傾向にあります。

最終的には、通常は組織の設計とリソースを割り当てることで、ビジョンがカルチャーとして組織全体に浸透するようにさせ、実⾏オプションを念頭に置きながら想定される戦略を実現させる必要があります。パートナーシップを組むために設⽴される企業は、成⻑戦略を⾃社で策定される予定の企業や、アセットライトでの設⽴を想定している企業とは異なる⽅法で設計されます。戦略的ビジネスグループは、最⼤限のフレキシビリティが伴い、より迅速に変化に対応できるため、これらの問題をある程度は緩和します。

ステップ4:戦略的オプションの実行

レガシー製品のポートフォリオであれ潜在的な新規事業セグメントであれ、将来の戦略的施策にはさまざまな形態があり、固有の障壁に直⾯する可能性があります。将来のロードマップは、以下の点に左右されます。

  • 組織がTOMを実現するために必要な、抜本的なビジョンの定義と変化の管理
  • レガシービジネスモデルと組織の「フレキシビリティ」および適応能⼒
  • 将来の成⻑施策に向けた資本の再配分を⾏うに当たっての適切な投資意思決定
  • 想定される戦略に向けてコスト効率よく資⾦提供する好機の到来
  • 従業員の新しい能⼒開発と、TOMをサポート・推進できる⼈材を育成するための再教育
  • 強固なサプライチェーンを維持する能⼒
  • 特定の市場または製品セグメント内、またはレガシー製品および事業領域の予想される衰退サイクルでの成⻑

戦略的オプションを評価するEYのフレームワーク

EYは、レガシーポートフォリオ、新たな収益機会、関連する資本配分の選択など、戦略的施策を評価する独自のフレームワークを開発しました。

EYのフレームワークは、望ましい変化を加速させるセグメントの成長に対する戦略的施策を評価します。

経営層が将来の製品ポートフォリオについて決定を下す際は、短期的な利益、株主と債権者の期待と、収益性の⾼い⻑期的な成⻑⽬標とのバランスをとることが重要です。

検討すべき戦略的オプション

検討すべき10の戦略的オプションは以下のとおりです:

1. ダイベストメント(事業売却)

事業の⼀部(製造施設、流通ネットワーク、事業全体、ビジネスユニットなど)を売却すること(ダイベストメント)により、イノベーション施策への投資に必要な資金を調達できます。大胆ではありますが、将来のイノベーションに向けた資⾦が限定的であり、対象がノンコア機能である場合には、ダイベストメントが極めて重要となることがあります。また、EVの普及後は、コアなICE技術をもつビジネスユニットに相当の市場価値を⽀払う買い⼿を⾒つけることが困難になることもあるため、⼗分な市場価値がある間にビジネスをマネタイズすることも重要です。ダイベストメントの相⼿⽅は事業強化・拡大目的の買い⼿の場合も投資目的の買い⼿の場合もありますが、移⾏期間中のサービス提供および製造契約の期間への影響を考慮し、双⽅の選択肢を慎重に評価する必要があります。

2. 撤退

陳腐化の危機にさらされているセグメント、特にICEに関連するセグメントの場合、現行サプライヤーのいずれかが最後のプレーヤーとなる可能性があります。そのためには、前述のように、⻑期的な合理化に向けた独⾃の戦略と、関連事業の縮⼩プロセスの先⾒性を伴った実⾏が必要です。とはいえ、硬直的な人員配置や新しい働き⽅の採⽤といった内部的要因により、従業員の⼠気に影響する可能性もあります。今後寡占化が進む市場におけるコスト⾯での優位性と強⼒な市場ポジショニングは、基礎的ながら最も優れた戦略となり得ます。総合的な中での焦点は、製品そのもののイノベーションからプロセスへ、あるいは効率の向上からサプライチェーンの確保へと移⾏しますが、⼀⽅で、迅速な⽣産量のスマート製造のバンドル管理に基づいて⽣産能⼒を継続的に管理する必要があります。これらはすべて、座礁資産(製造資産)の効果的な出⼝戦略を構成する⼀部となり得ます。

強固な自動車アフターマーケット戦略も、成功の重要な柱です。借り換えオプションは、時間の経過とともに、困難になる可能性が高いと考えられます。したがって、サプライヤーには、投資家や⾦融機関との透明性が高く強⼒な協⼒関係が必要です。

3. 業務、リソース配分およびポートフォリオの合理化

業務、リソース配分およびポートフォリオなどを合理化して、総合的な複雑性を軽減し、効率を向上させ、生産能⼒と実績を最適化します。他の合理化施策と⽐較して、この選択肢はそれほど急進的でなく、⽐較的⾼い資本を消費し、おおむね、小さいながらレガシーポートフォリオに匹敵する改善を⽣み出します。したがって、企業は、特に資金が限られている場合、投資の将来性に対するリターンと新しい収益機会を⽐較評価する必要があります。

4. エコシステムのイノベーション

エコシステムのイノベーションは、多くの企業が検討しているもう1つの戦略です。アセットライト戦略とアセットライトビジネスモデルには、企業が固定費から変動費に移⾏できるように資産を「より良い所有者」に譲渡することが選択肢にあり、企業が資本を慎重に管理しながら収益性の⾼い成⻑の実現を⽬指す戦略であるため、セクターを問わず⽀持が⾼まっています。これらの資産には、不動産、製造施設、設備などの有形資産だけでなく、製品開発、チャネルプレー、情報技術および顧客ロイヤルティプログラムなどの無形資産も含まれます。

5. 統合または合併

古くからの競合他社であっても、同業企業との合併または統合は、規模が重要になるであろう安定した市場環境において選択肢になり得ます。これにより、将来のイノベーションに向けた能力と収益の相乗効果を高めることができます。補完的な製品を有する企業との合併は、製品ポートフォリオを多様化し、合併後のバリューチェーンの深度を⾼め、収益性の向上につながります。また、不動産や⼯場の合併は、⼯場を転⽤できたり、価格が⾼いときに⽣産性の低い資産を売却できたりすることにつながります。特筆すべきは、統合は価格の決定に必要な市場⽀配⼒を得るための減産⼿段を得ることになる⼀⽅で、コスト削減に必要な規模の効果を⽣み出すこともできる点です。

米国でより顕著になっている潜在的なシナリオの1つは、レガシー資産の統合を目的とするプライベートエクイティ(PE:未公開企業投資)の購入者に焦点を当てた「ロールアップ」戦略です。PE事業体は、その明確な価値創造能力と自動車セクターでの経験を有する専門的なリーダーシップ人材を活用して、ロールアップ戦略を追求することができます。この戦略は、目標とするコアテクノロジーを隣接するマーケットにも移転できる場合、またはポートフォリオにさらに貴重なテクノロジーが含まれている場合に、実行可能な戦略になる可能性があります。PEの活動は、規制の違い、特に労働法の違いにより、欧州地域ではまだ⾮常に初期段階にあるため、このシナリオは国や地域によって可能性が異なります。特に、⼯場の閉鎖や撤退を伴うリストラや⽣産能⼒に関する決定がなされる可能性がある場合、それらは重要な判断材料となります。

6. パートナーシップおよび合弁事業

自立性の維持を大切と考える企業の多くは、パートナーシップまたは合弁事業を選択します。レガシーであろうと新規であろうと、製品選択のためにJVを組成することは、資本とリソース双方の観点から、互いに協力し、補完する機会をもたらします。ただし、これらは慎重に進める必要があります。合弁目標の全体像、システムとプロセスの調和、共通の成功要因と主要業績評価指標の追跡システムの実装、および両者の強力なコミュニケーションチャネルの形成が、相互の長期的価値の創造にとって重要になります。

7. 現状維持

急速に変化する現在の環境下で最も危険な選択肢は、疑いの余地なく現状を維持することです。現状維持は、現在のビジネスが進⾏中の業界の変化に伴うディスラプションの影響を受けないであろう、少数の企業であれば取り得る選択肢です。しかし、こうした企業は、現状維持を選ぶことによって新しいビジネス領域への成⻑機会を逃す可能性もあります。後発企業がすでに⽐較的成熟した市場で勝ち抜くには、⼗分な議論を交わし、より大きな資本を保つことが必要と考えられます。

8. 自社開発

⾃社開発は、テクノロジーが初期段階にあり、資金が潤沢で、かつ、自社開発に必要な能⼒を備えたリソースが利⽤可能である場合の選択肢です。ただし、新しいテクノロジーに資本を投資する前にレガシーポートフォリオとの均衡を図りつつ、人材やテクノロジーなどの社内能力、および可能性の高い将来の市場シナリオを慎重に評価する必要があります。想定内の実現可能な成果を大きく超える、真の価値があるかどうかを評価するには、⻑期的な視点が不可⽋です。

9. 調達能力と垂直統合

企業は、補完的テクノロジーの迅速な調達や垂直統合(システムインテグレーターになるなど)を通じて価値提案を強化したり、新たな機能を新しい成⻑領域に進出したりすることが可能です。さらに、関連する製品やコンポーネントの調達により、ICE技術のワンストッププラットフォームになるなど、強固な自動車アフターマーケット戦略の実⾏が促進されます。

10. アドオンの買収

アドオン的な買収は、主に必要な資金やリソース不⾜により、将来必要となる能⼒を社内でタイムリーに展開させることができない場合に実⾏されます。適切なターゲットを⾒つけ、成功につながる取引を構築し、相応な対価を⽀払うことが、望ましい将来像を実現するために重要です。買収前に、従業員、プロセス、システムおよび資産のあらゆる側面を評価することが、企業の円滑な統合にとって重要になるでしょう。適切な評価により、合併企業は相乗効果を実現し、望ましいスピードでマーケットに参入し、差別化された製品の提供が可能になります。

上記で概説した戦略的オプションは、単独オプションとして、または並列的なTOMと組み合わせて、組織を変革するために実行できます。例えば、資金繰りに苦しむ企業は、市場の需要が減少傾向にあるビジネスユニットでダイベストメントを行うことで、資本を調達し、親会社の将来像に合った革新的な能力を持つ新しい企業を買収できます。

重要な検討課題

サプライヤーの経営層が企業の取り組みについて思案し始めるときは、次のような質問を批判的に自問することが重要です。

  • 経営層が直面している資本配分とリソース配分の選択肢は何か?
  • レガシー資産と成長施策への投資のバランスをどのように取ればよいか?
  • 現在のオペレーティングモデルは、自社の成長展望に則しているか?
  • どのようにOEM顧客や自社サプライヤーの強みを活用して、規制環境や消費者の変化(例:インセンティブなど)に影響を及ぼせばよいか?
  • 競争上の優位性を得るため、どの企業とパートナーシップを組むべきか?ソフトウエア機能を倍増させるべきか?
  • 自動車エコシステムとバリューチェーン全体における自社の役割と付加価値は何か?
  • 収益源を維持しながら資産と有形固定資産の負担を軽減することができるアセットライトモデルはあるか?

最後に、サプライヤーおよび関連する⼈材プールの移⾏を成功させるために、各国の規制当局および政府、またはOEMが、どの程度の⽀援を提供してくれるかは明確ではありません。資産と⼈材の再構築に向けた投資には、あらゆる戦略の環境、社会およびガバナンスへの影響を考慮した思慮に富んだ投資も時に必要です。

結論

EYは、企業が電動化トレンドへの適応、製品ポートフォリオへの影響の軽減、衰退しつつあるビジネスの定義、および株主総利回りの向上を行うにあたり、以下のようなサポートが可能です。

  • 経営層がより広範なエコシステムで利⽤可能な選択肢の特定・理解を⽀援
  • シナリオモデリング、TOMとビジネスグループを評価
  • 自社の守備範囲内に留め置くべきレガシー資産と機能を同定
  • 社内で戦略的ビジネスグループ活⽤による改⾰の推進⽅法とリスクの予測⽅法の理解を支援 
  • パートナーやターゲットの模索を支援し、M&Aや連携関係のアジェンダを促進
  • EYのセクターを横断する実績を活⽤することで、政府、公益事業、モビリティプレーヤーなどの新しいエコシステムの主要ステークホルダーとの関係構築を支援

絶え間ない変化とディスラプションの時代には、戦略の策定と実⾏は常に必要であり、オペレーティングモデルは⽇々変⾰していることを忘れてはなりません。特に産業に抜本的なディスラプションが起こっている時期には、モニタリングと継続的な改善のプロセスが求められます。EYのプロフェッショナルは、エンド・ツー・エンドの戦略の実現に重点を置き、戦略的変⾰のサイクル全体を乗り越えていくサプライヤーを積極的に⽀援しています。

Ernst & Young, LLPのConstantin Wirschke、Venkat Maddila、Susan Walker、Oya Zamora、Matt Joergensen、Violetka Dirlea、Giri Varadarajanが、この記事の執筆に寄与しました。

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    1. “Biden Sets Target of 50 Percent Electric Cars by 2030,” Institute for Energy Research, 9 August 2021.
    2. "General Motors, Ford pledge at COP26 to sell only zero-emissions cars by 2040," cnet.com, 10 November 2021.
    3. EY primary interview research, 2021.
    4. “Here’s Seven Reasons Why Electric Vehicles Will Kill The Gas Car,” InsideEVs.com, 22 September 2018.
    5. EY profit pool forecaster tool, analysis based on S&P and LMCA financial data, 2010–20, scenarios modeled through 2030.
    6. 同上

サマリー

EVへの移⾏は急速に進むと予想され、ほぼすべての⾃動⾞サプライヤーの資本配分に決定的な影響を与えるでしょう。この移⾏期間中、企業は既存のICE関連⾞両コンポーネントを維持する必要と、⾰新的な製品および成⻑施策とのバランスを取る必要があります。この移⾏を成功させるには、企業はすぐにでも⾏動を起こし、今後の変化に備えることが不可⽋です。サプライヤーは、この極めて重要なチャンスを積極的に活⽤し、現在の業務に関連する資本配分の決定、座礁資産の回避、収益性の⾼い分野の成⻑促進や最適化を⾏うことにより、未来の⾃動⾞が、電気、コネクテッド、⾃動運転、またはそれらの組み合わせのいずれであっても、選ばれる自動車サプライヤーであり続けることができるものと考えます。

この記事について

執筆者
Brad Hehl

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