22 分 2021年10月20日

            水田の鳥瞰写真

ESG+のポテンシャルをフルに引き出すには

執筆者
Steve Varley

EY Global Senior Advisor

Passionate about sustainability, diversity and entrepreneurship. Husband and father of two. Triathlete.

Steven Lewis

EY Global Research Institute Leader

Passionate about the possibilities of change. Champion of diverse thinking. Strategist. Former banker. Husband. Dog-lover.

EY Japanの窓口

EY Japan 気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)リーダー EY新日本有限責任監査法人 プリンシパル

サステナビリティの分野で活躍。多様性に配慮し、プロフェッショナルとしての品位を持ちつつ、実務重視の姿勢を貫く。

22 分 2021年10月20日

いくつもの課題に直面する現在のESG(環境・社会・ガバナンス)アプローチ。しかし、より公平で持続可能な未来の構築に不可欠なのは、より良い知見です。

要点
  • ESGアプローチは重要だが、一貫性と比較可能性に欠けており、報告基準、規制、アシュアランス(保証)の成熟に合わせて、ESGの進化も必要となる。
  • 「FESG」、つまり財務との関連性を強めたESGによって企業は変化をもたらすことができ、ステークホルダーは企業の価値と影響をより深く理解できるようになる。
  • しかしその「FESG」も、生物多様性やイノベーション、ウェルビーイングといった「FESG+」に関する今後の情報開示への対応が必須であり、企業は次に来るものに向けて備えなければならない。 
Local Perspective IconEY Japanの視点

非財務と財務を結び付ける能動的なストーリー作りが重要

ESG(環境・社会・ガバナンス)からF(財務)へのパス(道筋)は1つではありません。また、ESGへの投資が、そのまま企業価値向上につながるわけでもありません。経済的価値と社会的価値という共有価値の創出には、「社会経済的収束能力」が必要です。その能力があってこそ、会社はCSV(共通価値の創造)を実現しうるという考え方です。日本においては、まずそうした経営能力を把握し、自社にとって理にかなった非財務から財務への変換ストーリーを描くことが重要です。

2019年以降、ESGの中でも気候変動に対する問題意識は広く社会に浸透しました。次に関心の高まるテーマは、Well-Beingや生物多様性保全だと言われています。中でも生物多様性保全に関しては、2020年に49の金融機関、8つの政府、18の国際プラットフォームが協働で、TNFD (Task Force for Nature-Related Financial Disclosure:自然関連財務情報開示タスクフォース)を立ち上げました。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に続き、生態系への外部性においても財務情報との関連付けが求められます。

EYでは、VBA(Value Balancing Alliance)やインパクト加重会計を参考に、非財務領域への影響や価値の可視化を支援しています。

EY Japan の窓口

牛島 慶一
EY Japan 気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)リーダー EY新日本有限責任監査法人 プリンシパル

ESGのポテンシャルをフルに引き出すには、ESGアプローチの進化、それも迅速な進化が必要です。投資家をはじめとするステークホルダーは、企業の業績はどうか、どういった意思決定や価値創造を行っているのかを十分に理解するため、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する詳しい情報開示を求めています。企業の行動がどのような外的影響をもたらすのか、絶対的な影響と他社と比較した場合の影響の両方を把握することをステークホルダーは望んでいます。消費者は、自分の選択が世界に与える影響を知りたいと思っています。従業員は、自分の会社が格差の是正やエンパワーメント、労働条件の改善、より安全で持続可能なコミュニティの構築に取り組んでいるかに関心があります。 また金融サービス業界も、より持続可能な経済への移行を支援するため、さらに充実した情報を必要とします。債券・株式市場、保険会社、投資家、アセットマネージャーのいずれも、自らの判断の影響を評価するためにESG要素の詳細を必要としています。

  • ESGの定義

    ESGは、気候変動や労働安全衛生、取締役会の多様性など、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)という要素を財務上およびビジネス上の意思決定に盛り込むというアプローチです。

ESGは現在、こうしたステークホルダーの役に立ってはいるものの、判断の精度を上げたいという投資家の要望が強まるにつれ、迅速な進化が求められています。財務情報開示と同じレベルで厳格かつ関連性の高い情報開示ができ、さまざまなESG戦略や目標がもたらす経済的影響をもっと具体的に示せるようESGには成熟が必要です。

財務(financials)の「F」とESGのつながりを強めた「FESG」が必要です。そうしないことには、ビジネスの真のコストと機会を正確に測れません。これにより企業はESGの活用方法を見直すことができ、それに基づいた戦略的判断やイノベーションの推進、長期的価値を創造する方法が明確になるでしょう。

また今後も投資家と、政府や規制当局をはじめとするその他のステークホルダーによるさらに多くの情報開示を求める動きが続くことが想定され、加えて、新たな重要指標がかつてないスピードで登場する兆しも見えていることから、柔軟で将来を見据えた要素が必要です。

こうした動きについて、企業に多くの情報開示を迫る一方的な要求だと捉えるのは簡単ですが、その一方で、ESGというビジョンを幅広く捉え、独自のナラティブを展開してイノベーションの推進に乗り出している先行企業が存在するのも事実です。そうした企業は、他社との差別化を図る要素を加えることで、投資家や従業員、消費者などにとってより魅力的な存在になろうとしています。このように、財務情報開示とESGの結び付きを強め、より多くの情報を盛り込んだ情報開示のイノベーションを示す新たな動きを、EYでは「FESG+」と呼びます。


            水田のある風景
(Chapter breaker)
1

第1章

現在のESGはなぜ不十分なのか

投資家や規制当局、リーダーからは今までよりも包括的な開示が求められていますが、その全体像は完全ではありません。

農業スチュワードシップから労働条件に至るまで、ESG要素はビジネスに重大なリスクをもたらします。EY Global Wealth & Asset Management LeaderのMike Leeは、投資家の期待について次のように述べています。「機関投資家はESG関連の投資対象を求めています。ESG戦略に当てる資産は急増しており、富裕層顧客の75%はポートフォリオにESG要素を組み込むことを検討しています。投資家の投資判断においても、より充実した情報だけでなくリスクや倫理面に関する透明性を求める傾向が強くなっています」

ESG重視の運用資産

53兆米ドル

ESG重視の運用資産は2025年までに53兆米ドルに達すると予測。2016年の22兆8,000億米ドルから、現在既に37兆8,000億米ドルに増加。

ESGのエコシステムは急速に成長しているものの、まだ成熟はしていません。インパクト投資商品市場には「グリーン」ファンドがあふれ、投資家はその多くをうたい文句通りに受け取っているのが現状です。ESG重視の運用資産は2025年までに53兆米ドルに達する見込みです1。一定の市場慣行を他社よりも厳密に順守している企業は存在するものの、多くの企業は好印象を与えられるよう報告内容を選択できる状況です。これでは持続可能とは言えず、混乱した投資家などのステークホルダーの反感を買うのではないか、グリーンウォッシングだと非難されるのではないかと恐れる企業も少なくありません。

  • 数字で見る報告の増加

    ほとんどの大企業は現在、サステナビリティ報告を実施しています。その数は年々増加しています。ラッセル1000で報告している企業の47%がグローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)基準を採用し、41%が炭素ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)気候変動プログラムを使用しています。また、14% は気候関連財務開示タスクフォース(TCFD)と歩調を合わせています2。 中国では、A株企業全体の27%、CSI 300企業の86%がESGレポートを発行しています3

ステークホルダーが企業のコミットメントやパフォーマンス、インパクトについて幅広く理解を深められるようにするというESGの意図は非常に評価できます。しかし、ESGを財務情報開示と同じレベルまで成熟させることは、社会および企業にとって急務となっています。多くの業界は投資フローの縮小や物言う株主、消費者嗜好の変化といった「喫緊の課題」に直面しています。最近のEYのFuture Consumer Indexによれば、世界の消費者の43%は、たとえコストが高くなっても社会に資する企業から購入したいと考えていることが分かりました。

また金融サービス企業においても、高炭素ポートフォリオの最小化やより環境に配慮した選択肢の最大化、あるいは企業との連携によるコミュニティ全体での融資や保険の公平性向上を目指す上で、より正確で一貫性のある情報を必要としています。

今こそESGにとって—とりわけ国際気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催される今年、環境要因へのリーダーシップを発揮できることから—重要課題の評価や資本配分の検討、投資家のエンパワーメント、イノベーションの推進、適応と緩和による移行支援を行う絶好の機会です。

  • 数字で見るE・S・G

    • 気候変動は、米国ファンドマネージャーが単体のESG課題としては最重要だと考えている課題。2020年の資産価値は2018年から39%増の4兆2,000億米ドル5
    • ただし「S」の課題、とりわけ労働安全衛生に関する課題の存在は、株価変動といった主要な経済指標に最も大きな影響を及ぼす6
    • しかし12ある評価フレームワークの1,750の「S」指標のうち、影響を測定しているのは8%に過ぎない7
    • つまり、関係機関や投資家は概して、中核をなす「E」の課題とは対照的に、「S」の課題に関しては行動よりもコミットメントに注目していることを意味する。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言の多くが広く採用されているということは、ESGのうち気候関連の「E」指標の報告基準への国際合意が近づいていることを示します。そうした動きの原動力となっているのは、気候危機に対する切迫感です。国際財務報告基準(IFRS)財団は諮問書の中で「気候第一アプローチ」を提案し、財務リスクの一要因としての環境の重要性が増大しているという認識を示しています8

しかしこの1年は、政府、規制当局、投資家、顧客、従業員といったステークホルダーにとっては、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(包摂性)、賃金の平等といった社会問題の方がより重要な問題となっていました。まだ発展途上ではあるとはいえ、「E」と足並みの揃ったこのアプローチは、「S」にとって今後の指針となるかもしれません。

「G」も無視はできません。優れたガバナンスは常に重要課題の1つです。それは単に、倫理的かつ効果的な行動を企業全体に推奨するものだからというだけではありません。調査によると、コーポレートガバナンスの質の重要指標である株主権利の強い企業は、他よりも価値が高く年間のリターンも高いことが分かっています9

ラッセル・インベストメント社の調査によれば、2020年にESG関連の意思決定を行った際、ガバナンス(G)主導だったと回答したアセットマネージャーは82%、環境(E)が13% 、社会(S)が5%でした10。今後、EとSに関する取締役会の監督と組織全体のガバナンスは、現在の財務管理の厳密さに匹敵するものにならなくてはなりません。企業は、環境基準に関する最近の動向をロードマップとして活用しながら、E・S・Gの全てに取り組んでいく上で積極的な役割を担っていくべきです。

ESGを構成するさまざまな要素はまだ成熟しておらず、一貫性やバランスに欠けています。変化の必要性を説く根拠はそこにあります。ESGは現状、金融サービス業界の意思決定の判断材料にしたり、あるいは投資を決めたり、消費者に確信を与えたり、企業の将来の戦略立案に役立てたりできるかという点では、必ずしも盤石ではなく十分に成熟しているとは言えません。ですが急速に進化させることは可能です。


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(Chapter breaker)
2

第2章

「FESG+」を実現するための4つの段階

ステークホルダーの支援があれば、ESGを変化させてそのポテンシャルをフルに引き出すことができます。

「FESG+」、つまり財務のFが加わり、新たな要素も追加できるESGのポテンシャルを現実のものとするには、4つの段階が必要です。

  1. コンバージェンス(共通化):基準の共通化により複雑さが軽減され、情報開示が一層明確になる
  2. 採用:採用を広げていく中で、他社との比較や、経験に基づく継続的進化を実現するのが最善である
  3. アシュアランス(保証):財務報告と同様に、非財務報告も信頼されるものでなければならない
  4. イノベーション:変化を受け入れるだけでなく常に変化を先取りし、ステークホルダーの将来の情報ニーズに対して今よりも迅速に対応するためには、新しい戦略的思考が求められる

1. コンバージェンス(共通化)

共通言語は行動の一貫性と同等です。現在、言語は厳密には共通化されていません。
牛島 慶一
EY Japan 気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)リーダー EY新日本有限責任監査法人 プリンシパル

「FESG+」を実現するには、サステナビリティ報告は財務報告から大切な教訓を学ばねばなりません。すなわち国際レベルでの統一性、包括性、比較可能性を実現することです。現在のESGアプローチはまだ発展途上で今後も進化が必要になるため、基準策定機関は将来的に迅速化が可能なプロセスを採用する必要があります。

例えば、報告レベルやネットゼロに向けた資金需要の加速化に伴い、基準策定機関はより多くの重要情報を組み込み、包括的指針を迅速に策定する必要が出てくるでしょう。用語や定義、情報開示のやり方を一本化し、世界中で同じように適用できるようにしなければなりません。「共通言語は行動の一貫性と同等です。現在、言語は厳密には共通化されていません」とEY Japanの気候変動/サステナビリティサービス(CCaSS)リーダーの牛島慶一は述べています。

複数の基準が存在しますが、その有用性について投資家の意見は必ずしも一致していません。

ESGの報告基準の改善に向けて、以下のようなグローバルな取り組みが進められています。

  • サステナビリティ会計基準審議会(SASB)と国際統合報告評議会(IIRC)が合併して価値報告財団(VRF)を設立。開示プロセスの簡素化およびグローバルなサステナビリティ基準の実現を目指した大きな一歩の一例
  • 2021年3月、COP26に先立ちIFRS評議員会はワーキンググループの設立に合意。このワーキンググループは、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)という全参加者を代表する新たな審議会を任命する任務を担う
  • 2021年3月、国際会計士連盟がIFRSの基準策定に参加
  • 世界経済フォーラム(WEF)と国連経済社会局(UN/DESA)は4月、ESGの報告に関して、世界規模の標準化と協調を呼びかけた
  • G7財務大臣・中央銀行総裁会議は2021年6月の声明の中でIFRSおよびTCFDへの支援を表明し、世界基準の確立に向けた取り組みを歓迎した
  • EUは、Corporate Sustainability Reporting Directive(CSRD)案、EU Taxonomy Climate Delegated Act、および投資・保険・信認義務関連の修正法案を6つ提示し、サステナビリティの課題に取り組むべくさらに前進しているこれらの施策は、持続可能な投資の支援、EUの環境目標に寄与する経済活動の明確化を目的としている

ただし、国際基準があまりに厳格過ぎると、幅広く適用できるよう意図的に簡素化された報告になってしまい、長期的には透明性を毀損してしまう危険性があります。WEF IBCの指標に関するホワイトペーパーのような民間セクターによる取り組みやIFRS財団に対する支援は、基準策定機関がベストプラクティスを参考にするときや、現在の問題に取り組むとき、実用的な実施指針を提供するとき、また将来に向けて柔軟で革新的な基準を推し進めるときに、非常に大きな影響を及ぼす力があります。

2. 採用

EY Global Climate Change and Sustainability Services LeaderのMat Nelsonは次のように述べています。「経済全体を新たな資本の経路にシフトさせるには長い時間を要します。市場の力だけではESGのポテンシャルを発揮することも、『FESG+』への変革を実現することもできません」

基準の採用を広げていく上で、自己規制、投資家の要望、そして消費者圧力は顕著な役割を果たします。金融サービス業界も、商品やサービスの価格設定を通して企業に基準の採用を促すことができます。一方、大きな影響力を持つ未上場企業に基準の採用を促し加速化するには、政府によるコンプライアンスおよび透明性に関する法整備が必要になるかもしれません。

経済全体を新たな資本の経路にシフトさせるには長い時間を要します。
Mathew Nelson
EY Oceania Chief Sustainability Officer

2021年のEYの調査によれば、企業の成功の測定・予測においては、機関投資家はイノベーションや研究よりも、重要なESG機会が戦略に盛り込まれていることの方を重視しています14

リーダーは、自社のパーパス(存在意義)や戦略を見直し自分たちは誰に奉仕するのかを考える契機として、ESGアプローチの全面採用を前向きに捉えるとよいでしょう。EY EMEIA Sustainable Business Services LeaderのReto Iseneggerは次のように説きます。「こうした話は、サステナビリティの担当部門の外へ広げるべきです。COO、CFO、そしてCEOは、価値を守り価値を創造していくため、これまでにも増してサステナビリティを主要議題として捉えていかねばなりません」

こうした時流に逆らい、基準採用に対して最低限の形ばかりのコミットしかしない企業は、近く整備される規則に背くことになり、物言う投資家からの圧力を受けることになるでしょう。

こうした話は、サステナビリティの担当部門の外へ広げるべきです。COO、CFO、そしてCEOは、価値を守り価値を創造していくため、これまでにも増してサステナビリティを主要議題として捉えていかねばなりません。
Reto Isenegger
EY Global Advisory Strategy Services Leader
  • 数字で見るESG規制

    • 世界の市場でESGを対象にした規制や基準の数は、過去5年間でほぼ倍になっている(pdf、英語のみ)15
    • 世界には、投資家にESG要素を考慮するよう促す政策やガイダンスの手段が650以上ある16
    • 2020年に策定あるいは改訂された手段は124に上り、さらに増えつつある17
    • 「6-Market global」の84%と米国投資家の 79% は、将来起こり得るESG開示規制に対応する準備ができていない企業がほとんどだと考えている18

政府の役目は、ESGを戦略に組み込むようインセンティブを与えることと目標を設定することです。また規制を整備することで、信頼できる確実なESG報告がようやく実現します。一部地域では、規制当局と企業の双方がTCFD提言を採用したことで、このプロセスが実際に進んでいます。

  • 数字で見るTCFD

    • 1,500 – 2020年にTCFD提言を支持した組織の数。2019年から85%の増加19
    • 世界最大手の上場企業100社のうち、60社がTCFD提言を支持20
    • 2019年、時価総額100億ドル超の企業の42%がTCFD提言に沿って情報を開示21

香港では2025年までに、TCFDに沿った気候関連の開示が該当セクター全体で義務化される予定です。英国ではビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が、全ての公益法人に対し、政府のグリーンファイナンス戦略に沿ったTCFDガイドラインの使用を推奨しており、2025年までの開示の義務化についてコンサルテーションを実施しました。ニュージーランド政府は、金融サービス機関、およびNZXに上場している全ての株式・債券発行体を対象に、TCFDに沿った開示を義務付けました。世界全体を見ても、アセットマネージャーはTCFD開示を重要優先事項と位置付けています。

3. アシュアランス(保証)

ESGの信頼性は、財務報告のミス防止対策と同じ方法、つまりコーポレートガバナンス、規制、法定監査の組み合わせによって保つ必要があります。

現在、サステナビリティ情報に対するアシュアランスのレベルは国際的に均一ではなく、情報源によるばらつきもあります。国際会計士連盟の最近の発表によれば、サステナビリティ情報を報告する企業のうち一定のレベルのアシュアランスを付与しているのは51%、そうしたアシュアランスの63%は、監査法人または監査法人の関連会社によって提供されています23。 サンプル数としては少ないものの、持続可能な開発のための世界経済人会議が一部のグローバル企業を対象に行った最近の分析では、サステナビリティ情報に対するアシュアランスの実施率は84%と高く、前年比で増加していました。

EU委員会は最近、Corporate Sustainability Reporting Directive(CSRD)案を採択しました。これは、サステナビリティ情報の報告に対するアシュアランスがまもなく普及することを示唆しています。CSRDは「限定的な保証」要件のもと、市場の現在のESG情報作成能力に合わせて、EU全域で監査を義務付けるものです24。 他の管轄地域が同様または同等の政策を採用するにつれて、ESGを専門とする外部アシュアランスサービス市場は急速に成長するでしょう。

強固なサステナビリティのアシュアランスに向けた最初の一歩は、アシュアランスの信頼性向上とアシュアランス実務者が新しい報告制度に対応できるようにすることを目指した国際監査・保証基準審議会(IAASB)のExtended External Reporting Assurance(拡張された外部報告に対する保証)ガイドラインが土台となっています。しかし、さらなる変化がまだ控えています25。 ESGでは財務報告と同様に、監査の専門家が行為の信頼性に対する責任を負うのは当然ですが、それとは独立した監視も今後は必要になるでしょう。

4. イノベーション

ESGアプローチは、それ自体が企業情報開示の世界における最近のイノベーションであり、今後も間違いなく進化します。信頼を構築するための報告方法の共通化、開示の普及、アシュアランスの向上、これらが揃えば、ESGは強力な戦略的ツールとしての地位を確立し、金融機関も非金融機関も、意思決定の判断材料としてさらに活用できるようになるでしょう。

将来のサステナビリティ報告は、共通化が実現して報告の構成や信頼性に関して財務報告の適合に近づくだけでなく、リスクをより正確に反映でき、それに基づいてビジネスの真のコストを算出して意思決定に生かすことができるようになります。環境や社会に関するデータは財務的に適切な方法で統合されます。企業の長期的価値と影響力は、理路整然としたまとまりの一部として理解できるようになります。

「FESG」のコンセプトは、財務情報と非財務情報を結びつけることで戦略構想に生かし、さらに利害関係者が財務業績と財務的影響の両面からサステナビリティを評価できるようにするというものです。従来の財務会計では、利害関係者が企業活動を評価することはできるものの、環境、社会、ガバナンスの各要因の影響が必ずしも考慮されておらず、全体像は不完全なままでした。

近年、財務報告とサステナビリティ報告の連携を強化する取り組みが盛んになっています。今後、環境および社会に及ぼす影響を、比較可能な財務データの形で示そうとする企業が増えてくるでしょう。気候変動リスク・ディスクロージャー・バロメーター2021によれば、約15%が既にそうした取り組みを行っています26。しかし、サステナビリティを戦略や資本配分、さらにオペレーションに完全に組み込み、ESGと財務の結び付きを強化するには、新たな方法論の構築が必要です。

ハーバード・ビジネス・スクールのインパクト加重会計イニシアチブ(Impact-Weighted Accounts initiative)は注目すべき取り組みです。このイニシアチブを活用して自社の「社会に対する全体的な価値」と財務データを連動させる取り込みを進める企業が増えています27。同様に、Value Balancing Allianceでは「社会や経済、環境に対する企業貢献の価値を測定・比較する手法を作り出す」ことを目指しています。

組織の正味の価値貢献(プラスまたはマイナス)を測定するこうした革新的なプロセスの中から、サステナビリティを資金化する方法が生まれ、広く受け入れられていくようになるでしょう。そうなれば、企業が及ぼすインパクト全体の価値を算出できるクロスセクターの会計イニシアチブが近い将来登場すると思われます。報告基準の共通化と財務との関連性強化によって「FESG」が実現すれば、企業は環境および社会に対する影響を明確かつ比較可能な、信頼性のある方法で提示できるようになるでしょう。

ESGはよりダイナミックに、今後も進歩し続けます。こうした進歩を活用しない手はありません。新たに発足した自然関連財務情報開示タスクフォースに対してG7財務大臣・中央銀行総裁会議が支持を表明していること、ならびに国連生物多様性条約締約国会議の開催が近いことから、生物多様性は近い将来、主要な報告項目になると考えられます28

「水、土地利用、生物多様性、これらは全て複雑かつ多面的であり、気候変動対策において極めて重要ですが、現在のESGの概念では捉えるのが難しいのが現状です」とEY Americas Industry LeaderのDeborah Byersは説明します。基準策定機関はごく最近まで比較的動きがなく、受け身の姿勢を見せています。ビジネスリーダーはもっと積極的に、どんな要素であれば他よりも抜きん出ることができるのかを見極め、そうした要素を自社の戦略やオペレーション、製品、サービスに取り入れて、「FESG+」を通じて広く伝えていくとよいでしょう。

水、土地利用、生物多様性、これらは全て複雑かつ多面的であり、気候変動対策において極めて重要ですが、現在のESGの概念では捉えるのが難しいのが現状です(中略)これらを見落としてはいけません。
Deborah Byers
EY Americas Industry Leader

こうしたことは、「FESG+」のポテンシャルをフルに引き出すのに有効な革新的な2つの手段に過ぎません。金融サービス部門や投資家、政府には他にもすべきことがあります。

EY Global Financial Services Sustainable Finance LeaderであるGillian Loftsの説明はこうです。「金融サービス業は、気候とサステナビリティにまつわる変化を安全かつ効果的に進める上で主導的な役割を果たす必要があります。リスクを理解しその金額を算出すること、規制要件を順守して透明性を高めること、消費者および企業の要求を満たすためのイノベーションを推進すること、いずれも非常に重要なことです。こうしたニーズに応えるには、ESGの報告方法と開示の改善が不可欠です」

ESG目標の達成に向けたイノベーションを推進する上で、金融サービス業界全体が果たす役割も大きなものです。ESGの透明性を求める顧客の要求に応えられるかは、金融機関がどのようなデータを取得・報告・分析するかにかかっています。Annual IIF/EY Global Risk Management Surveyで調査した銀行の 59% が、ESGに関連した機会の追求を阻害する要因として、必要なデータの不足を挙げています29

例えば、サステナビリティリスクに対するエクスポージャーの管理では、金融業界は企業の行動に対してダウンストリーム効果を生み出すことができます。また、グリーン資産への需要を高める新商品の開発という役割もあります。グリーンボンド、インフラファイナンス、ESGファンド、サステナビリティ関連の融資といった市場のポテンシャルは、まだ十分に探求されていません。

グラスゴー・ファイナンシャル・アライアンス・フォー・ネットゼロ(GFANZ)のようなグループの設立は、サステナビリティに対する投融資の拡大やサステナビリティの向上を目指すイニシアチブの広がりを示しています。EYの調査によると、英国の中小企業の 42% が、排出量が少ないほど割引される保険商品への関心を示しています30

とりわけ保険会社は、ESG情報をリスク管理の向上に活用することに注目すべきです。環境へのエクスポージャーは始まりに過ぎません。気候シナリオ計画の導入展開、例えば気候変動の物理的リスクや移行リスクに対する英国金融システムの耐性を測るイングランド銀行のClimate Biennial Exploratory Scenario(隔年探索的シナリオ)などは、包括的なESG情報に基づくアンダーライティング業務の登場を示しています31

最近のストレステストでは、保険会社は中程度の気候変動リスクにさらされていることが示されています。保険業界は、現在のリスク管理と将来のリスク特定の専門家として変化を主導するとともに、新しい形態のリスク管理の構築やリスク移転、さらに将来の脅威への対応を支援する上で中枢の役割を担っています。

投資家は包括的なESG開示を投資戦略の検討材料にします。中には、コンセンサスの取れたESGベンチマークに対してパフォーマンスが最低限のときにそれに甘んじず、企業に対してベストインクラスのESGポリシーを目指して加速化するよう提案する投資家もいます。(TPI フレームワークおよび参考文献を参照してください32。)

国際エネルギー機関(IEA)は2050年までに世界で炭素排出量ネットゼロを達成するべく、新規の石炭、石油、天然ガスの開発を今年で終了するよう求めており、投資家は石油・天然ガス大手に注目しているところですが、圧力は他のセクターにも及ぶ可能性があります33。気候に対する意識の高い投資家は、建材から鉱業まで、化石燃料に依存する企業への関与に興味を示しています34

政府は、排出量のリーケージ防止およびネットゼロコミットメントの順守を目指し、包括的ESG報告を政策の土台にすることがあるでしょう。炭素国境調整措置(Carbon border adjustment mechanism)などの規制措置は、正確に把握されている国内排出量やその他のサステナビリティ情報によって決まります。EUは、例えば「順守、さもなくば説明」の原則に基づいてESG報告を大企業に求めるCSRDを通して、そのリーダーシップを発揮し、他の地域もこれに追従するよう働きかけるかもしれません。

ESGのポテンシャルを最大限に引き出すには、気候変動に注目するイノベーションのその先へ進まねばなりません。しかし、共通基準をめぐる一本化推進の動きと同様に、主要なステークホルダーグループの注目や協力の度合いを見れば、何が起こり得るかが見えてきます。マイノリティグループへの融資を増やすという米国の銀行の取り組みは、そうした動きの一例です35


            岩山を登る女性を手助けする男性
(Chapter breaker)
3

第3章

より充実した情報に基づく5つの行動

全てのステークホルダーが情報に基づいて行動することで「FESG+」のポテンシャルをフルに引き出します。

「標準化されていないESGは問題です。しかし標準化が進んだとしても、世界のさまざまな課題にESGソリューションを組み込むためには、やるべきことがまだたくさんあります」とEY Partner Climate Change and Sustainability ServicesのMeg Frickeは説明します。これまでESGは情報開示に重点を置いてきました。しかし今、成果を出すために必要なのは行動です。

標準化されていないESGは問題です。しかし標準化が進んだとしても、世界のさまざまな課題にESGソリューションを組み込むためには、やるべきことがまだたくさんあります。
Meg Fricke
EY Partner Climate Change and Sustainability Services

解決策を生み出して競合他社との差別化を図るには、リーダーが5つの重要分野において組織に行動を促し、「FESG+」の枠組みを未来の戦略に組み込むよう働きかけなければなりません。

1. 消費者から規制当局まで、ステークホルダーと向き合う

消費者は透明性だけではなく、変化に対して関心を強めつつあります。規制当局も結果を重視します。企業は今すぐ行動を起こすべきだという根拠はここにあります。

過去の調査から、ステークホルダー(顧客、従業員、アクティビストを含む)からの圧力がサステナビリティレポートの透明性を高めることは分かっていますが、行動と目に見える変化を求める声も高まりつつあります36EYのFuture Consumers Index によれば、消費者の 68% は、社会および環境にとって良い結果を出せるよう企業自らが進んで取り組むべきだと考えています。

また非政府組織も、変化を求めるロビー活動においてその影響力を強めています。グリーン・テクニカル・アドバイザリー・グループ(GTAG)が英国政府に対して「グリーンタクソノミー」作成に関する助言を行うことになっているのも、外部のステークホルダーが「FESG+」を巡るビジネス環境を今後作っていくことを示す一例です。

米国証券取引委員会(SEC)も同様に、サステナビリティ開示の妥当性について市場参加者と同様のコンサルテーションを実施しています。また日本でも「有識者会議」が、上場企業の間でESGへの関心を高める方法に関連して、日本のコーポレートガバナンス・コードの今後の改訂についてのコンサルテーションを公表しました37。こうした動きを企業は積極的に捉えて取り組み、今後の市場のあり方を左右する視点の進化に対応し続けなければなりません。

 

  • 社会および環境パフォーマンスに対するステークホルダーの期待がどのように変化しているのか理解しているか
  • ビジネスのあらゆる側面において、すなわち戦略からオペレーションまで、また手頃な価格の新たなサステナビリティ製品・サービスの開発から製造、流通に至るまで、新たな期待をどのように織り込んでいるか

 

2. 投資家からの圧力に向き合う

同様に、戦略的な変化を求める投資家の声もますます強くなっています。例えば、主要市場の機関投資家の89%は、ESGパフォーマンスの良い企業の株価はプレミアム評価が妥当と回答しています。また90%は、ESGイニシアチブを優先する企業はそうでない企業よりも、長期的リターンが期待できると考えています38

EYの調査によると、投資家の91%が投資判断において非財務業績を「重要視」しています39。国連が提唱する責任投資原則では、第三者によるアシュアランスなど、より強力な措置を検討しており、署名機関が報告するデータの信頼性の構築と、インパクト投資の推進を目指しています40

世界に目を向けると、富裕層の78%は現在、自身の生活においてサステナビリティに関する目標を持っており、この数字は、保有する富のレベルに比例して高くなっています(超富裕層で93%)41

投資の大規模な再配分が起きるのは明白であり、富裕層の顧客の76%が、ESG要素をポートフォリオに組み込むことが重要と考えています。企業は、FESG+を意思決定にどう取り入れるのか、今後検討していかねばなりません。

 

  • 投資家はどういった情報を新たに要求しているか。また、関連データを入手し開示する準備はどの程度整っているか
  • リスクと機会の評価にFESG+要素をどのように組み込むか。そしてそれを戦略の策定と実行にどのように生かしていくか

 

3. 独自の「FESG+」ナラティブを持つ

どういった情報開示が必要になるのか、またステークホルダーにとってどういった情報開示が最適なのか、企業は事前に備えることができます。企業の将来の成功を左右するさまざまな要素が今後新たに登場することが予想される中、WEF IBCイニシアチブが提唱している情報開示は、出発点にするのに適切です。

また、企業独自のナラティブの一環として、ネットゼロコミットメントのさらに先をゆく要素を目標に掲げ、それを評価・報告するという手もあります。例えば、従業員のメンタルヘルスは昨今、関心が高まっている分野ですが、これを重点要素に加えて他社との差別化を図り、ESGを全てのステークホルダーに向けた独自のナラティブにすることもできるでしょう。他にも男女間の賃金格差、差別やハラスメントの発生件数なども他社との差別化に使えるかもしれません。

  • 現在のESG開示では、従業員や顧客、投資家にパーパスや目標をうまく伝えられているか
  • 新たな要素を設定し、それを戦略に生かすことで、競合他社とどう差別化できると考えられるか
4. データを理解する
 

非財務データの独立機関によるアシュアランス(保証)への需要の増加に伴い、独自データの収集・集計・管理責任のあり方を改善する必要性が今後生じるでしょう。大企業にとって、そうしたデータを企業全体で一貫したタクソノミーを使って収集することは大きな課題です。データを投資家やその他の利害関係者との正式な対話に使う場合、あるいは役員報酬の評価に使用する場合は、データの正確さが一層重要になります。

多くの企業では、財務情報に関してはしっかりとしたタクソノミーが整備され、基本的なプロセスも確立され文書化されている上、複数の経営幹部による承認も受けます。それに比べ、非財務情報ではそうしたプロセスがごく簡単であることが多いのが現状です。今後、非財務情報のアシュアランスの正確性に万全を期すためこれまで以上に真剣に取り組む必要があります。その際、追加コストや煩雑な手続きが生じることがあるので注意が必要です。

まずは適切なデータ専門家の確保から始めるのがよいと思われます。現行および今後の報告要件に対応でき、第三者機関がデータをどう解釈するかを明確に理解できる人材です。ESGをとりまく状況の変化に伴うデータの課題は些細なことではありません。今こそ先手を打つ時です。EYグローバル気候変動リスク・ディスクロージャー・バロメーター でも、データの質は企業にとって重要な課題であることが示されています。

現在、気候変動に関連したシナリオ分析を行っている企業はわずか41%に過ぎず、財務諸表で気候変動リスクを取り上げている企業はさらに少ない状況です(15%)43。この現状を変えなければなりません。現在の開示内容を分析し、提案されている基準と比較してみることは、今後の新たなデータ要件を理解する上で重要です。財務担当者は、データの収集、処理、報告に関するスキルを活用して、サステナビリティに関与することが求められます。

 
  • ESG情報に対して、財務報告書と同程度の厳密さと信頼性をどうやったら確保できるか
  • 早い段階で基準策定機関と関係を築き、新たなESG規制(COP26の合意内容も含む)が確立されたときにはそれに対応する準備は整っているか
 
5. ESGをサステナビリティチームに限らず広く浸透させる

「FESG+」に関する戦略的思考をサステナビリティチームだけでなく、もっと広く浸透させる必要のある企業はまだまだ多いのが現状です。取締役会と経営陣はサステナビリティを戦略的関心事の中心に据え、財務部門、サステナビリティチーム、経営陣の間に密接な関係を築く必要があります。

戦略立案から実行、新製品のイノベーションから製造、流通に至るまで、組織のあらゆる部分の意思決定に「FESG+」の要素をうまく組み込むためには、目前の複雑な課題に積極的に向き合い、それに適切に対応できる新しいリーダーシップモデルが必要になります。

  • サステナビリティの取り組みは、サイロ化されたままではないか。また、完全統合された「FESG+」アプローチに向け、準備はできているか

上に挙げた5つの分野への対応には時間を要し、その間にも周囲の状況は変わり続けます。ビジネスリーダーが最優先にすべきことは、今すぐに必要な専門知識を組織全体に構築し始めることです。その中には、ESGの専門職化や、基準策定機関と協力して、一般に受け入れられるような財務情報と非財務情報を結び付ける方法を明確にする作業などが含まれます。CFOやファイナンシャルコントローラーは、サステナビリティとESGの報告に関して明確なリーダーシップを発揮し、財務情報の開示の場合と同様に、ESGに関するデータや判断を巡る内部統制システムを構築する必要があります。

最高技術責任者および最高データ責任者は、それぞれの機能を強化し、意思決定に必要な知見を追跡・提供できるようにしなければなりません。 取締役会や従業員の多様性を、例えばその企業が事業活動を行っている社会に対応させようとする場合は、データのニーズはかなり膨大になります。

また経営幹部は、意思決定および行動の判断材料として、ESGパフォーマンスをより明確に取締役員に提示しなければなりません。新たなトレンドをどう収益化し、長期投資をどう呼び込み、短期的な株主支持をどう取り付けるのか。「FESG+」は非常に重要な枠組みです。

結論

現在のESGアプローチは、企業やそのステークホルダーに最大限に活用されておらず、多くの場合、十分な情報に基づく意思決定に必要な比較可能性や採用、アシュアランス(保証)のレベルが不足しています。そうした問題を解決するだけでなく、ESGにはイノベーションによる進化が必要です。つまり、ESG報告と財務報告を結び付け、さらには将来の「+」要素を素早く取り入れられるようにしなければなりません。「FESG+」を組み込んでそのポテンシャルをフルに引き出せるよう体制を整えれば、大きなチャンスと利益が得られます。また、全てのステークホルダーも恩恵を受ける可能性が大です。今こそ変化の時です。戦略、イノベーション、実行、情報開示の面で、「FESG+」に向けた体制づくりをする時です。

サマリー

今は行動の10年です。よりインクルーシブな資本主義の形を創造する時です。その一翼を担うESGは、投資家や金融機関、顧客、従業員、リーダーにとってますます重要なものとなっています。財務情報の統合、基準の採用、価値主導による意思決定の推進のためのアジェンダを設定しましょう。

この記事について

執筆者
Steve Varley

EY Global Senior Advisor

Passionate about sustainability, diversity and entrepreneurship. Husband and father of two. Triathlete.

Steven Lewis

EY Global Research Institute Leader

Passionate about the possibilities of change. Champion of diverse thinking. Strategist. Former banker. Husband. Dog-lover.

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EY Japan 気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)リーダー EY新日本有限責任監査法人 プリンシパル

サステナビリティの分野で活躍。多様性に配慮し、プロフェッショナルとしての品位を持ちつつ、実務重視の姿勢を貫く。